なんとなく体がだるい、気分が落ちこむ、おなか回りが目立ってきた、男性力が急激に低下……。その原因、「年のせい」じゃなくて「男性更年期」かも!? 40代から50代の働き盛りを襲う男性更年期障害、正しく知って、正しく対処を!
「男性更年期」の認知が普及したのは2000年代から
40歳を過ぎた頃から感じ始める心身の不調。体力が落ちた、疲れやすくなった、おなかが出てきた、気力が沸かない、集中力が持続しない、性欲が沸かない。けれど、周りを見渡せば、同年代でも若い時期と変わらずパワフルで、気力・体力充実している人もいる。そんな風に個人差があるのは、その原因が「男性ホルモンの減少」にあるからかも!?
「男性ホルモンの数値が下がることで生じる心身の不調を総称し、男性更年期障害と呼びます」というのは、男性更年期障害の第一人者、辻村晃先生。
更年期障害は、閉経前後の女性に起こるもの。長らくそう思われてきたが、2000年以降、その“男性版”がメディアなどで取り上げられるようになり、認知が普及。専門の治療機関も登場し、受診する患者も増加傾向にある。
「男性ホルモンが減る=勃起障害や性欲減退といった男性力が衰えることだと考えがちですが、実はそうではありません。女性の更年期障害は、女性ホルモンを必要とする臓器がホルモンの激減によってうまく働かなくなることで引き起こされますが、男性の更年期障害もほぼ同じ。男性ホルモンは体全体に関わるホルモンなので、精神面や肉体面にも不都合が生じるんですよ」
男性ホルモンにはいくつか種類があり、代表的なのはテストステロン、デヒドロエピアンドロステロン、ジヒドロテストステロンの3つ。そのうち分泌量の大半を占めるのは、主に睾丸(精巣)でつくられテストステロンで、「筋肉や骨、体毛を生成し、男性らしい体をつくる」「生殖機能を促進し、性欲や性衝動を起こす」「モチベーションをアップするなどバイタリティを高める」といった役割を担っている他、記憶力や認知力にも関係しているとも言われている。つまり、テストステロンは“男性らしさ”をつくる素であり、男性ホルモン=テストステロンと言い換えられるというわけだ。
テストステロンは20代をピークに緩やかに下降
テストステロンの分泌が急激に増えるのは思春期で、その結果、「睾丸や陰茎が発達する」「陰毛が生えてくる」「声変わりする」といった第二次性徴が表れる。分泌のピークは20歳前後とされ、個人差はあるものの、一般的には30代頃から緩やかに減少していく。
「女性の場合、閉経を機にホルモン分泌ががくんと減ります。そのため、閉経の前後5年ずつ、10年ほどの間に更年期障害が起こりやすいと言われていますが、男性の場合、減少スピードが緩やかなので、更年期が始まる時期の目安が立てづらいんですよ。30代から更年期障害の症状に悩まされる人もいれば、50代以降に症状を自覚する人もいます」
さらに、個人差も大きく、テストステロンの分泌量の数値が低いのに症状が出ない人がいる一方、数値にさほど問題はないものの不調を訴える人もいるのだとか。また、更年期障害の発症には性格も関係しているという研究データもあるそうだ。
「本人が自覚するか否かに関わらず、テストステロンの減少が心身にマイナスの影響を与えるのは事実。放っておくと、糖尿病や高血圧といった成人病や、鬱や動脈硬化といった深刻な病気につながる危険性もあります」
動脈硬化が脳で起これば脳梗塞に、心臓で起これば心筋梗塞や狭心症を引き起こす危険性があり、最悪の場合、死につながることも。「更年期障害=男性力が低下すること」ではなく、死のリスクさえも潜むなかなか厄介な疾病なのだ。
次回は、男性ホルモン減少がもたらす危ない症状について、解説してもらおう。
監修:辻村晃 先生
兵庫医科大学卒業。日本泌尿器科学会 泌尿器科専門医、日本生殖医学会 生殖医療専門医。国立病院機構大阪医療センター勤務後、ニューヨーク大学に留学。大阪大学医学部泌尿器科准教授などを経て、順天堂大学医学部附属浦安病院泌尿器科教授に就任。生殖医学や性機能障害のエキスパートとして、Dクリニック東京の男性更年期と男性妊活外来を担当。