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2021.09.20

「世界初、ビットコインが 法定通貨に?」ABCash児玉隆洋

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。 アフターコロナのお金論32回。

お金

物やサービスの決済、税金の支払いにビットコインが使われる

2021年9月、世界で歴史的な一歩が踏みだされました。

ある国がビットコインを正式な法定通貨として制定したのです。

さて、お金のトレーニング。その国はどこでしょうか?

答えは、エルサルバドル。中南米にあり、面積は九州の約半分、人口も約650万人と東京都の半分ほどの小さな国です。

日本では「円」、アメリカでは「ドル」、中国では「人民元」がその国で使える法定通貨ですが、元々エルサルバドルでは、アメリカのドルを法定通貨としていました。そして、このアメリカのドルに加えて、2021年9月、ビットコインを法定通貨に制定したのです。

これは世界でも初めての歴史的な出来事です。物やサービスの決済、税金の支払いにおいても「ビットコイン」が使えるようになったのです。

それではお金のトレーニング。エルサルバドルが、法定通貨にビットコインを制定した理由は何でしょうか?

理由のひとつは、海外からエルサルバドル国内への「送金額」を増やし、経済を活性化することです。エルサルバドルは、アメリカなどに移民として移り住む人が非常に多い国です。その結果、アメリカなどの海外から故郷のエルサルバドルへの送金額が多く、その額はGDPの約2割も占めているのです。エルサルバドルの全世帯の3分の1が海外送金を受け取っているといわれています。

2020年、海外からエルサルバドルに送金された総額は約60億ドル(約6600億円)、その送金手数料は約4億ドル(約440億円)にもなります。海外送金はその手数料が高額になるので、ビットコインを法定通貨として導入することで、手軽に海外から国内に送金できるようにする狙いがあるのです。

海外から国内への送金が増えれば、それはエルサルバドルのGDPを大きく押し上げることにつながります。つまりビットコインの法定通貨制定には、さらなる経済の活性化を期待する狙いがあるのです。

また、ビットコインを法定通貨として導入まで率いた人物、エルサルバドルのブケレ大統領についてみていきましょう。ブケレ大統領は2019年6月に大統領に就任、治安対策や汚職対策も評価され、国民から高い支持率を維持しています。

続いてお金のトレーニング。ブレケ大統領は、大統領になる前の職業はなんでしょうか?

答えは、ヤマハ発動機のフランチャイズのオーナーです。そして実はブレケ大統領は、18歳から起業していた起業家・経営者なのです。彼はSNSを通じた世論形成も得意といわれており、「あと3分で歴史はつくられる」と9月7日にTwitterで投稿し、世界中から注目を集めました。

エルサルバドルでは、国民がビットコインをアメリカドルに換金できるように、ビットコインATMを国内各地に200台新設しました。取引に手数料はかからず、国内金融機関の50支店で資金の引き出しや預け入れを行うことができるようになります。

またエルサルバドル政府は政府公認専用アプリ「Chivo Wallet」を導入。支払いなどに使う電子的な財布にあたるデジタルウォレットに利用登録すると30ドル(約3300円)相当のビットコインを支給しアプリのダウンロードを促しています。

しかし、エルサルバドルのインターネットの普及率は約6割ほどで、普及までに解決しなければいけない課題もまだ残っています。

そして法定通貨として成立させることの最大の課題はビットコインの価格変動です。ビットコインの価格は、年初から2倍以上に上昇したあと、再び年初の水準近くまで下落するなど、乱高下しています。そのため、国際通貨基金(IMF)は、ビットコインを国の通貨として導入するには、変動が大きすぎるのでリスクがまだ大きいとの指摘があります。

エルサルバドルの中央アメリカ大学での世論調査では、約7割がビットコインの導入に反対をしていたという調査結果もあり、世界では、エルサルバドルで、ビットコインが法定通貨としてどのくらい浸透していくのか、注目が集まっています。

テクノロジーによりお金の仕組みが劇的に変化してるアフターコロナの今。ビットコインが法定通貨になる時代に突入し、新たな仕組みや法制度が次々に出てきています。

だからこそ私たちは国や企業に頼らず、自らの手で情報を集め、そして自らの頭で選択していかなければなりません。あらゆる情報が生まれてくる時代だからこそ、自分を守る手段としても、正しいファイナンシャルリテラシーを身につけておきたいものです。

Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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