HEALTH

2023.10.22

在宅ワークが影響!? 意外と知らない嚥下障害の原因と予防法

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。。第25回は「嚥下(えんげ)障害」。老化による症状というイメージがあるが、その影響は社会生活にも及び、時には重大な病気のサインとして現れることもあるという。今から実践できる予防法などについて、嚥下障害の研究で知られる東京医科歯科大学の戸原玄(はるか)教授に聞いた。連載「金を使うならカラダに使え!」とは……

堀江貴文連載タイトルVol.25

食べ物が飲みこみづらくなる嚥下障害は、社会生活にも影響大

堀江貴文(以下堀江) 戸原先生とは以前対談したことがあって、嚥下障害の原因や予防法を教えていただき大変参考になったのでゲーテでもお話しいただこうと。嚥下障害って、食べ物が詰まる、むせる状態だという知識はかなり知られていますが。

戸原玄(以下戸原) そうですね。口からものを食べられてはいるけれど危ない状態、ということです。食べ物が詰まる、むせるなど、食べるのが困難という状態で。周囲の人にとっては食事の準備や介助が大変という面があります。

原因は老化で、進行すると食べ物が肺に入って炎症を起こす誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。また、食べる量が減ることで低栄養となり、「患者」としての生活が続くことになる。ゲーテの読者世代である40〜50代から時々むせるという人が増えますが、読者の親世代になると、症状が進んで介助やリハビリ食を利用する患者さんも増えます。

堀江 先生に教えてもらった予防や症状改善に効くトレーニングは、簡単だし時間もかからないですよね。

戸原 口を大きく開ける開口トレーニングですね。口を最大に開口して10秒キープするのを5回×2セット。これを1日に2〜3回くらい。口を開けるのと飲みこむのは同じ筋肉を使っているので、嚥下の改善に効果があります。患者さんたちの声になりますが、2週間ほど続けると“むせ”が減ってくると実感するようです。

また、噛む機能では、顎のエラ部分にある咬筋(こうきん)を使いますが、歯の数が減ると、この咬筋が減ることがわかっています。咬筋を復活させるには、柔らかいマウスピースを作って歯に装着し、10秒間噛みしめるのを5回繰り返すことで、噛む力の改善が見られます。

体幹を鍛えキープすることが将来の予防につながる

堀江 あとは体幹トレーニングですよね。

戸原 はい。嚥下機能は、口や頭部だけで行うわけではなくて、体幹の筋肉量との関連性があるんです。サルコペニア(老化や疾患などによる筋肉量の低下)で体幹が不安定になって椅子に座れなかった人が、トレーニングで筋肉量を増やして座れるようになると、嚥下の機能が回復することがあります。

体幹を保つことはとても重要で、寝たきりはよくありません。立ち上がって椅子に座る時間を増やしたり、人に会うとか、どこかへ出かけるのもいい。それを“辛いリハビリ”としてではなく、楽しんでできたらいいですね。ゲーテの読者世代ならスクワットをやってほしいです。

堀江 嚥下障害の進行って、社会性に関係があるそうですね。出かけたり人に会うのって、面倒くさいこともありますけど。

戸原 人前に出るなら見た目も気になりますしね。アタマがボサボサでもいけないし、くたびれた部屋着でもダメ。ニオイも気になるし、歯磨きもしなくちゃいけない。背筋も伸ばそうとするだろうし、歩き方も家の中にいる時とは変わるでしょう。

コロナ禍で在宅ワークやネットショッピングなど、出かけなくても済むことが増えましたが、それが筋力低下につながり、嚥下機能も低下するという悪循環に陥りやすいんです。

堀江 出かけるとか、そこまで運動量が激しくない、僕がお薦めするゴルフをしたりとか、筋肉を使うことですね。50代以降になると、男は痩せるだけで嚥下機能が低下しやすいって、前に教えてもらいましたし。

戸原 はい。喉仏が下がってきて、顎の筋肉がたれ下がってくるとけっこうむせてきます。

堀江 筋肉を作る、男性ホルモンの分泌も低下しますしね。

戸原 ゲーテ読者世代の嚥下機能の低下はまだ先の話ですが、知識は持っていていただくほうがいいです。食べるとむせる、飲みこむ時につかえる、食べにくい、喋りにくい、などは自分でわかりますよね。

40〜50代で時々むせる程度ならそこまで深刻ではないし、トレーニングをしてよくなれば自分もラクになるし、誤嚥性肺炎のような生命に直結する事態にはなりませんが、運動しているのに嚥下のしにくさがどんどん悪化するようなら、他の病気が潜んでいる可能性があります。

神経系の疾患、パーキンソン病やALS(筋萎縮性側索硬化症)などですね。食べ物が噛めないから歯が悪いんじゃないかと歯科を受診したらALSだった、という例も実際にありますから。ALSは、身体を動かすのに必要な筋肉が徐々に痩せていき、力が入らなくなる病気です。

「先週と比べて急に悪化した」とか、開口トレーニングを続けても改善されず悪化したという場合は、放置せずに病院を受診すべき。まずは嚥下障害か他の病気なのかを診断する必要がありますが、その際は、嚥下障害を診ている病院かどうかを調べてください。嚥下障害はまだ受診科目となっていないので、私のほうで作成した「摂食嚥下関連医療資源マップ」を活用していただけたら。

堀江 嚥下障害は急に悪化はしないから、急激な変化を感じたら別の病気の可能性がある。というのは判断しやすいですね。

戸原 嚥下のしにくさは、誰にでも起こる普通の老化です。とはいえ、筋肉の低下と関連しますから、食べにくい、喋りにくいという口まわりの不便さが、歩きにくい、外出したくないなど、さまざまなことにつながりやすく、自分の生活や健康、人間関係にも影響します。

堀江 アンチエイジングとして、予防を心がけたいですね。

戸原 筋肉の老化は50〜60代から始まると言われているので、そのころにはスポーツや開口トレーニングを習慣にして機能維持を心がけたいところです。趣味などの楽しみを持つのもよいですし、活動的な生活を送ってもらうのがいいと思います。

また、治療やリハビリが必要な嚥下障害の患者さんとなっても、制限があるなかでも「これはできる」「ここに行けば楽しめる」という“患者さんじゃない時間”をつくっていけるよう、医療者として心がけていきたいと思っています。

戸原氏
戸原玄/Haruka Tohara
東京医科歯科大学 大学院医歯学総合
研究科 医歯学専攻 老化制御学講座摂食嚥下リハビリテーション学分野教授。1997年に同大学歯学部卒業、ジョンズホプキンス大学医学部リハビリテーション医学講座などを経て現職。「摂食嚥下関連医療資源マップ」を公開するなど積極的に情報を発信する。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。『不老不死の研究』『堀江貴文のChatGPT大全』(幻冬舎刊)が発売中。

■連載「金を使うならカラダに使え!」とは……
カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載。

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COMPOSITION=海野由利子

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