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2022.11.12

聴覚の老化は、30代から始まる!? 鬱や認知症を進行させる難聴対策とは【堀江貴文】

今回のキーワードは「難聴」。65歳以上のなんと45%が難聴者で、聴力の低下は30代から自覚なく静かに始まるという。聴覚はコミュニケーションや精神活動に関わるため、難聴は鬱や認知症を進行させる。そう指摘する慶應義塾大学名誉教授の小川郁医師に、堀江貴文氏が補聴器の正しい購入法など広くたずねた。連載「金を使うならカラダに使え!」とは……

堀江貴文連載「金を使うならカラダに使え!」

Illustration=細山田曜

仕事上の判断ミスにつながりかねない

堀江貴文(以下堀江) 以前、小川先生から加齢性難聴が認知症を進行させるとお聞きしましたが、難聴者は増えてるんですよね。

小川 郁(以下小川) そうです。日本の65歳以上の45%が難聴とされています。寿命が延びているぶん耳を使う期間も長くなり、それに伴う機能低下を原因とする難聴者が、年々増えているんです。聴覚は言葉を聴いて、頭で言葉を考えて返事をする、というコミュニケーションに関わります。また、聴くことで嬉しい、悲しいという情動反応が起きるなど、複雑な精神活動に影響していますから、高齢者が難聴になると鬱や認知症が進むという問題が指摘されています。

堀江 加齢性の難聴とはどんな状態なんですか?

小川 内耳という、耳の奥にあるカタツムリのような形をした硬い骨に守られた器官の中に、音を感じる「有毛細胞」が並んでいます。入ってきた音は進行波として脳に伝わりますが、加齢によって毛が抜けたり有毛細胞自体が脱落すると、個人差はありますが難聴が進み、治らなくなります。

堀江 聴覚の老化はいつから?

小川 難聴は“老人がなるもの”というイメージを持たれがちですが、実は30代から聴覚の老化は始まり、高い周波数域の音から聴き取りにくくなります。騒音に晒されていたり、音楽を大音量で聴くことも影響します。

堀江 それは自覚できますか?

小川 本来、耳は20〜2万ヘルツという、幅広い周波数域を聴き取る能力がありますが、一般的な会話に必要なのは4000ヘルツくらいまで。ですから、2万ヘルツ領域が聴こえなくなっても日常生活に影響はないし、自覚はできません。40〜50代になると4000〜8000ヘルツの音が聴き取りにくくなり、不便が出てきます。例えば電子体温計などの「ピッ」という電子音は4000ヘルツ近辺ですね。それでも日常会話を聴き取るぶんには支障はないでしょう。いよいよ60代になると、会話にも支障が出てきます。言葉の子音が聴こえなくなってくるので「サトウさん」と「カトウさん」を聴き間違える、呼ばれていないのに反応する、といったことが起きてきます。特に雑音のなかでは子音が聴き取りにくいので、多人数が参加する会議で会話が聴き取れないとか、話がかみ合わないということが出てくるでしょう。会話の相手は異変に気づくかもしれませんが、指摘はしにくいでしょうね。

堀江 仕事上の誤解や判断ミスにつながりかねないですね。自分で気になったら、積極的に受診や検査をすべきかも。聴力の回復には、やはり補聴器ですか。

小川 耳に残存聴力があれば補聴器です。ただ、日本では聴覚の低下を感じても多くの方が医師の診断を受けないので、補聴器利用が望ましい難聴者の14%程度しか使っていないというデータがあります。さらに、補聴器の購入時に耳鼻咽喉科を受診した人は42%。そのためか、補聴器の満足度を調べると日本は非常に低い。2018年の調査によると、イギリス、フランス、ドイツは74〜82%の満足度ですが、日本はわずか38%。自分の難聴程度や症状の診断をせずに購入しているためと思われます。

堀江 補聴器の使用率が低いのはなぜですか?

小川 装着時の見た目への拒否感、そして、補聴器が高価で、日本では、購入に際しての公的補助がほぼないことも要因です。そしてもうひとつ、メガネと同じように、つけさえすれば聴こえるだろうと思って購入してしまうのも原因でしょう。本来、補聴器で快適に聴こえるようになるためには、聴覚リハビリテーションが必要ですが、そういった正確な情報がないまま、販売されているのが現状ですね。

堀江 今の補聴器はどんな機能を持っているんですか。

小川 耳の中にすっぽり入って目立たないものとか、耳の後ろ側にひっかけるタイプが人気です。聴き取りたい方向以外の音をカットする指向性の向上とノイズ抑制、ハウリング抑制など、機能も進歩しています。とはいえ、補聴器の装用で内耳の有毛細胞が正常な状態に戻るわけではなく、まばらな有毛細胞によって少ない情報を聴覚中枢に届けていることに変わりはありません。ですから、個々に合わせた補聴器選びと、聴覚リハビリテーションが必須なんです。

堀江 購入の仕方が重要ですね。

小川 40〜50代ですべきことは、年に1度の健診を必ず受けて、異常があったら精密な聴力検査を受けること。受診は耳鼻咽喉科で、補聴器が必要かどうかの判断もしてもらえます。日本の耳鼻咽喉科医は1万人超で、そのうちの半数くらいは補聴器相談医の資格も持っています。補聴器についての研修を定期的に受けている医師がいる医療機関がよいでしょう。補聴器の購入を決めたら、補聴器相談医に補聴器適合に関する情報提供書を発行してもらいます。補聴器購入費用の医療費控除のために必要です。購入は認定補聴器専門店という、補聴器を調整する専門スタッフがいる販売店を紹介してもらってください。そこには認定補聴器技能者という準国家資格を持った専門家がいますから、補聴器の調整とリハビリテーションを受けられます。このルートでの購入なら、自分に合った補聴器を購入でき、満足して使えると思います。

堀江 難聴のサポートができて、認知症の予防にもなりそうです。

小川 はい。最後にひとつ知っていただきたいのが、退職後の60〜65歳は、居住地域で行う健診を受けられますが、そのなかに聴覚検査は含まれていません。つまり、難聴が進んで認知症リスクが高まる世代なのに、気づく機会がなくなるんです。今後、制度が変わるまでは自発的に人間ドックや個別の検査を続けていただきたいですね。

Kaoru Ogawa
1955年宮城県生まれ。慶應義塾大学名誉教授。慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授を退任後、2021年に耳鳴り、補聴器、聴覚障害に特化したオトクリニック東京を開設。創薬研究を行うオトリンク代表取締役。日本耳鼻咽喉科学会専門医、補聴器適合判定医、補聴器相談医。

Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、アプリのプロデュース、会員制オンラインサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。共著に『女性の「ヘルスケア」を変えれば日本の経済が変わる』。

※この連載で紹介する医療は、研究中の医学に基づいて自由診療で行われており、現在も検証や臨床試験が続いています。

■連載「金を使うならカラダに使え!」とは……
カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する連載。

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COMPOSITION=海野由利子

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