GOLF

2025.05.24

飛距離と正確性がUP。個性的でも、実は科学的なデシャンボーのスイングは、アマも参考になります

今回はブライソン・デンジャボーの飛んで曲がらないスイングを紹介する。

吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン/飛距離と再現性を追求したデシャンボーのスイング

クリス・コモとマイク・シャイの教えを融合

2025年のマスターズ最終日、ローリー・マキロイが悲願の優勝を飾り、ついにキャリアグランドスラムを達成した。その日、同じ最終組でラウンドしていたのがブライソン・デシャンボーだった。

一時は単独首位に立つ場面もあったが、アイアンショットとパターの不調に苦しみ、最終的には5位に終わった。全米オープンで2勝を挙げている実力者だけに、近いうちにマスターズ制覇のチャンスが再び巡ってくることだろう。

デシャンボーといえば、圧倒的な飛距離が武器だ。だが、もともとは飛距離が出るタイプの選手ではなく、正確性を重視するプレースタイルだった。

ところが、2019年の秋ごろから20キロ以上も体重を増やし、前年は302.5ヤードで34位だった平均飛距離が、2019-2020シーズンには322.1ヤードとなり、PGAツアー1位を記録した。

肉体改造によって飛距離が伸びたと言われているが、それだけではなく、飛距離を伸ばすためにスイングも大幅に改造した。それまでの正確性重視の1プレーンスイングから、地面反力によって飛距離を生み出すスイングに大きく生まれ変わったのだ。

デシャンボーのスイング改造において大きな役割を果たしたのが、タイガー・ウッズの前コーチで、現在はザンダー・シャウフェレなどを指導するクリス・コモだ。

コモはテキサスでヤン・フー・クォン教授の大学の研究室に通い、バイオメカニクス(生体力学)をベースとしたゴルフティーチングを学ぶ。そこで学んだ地面反力を活かすスイング構築に長けており、デシャンボーへの指導においても地面反力を最大限活用することで飛距離アップを実現した。

私が2019年にクォン教授の研究室を訪れた際も、デシャンボーとコモがクォン教授の研究室を訪れてスイング計測を行っており、クォン教授も彼らにアドバイスを与えていた。

もう一人、デシャンボーのスイングの土台を作った人物として外せないのが、マイク・シャイだ。デシャンボーが12歳の頃から指導しており、再現性を追求した「ワンプレーンスイング」の基礎を築いた。

ワンプレーンスイングは、バックスイングとダウンスイングのクラブ軌道を同一にするため、スイングの再現性を高めやすい。だが、下半身を積極的に使うとダウンスイングの軌道がフラットになってしまうため、下半身の動きを抑えて土台のように使う必要があり、飛距離が出にくいという側面がある。

その課題を補うために肉体改造と地面反力を組み合わせ、飛距離と再現性の両立を図ったのが、現在のデシャンボーのスイングだ。

デシャンボーは現在LIVゴルフでプレーをしており、ダナ・ダールクイストの指導を受け、再現性と精度を重視したスイングをさらに進化させている。

2つの軸回転で爆発的なパワーを生み出す

こうして完成されたデシャンボーのスイングは独特だ。

アドレスではクラブと左腕を一直線にし、ロボットのような硬さを感じさせる構え方をする。グリップは一般的なフィンガーグリップではなく、パーム(手のひら)で握るウィークグリップを採用し、クラブヘッドが過度に動かないようにしている。

腕の使い方にも特徴がある。左腕の上腕が内側に入り、前腕がやや外旋するような構えを取ることで、クラブとの一体感を強調している。

バックスイングでは体の回転に連動して右肘は曲がるものの、スイング中はできるだけ両肘を伸ばした形をキープしようとしている。

カリフォルニアにあるシャイのレッスン施設を訪ねた際に、バックスイングで右肘を伸ばすことを意識するための練習方法を教わったが、デシャンボーも同様の練習を行っていたという。

飛距離を出すスイングに改造した後に大きく変わったのが、下半身の使い方だ。

バックスイングでは左足をヒールアップし、切り返しではその左足を強く踏み込むことで地面に力を加えている。そこからインパクトに向けては左足を抜重して肩を縦回転させつつ、右足をしっかり押し込んで垂直軸の回転を促進させている。

このように、デシャンボーは縦方向の地面反力と垂直軸を回転させるトルクを同時に活用することで、爆発的なパワーを生み出している。見た目には個性的でも、理にかなったパワーと再現性が融合した「科学的によって作られたスイング」といえる。

アマチュアが学ぶべき「再現性の追求」

このスイングをアマチュアがそのまま真似するのは、正直なところ難しい。しかし、デシャンボーのスイングから学べることは多い。特に、「手や腕を使わず、体の回転でスイングの再現性を高める」という点は参考になるだろう。

体と腕をシンクロさせることはスイングの基本であり、再現性を高めるためには欠かせない。デシャンボーがスイング改造に成功したのは、正確性という土台の上に飛距離を伸ばす要素を加えたからだ。飛距離を追い求める前に、まずはスイングの基礎を安定させることが、スコアアップにつながる第一歩といえるだろう。

デンジャボーの飛んで曲がらないスイングの動画解説はコチラ

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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