フェデックスカップ・フォールは来季シード権を懸けた最終決戦。2025年10月9日〜12日、横浜カントリークラブで初開催されるベイカレント クラシックも、その運命を左右する舞台の一つだ。1打で明暗が分かれる秋の戦いに挑む注目選手、アレックス・ノレンが振り遅れを解消するために実践する独特な“矯正スイング”を動画付きで紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

フェデックスカップ・フォール──来季を懸けた秋の決戦場
PGAツアーはプレーオフを終え、フェデックスカップ・フォール(以下、フォール)初戦のプロコア選手権が行われた。
この試合では世界ランキング1位のスコッティ・シェフラーが優勝したが、フォールの7試合は、主にフェデックスカップ・ランキング50位に届かなかった選手たちが来季の出場資格を懸けて挑む舞台である。
まさにシード権を巡る最終局面であり、「1打」がツアー生命を左右するほどの緊張感が漂う。
さらに2025年から、翌シーズンのフルシードを得られる順位が125位から100位に縮小されたことで、争いはいっそう激化している。
一方で、優勝すればフェデックスポイント500ポイントと2年シードを獲得できるため、大逆転の可能性を秘めた最後のチャンスでもある。
7試合で繰り広げられるシード権サバイバル
2024年11月に行われたフォール最終戦、ザ・RSMクラシックは、まさに生き残りを懸けた舞台だった。
ジョエル・ダーメンは118位でフォールに入り、最終戦を迎えた時点では124位とシードぎりぎりの位置。初日は73をマークして101位と出遅れ、2日目は巻き返したものの、18番で約2メートルのパーパットを沈め、予選通過ラインぎりぎりで踏みとどまった。
迎えた最終ラウンド、13番パー4(406ヤード)では110ヤードを直接沈める劇的なイーグル。6アンダー64の猛チャージで35位に食い込み、最終的にポイントランキング124位に踏みとどまり、125位以内のフルシードを死守した。
最後にあと一歩でシードを逃したのがザック・ブレアだ。
115位でフォールに臨み、初戦のプロコア選手権で13位タイに入り107位まで浮上。しかしその後は順位を下げ続け、最終戦を123位で迎えながらも痛恨の予選落ち。
結果的に126位に後退し、フルステータスのシードを失った。ダーメンも予選通過できなければ、ブレアと同じ運命をたどっていた可能性があり、まさに「1打」で人生が分かれる瞬間だったといえる。
一方で、フォールで大きな飛躍を遂げた選手もいる。
ニコ・エチャバリアは110位からのスタートだったが、試合ごとに調子を上げ、日本開催のZOZOチャンピオンシップで見事優勝。シード確保にとどまらず、最終的には54位まで浮上し、翌年のシグネチャーイベント2試合への出場権を得られる「エーオン・ネクスト10」にも入った。
フォールでの逆転劇を象徴する一例といえるだろう。
実力者が集う“オン・ザ・バブル”の注目選手たち
2025年のフォールは、フルシードラインの100位周辺に実力者がひしめいている。
PGAツアー3勝のトム・キム(99位)、8勝を挙げているビリー・ホーシェル(106位)、6勝のマックス・ホーマ(107位)に加え、2024年シードを死守したジョエル・ダーメン(98位)も“オン・ザ・バブル”に並ぶ。
なかでも注目はアレックス・ノレン(109位)だ。
シーズン序盤にハムストリングを痛めて出遅れ、2025年5月から復帰した影響で順位を落としたが、DPワールドツアーでは復活の兆しを見せている。8月のブリティッシュ・マスターズで約7年ぶりの勝利を挙げ、9月にはBMW PGA選手権も制して通算12勝目を加えた。
一方で、2018年から参戦しているPGAツアーではいまだ未勝利。これまで2位が3回、3位以内が9回と惜敗を重ねており、その回数は現役選手最多タイである。
悲願のPGAツアー初優勝を遂げたトミー・フリートウッドに続き、ノレンにも待望の瞬間が訪れるか注目される。
また、日本人選手にとってフォールは積極的にポイントを稼ぐ好機となる。
横浜カントリークラブで初開催されるベイカレント クラシックは、開催国の利を活かせるだけでなく、シード争いを左右する重要な舞台となるだろう。
2024年のジョエル・ダーメンが示したように、フォールではわずかな差が劇的な生還を生み、小さな失敗が脱落に直結する。秋の一戦一戦が、来季の行方を決定づける大きな意味を持っている。
“大根切り素振り”で振り遅れを矯正
アレックス・ノレンは、ジュニア時代からの振り遅れや体の傾きなどの悪癖を修正するため、独特な素振りを取り入れている。
トップから腰や肩を急激に回し、クラブをアウトサイドから振り下ろす“大根切り”のような動きだ。この感覚でスイングすることで、ダウンスイング時に体が右に傾いて振り遅れる癖を矯正している。
ゴルフでは感覚と実際の動きにずれが生じるが、このような極端な正反対の動きを繰り返すことで、新しいスイングパターンを体に植え付け、安定したショットにつなげている。
ノレンの取り組みは悪癖矯正の好例であり、アマチュアゴルファーにとっても、自分の癖を打ち消すためにオーバーに逆の動作を取り入れることは有効だ。
こびりついて取れない癖がある人は、ノレンのように正反対の動きをしつこく繰り返してみてほしい。
振り遅れ解消ドリルの動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。