暗号資産やブロックチェーンが持つ世界を変える大きな可能性について、各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.12
27歳の日本人起業家が立ち上げたWeb3(=Web3・0)プロジェクト「アスターネットワーク」。その暗号資産「ASTR」は一時、時価総額2000億円を超えた。岸田内閣の成長戦略としても取り上げられ、日本でもその注目度がますます高まっているWeb3。データの所有権がGAFAなど一部企業に集中するWeb2(=Web2・0)に対して、ブロックチェーン技術を用いて実現される非中央集権的なWeb3は、情報や富を一極集中させるのではなく分散させる、新たな資本主義の可能性を秘めている。Web3は、社会に何をもたらすのか。アスターネットワークを立ち上げ、業界内でも気鋭の起業家として大きな注目を集めているステイクテクノロジーズの渡辺創太氏に、話を聞いた。
僕がブロックチェーンに注目したのは2016年頃。ある雑誌に「ブロックチェーンが世界を変える」という内容の特集があって、それを読んだのが興味を持ったきっかけです。大学卒業後はシリコンバレーに渡り、ブロックチェーンのスタートアップに就職するのですが、そこでブロックチェーン界隈の盛り上がりやプレイヤーたちの熱狂を実際に現地で目の当たりして、’19年にステイクテクノロジーズを創業しました。 ブロックチェーンは実にさまざまなものが存在しているのですが、互換性がほとんどないためにそのテクノロジーのメリットを十分に享受できない現状があります。だからこそ、Web3を実現していくにあたり、アスターネットワークは複数のブロックチェーンをつなげるハブ、来るマルチチェーン時代の基幹インフラとなることを提供しています。
日本では暗号資産に関する法律や税制の関係で、Web3領域の事業展開が難しく、僕らはシンガポールに拠点を置いています。他の日本人起業家らも今、シンガポールに集まってきています。僕らの周りが盛り上がるのは嬉しいですが、僕はできることなら日本で仕事をしたかった。先日、自民党の河野太郎さんや平将明さんとその辺りの課題をお話しさせていただきました。日本がWeb3領域で世界に遅れを取らないように、ルールが変わって欲しいと願っています。
会社がなくなっても動き続ける仕組み
アスターネットワークは最終的に、DAOと呼ばれる自律分散型組織として機能させていくことを目指しています。これまでのWeb2では、情報や利益を一部の企業が独占してきました。その一方で、Metaが潰れたらFacebook自体が使えなくなるように、会社が止まれば手がけているサービスやプロダクトも止まってしまう。それってある意味、危険だと思います。
Web3が実現するのは、権力を分散させる社会。ブロックチェーン技術によって、世界中の人々が協力して管理・運営される仕組みが可能になります。だからアスターネットワークは、作った僕らが関わらなくても、ステイクテクノロジーズという会社がなくても動き続けていくようなものにしていきたい。これって、人類史における新しい挑戦だとも考えています。フェアで透明性が高く、よりインクルーシブな企業形態によって、従来の“会社とサービス”というスキーム自体を塗り替えていくってことです。
とはいっても、Web2とWeb3は共存できるとも考えています。中央集権的に進めたほうが経済効率のいい部分もたくさんあるんですよ。二項対立ではなく、Web2ではできないことをWeb3でカバーしていく。そんな世の中に、これからなっていくんじゃないかと考えています。
新時代の起業家が持つべき責任感とビジョン
僕はWeb3時代の起業家として、社会性、公共財としての価値が高いものを自分たちが作るという責任感を感じていますし、これからこの業界のビジネスに取り組んでいく方々にも、暗号資産=マネーゲームではなく、社会にどうアダプションして公共財になっていくのかという部分を考えてほしいですね。
ただ、僕はまだ自分に満足は全然していません。現状に満足した瞬間に人の成長は止まってしまうので、これからもハングリー精神を持ち続けていきたいです。