気力の衰え、イライラ、体のだるさ、体重の増加、性欲減退……。男性更年期障害の辛い症状を解消するのに効果的なのは、男性ホルモンを増やすことだ。気になるその方法とは!?
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ホルモン補充療法は注射と塗り薬の2タイプ
辻村先生いわく、「男性更年期障害の原因は男性ホルモンの減少。つまり、男性ホルモンを補充すれば、症状の緩和が期待できます」。最も効果が高いのは、なんといっても医療的な処置。ただし、海外では内服薬(飲み薬)も普及しているが、日本で認められている補充療法は、外用薬(塗り薬)と注射のみだ。
「外用薬は、テストステロンクリームを1日1~2回、陰嚢や頬、額などに塗るだけと手軽なのが最大のメリットです。日本で販売されているものは、テストステロンの濃度が1%程度と低いですが、濃度5%以上の海外製を輸入し、処方するクリニックもあります」
注射は、テストステロンを体内に直接注入するタイプと、睾丸に働きかけ、テストステロンをつくり出させるタイプの2種類。前者は2~4週間に1回程度、腕などの筋肉に注射し、3ヵ月程度行って効果をチェック。効果が認められれば、その後、半年~1年程度処方するのが一般的だという。
「後者は、性腺を刺激してテストステロンの分泌を促すため理に叶っているのですが、注射の頻度が週3、4回と多いのが難点。前者は長期に使用すると精子をつくる機能が抑制されてしまう恐れがあるため、将来的にお子さんを望んでいる方は、利用に慎重になった方がよいでしょう。また、外用薬も注射も、前立腺肥大や肝臓病など病気を抱えている場合は受けられないなど注意点があるので、必ず医師に相談ください」
食事や運動、社会生活でもテストステロンは増やせる
テストステロンを大幅に増やすとまではいかないものの、日常生活で改善することも可能。
「バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠。健康維持に必要なこれらの要素は、テストステロンを増やしたり、減少スピードを遅らせたりといった効果が期待できます」
食事は、テストステロン生成に欠かせないタンパク質はもちろんビタミン類もしっかり摂取を。とくにテストステロンなど性ホルモンに似た構造を持つとされる「セリ科の野菜(にんじん、パセリ、三つ葉など)」や、精巣の機能を高めると言われる「亜鉛を含む食材(牡蠣やレバー、うなぎ、牛肉、大豆類など)」、男性ホルモンの一種、DHEAの数値アップに効果的とされる「山芋」、同じく男性ホルモンの一種、アンドロゲン生成を促進する「ネギ類(ネギ、ニラ、ニンニクなど)」、ホルモン分泌の司令塔とされる脳の視床下部に働きかける「ビタミンE(アボカド、アーモンド、抹茶など)」は、意識的に摂りたいところだ。
「タマネギに含まれる含硫アミノ酸も、テストステロン分泌を促すことが研究データで判明しています。1日に1/2個程度を目安に食べることをおすすめします」
運動は“適度”がキーワード。週に2~4回ほどウォーキングや軽めのランニング、エアロバイクを30分程度など、心地よく疲れる程度がベスト。逆に、マラソンやトライアスロンなど、ぐったり疲れるほどハードなトレーニングは、テストステロンの数値を下げてしまうので要注意。
「月に200時間走るとテストステロン数値が下がるというデータもあるんですよ。マラソンやトライアスロンを行うなら、数ヵ月に1度など、期間を空けたほうが良いと思います」
良質な睡眠は、枕や布団など自分に合ったものを選ぶ、寝る前にスマホやPCなど明るい画面を見ないなど、睡眠環境がカギを握る。けれど、それ以上に重要なのはメンタルだ。
「不安や心配事があると入眠障害を起こしやすく、気持ちが落ち込んだり、塞いでいたりすると早朝覚醒しやすいと言われています。とくに、40代、50代は、社会的責任が大きい時期。仕事や人間関係におけるストレスで、良質な睡眠がとれていないケースは多いかもしれません。“卵と鶏”でどちらが先とは言い難いですが、ぐっすり眠れないことでテストステロン数値が下がり、テストステロン数値が下がることでより眠れなくなるといった悪循環が起こる可能性は、大いにあります」
そもそも、ストレスとテストステロンの分泌には相関関係があると言われているそうで、若くても過大なストレスにさらされているとテストステロンががくんと減少することがあるとか。実際、転職や職場での配置転換を機に、テストステロンの数値が改善するケースも少なくないという。音楽を聴く、香りで癒される、自然の中に身を置くなど、自分なりのストレス解消法を持つことは、男性更年期解消にも役立ちそうだ。
「人と交流する、外に出かけて刺激を得るといった“社会活動”も、テストステロンの分泌を促すんですよ。女性と触れ合うなど、心がときめく時間を持つことも有効だと思います」
脂が乗り切った年代と言われる40代、50代を有意義に過ごすべく、食事、運動、睡眠に気をつけ、上手にストレスを解消し、叶うのであれば“ときめく時間”を持ち、男性更年期障害と無縁の生活を送りたい。
こんな症状が出たら要注意! 男性更年期障害チェックリスト
<監修>辻村晃 先生
兵庫医科大学卒業。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授に就任。生殖医学や性機能障害のエキスパートとして、Dクリニック東京の男性更年期と男性妊活外来を担当。
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