GOLF

2025.02.27

アイアンのアタリが安定しない…気をつけるべきは、バックスイング時のクラブヘッドの位置

全盛期のタイガー・ウッズを彷彿とさせるスコッティー・シェフラー。そんなシェフラーの対抗馬として期待される一人がコリン・モリカワだ。モリカワの武器である再現性の高いスイングを身につける練習法を紹介する。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

2025 ザ・ジェネシス招待最終日でスイングするコリン・モリカワ。
2025年ザ・ジェネシス招待最終日のコリン・モリカワ。

2024年、圧倒的な強さを見せたシェフラー

PGAツアーが開幕して1ヵ月が経つが、選手の状態を観察して今シーズンの展開を予想している人も多いだろう。

2025年も昨年同様、スコッティ・シェフラー1強のシーズンになるのかが気になるところだが、2025年もここまでザ・ジェネシス招待の3位を含め、出場3試合でベスト10フィニッシュ2回と強さは健在。

2024年暮れに手の平を切る怪我を負ってファンを心配させたが、すでにプレーにはまったく支障がなさそうだ。2025年29歳を迎えるということで、年齢的にも全盛期を迎え、2024年以上の活躍を見せてもおかしくはない。

シェフラーの2024年の成績を振り返ってみると、3月にアーノルド・パーマー招待で優勝した後、翌週のザ・プレーヤーズ選手権で大会史上初となる連覇を達成。

4月にはマスターズでメジャー2勝目を挙げ、パリ五輪では金メダルを獲得した。そして、9月のツアー選手権も勝利し、初の年間王者に輝いた。

さらに12月のヒーローワールドチャレンジも連覇して1年を締めくくった。2024年は出場21試合に出場して9勝、18試合でトップ10フィニッシュという圧倒的な結果を残して年間最優秀選手賞も受賞した。

2025年は、全盛期のタイガー・ウッズを彷彿とさせるシェフラーの勢いを止める対抗馬が出てくるのかも気になるところだ。

ライバルの存在によって、強さに磨きがかかる可能性もあるうえに、ライバルとの熾烈な争いはファンを熱狂させる。果たしてシェフラーを脅かす存在は現れるのかを考察してみたい。

モリカワの伸びしろに期待

シェフラーを止める存在として最も近い存在といえるのが、2024年PGAツアーの年間最優秀選手賞候補に挙がったふたりだろう。

2024年、全米プロと全英オープンを制してメジャー2冠を獲得したザンダー・シャウフェレ。

DPワールドツアーの年間王者となり、セベ・バレステロス賞(欧州ツアー年間最優秀選手賞)を受賞し、2025年もAT&Tペブルビーチプロアマで優勝してツアー27勝目を手にしたローリー・マキロイ。

このふたりは実力、実績ともに申し分ない。

だが、2025年でシャウフェレは32歳、マキロイは36歳。まだまだ若い選手には負けていないものの、これからの伸びしろを考えるとシェフラーの独走を止められる存在になりえるのか疑問符が付く。

一方で、若手に目を向けると、大学を卒業したばかりのルーキーたちの活躍が目立つが、まだまだトッププレーヤーとしての実績や安定感が足りない。

このように消去法で絞っていくと、現在のトップクラス選手からシェフラーの対抗馬となり得るのは、世界ランキング上位の20代の選手ということになる。その筆頭として挙げることができるのがコリン・モリカワだ。

2025年で28歳となるモリカワはシェフラーの1歳年下で現在は世界ランキング5位(2月18日時点)。今後、同世代のシェフラーの活躍に刺激を受け、大きく成長する可能性がある。

モリカワはすでにPGAツアー6勝(メジャー2勝)、DPワールドツアーでも3勝を挙げており実績は十分だ。

一時はブレイクするかと思われたが、2021年に全英オープンで勝利した後は優勝から遠ざかり、2023年に日本開催のZOZOチャンピオンシップで2年ぶりの優勝を手にした。

2024年はトップ10に8回も入ったものの、あと一歩優勝には届かなかった。

6月のザ・メモリアルトーナメントではシェフラーと一騎打ちとなり、4打差から1打差まで詰め寄ったが最後は逃げ切られてしまった。敗れたとはいえ、本人もシェフラーを追い詰めるゴルフができたことに手応えを感じたことだろう。

以前からショットの正確さに定評があったものの、グリーン周りやパッティングを苦手にしているところがあった。

しかし、パット専門コーチのステファン・スウィーニーやショートゲーム専門コーチ、パーカー・マクラクリンの指導の甲斐もあって、2024年はパッティングとグリーン周りの精度が大きく改善した。

2022〜2023年シーズンと2024年シーズンのスタッツを比較してみると、パッティングの指標であるストロークスゲインド・パッティングは114位から73位にアップ。アプローチショットの指標であるアラウンド・ザ・グリーンは96位から10位と前年から大きく向上した。

ところが、逆にアイアンショットの正確性が失われ、PGAツアー選手のなかで1位になったこともあるアプローチ・ザ・グリーンは2位から42位と芳しくなかった。アイアンショットの精度が元に戻れば、シェフラーを脅かす存在になるだろう。

体と腕のシンクロで再現性の高いモリカワのスイング

ショットメーカーであるモリカワのスイングには2つ大きな特徴がある。

1つ目は、バックスイングのクラブヘッドの位置だ。

飛球線後方からスイングを見たときに、クラブが地面と平行になったポジションでクラブヘッドが手元より外側に位置している。これは体と腕のシンクロした状態がキープされているためで、手先ではなく体の回転でクラブをコントロールできている証拠だ。

もう1つは、トップの位置で左手首が手のひら側に折れる「掌屈(しょうくつ)」の動きだ。

この動きによってクラブフェースが閉じるため、ダウンスイングで腰を早く回転させることでクラブフェースをスクエアに戻す必要が出てくる。この動きによってフェースローテーションを入れずにインパクトをすることになるため、ボールの方向性が良くなる傾向がある。

デビュー当初のモリカワは、今よりもクラブフェースが閉じていて、時折振り遅れてしまうことがあった。今は掌屈させる度合いを調整することで、以前よりスイングの再現性が高まった印象がある。

体格面でも日本人に近いモリカワのスイングは、アマチュアゴルファーの参考になる部分がある。モリカワのスイングを参考にして再現性の高いスイングを身につけてほしい。

動画解説はコチラ

◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=ZUMA Press/アフロ

PICK UP

STORY 連載

MAGAZINE 最新号

2025年4月号

人生の相棒、アートな家具

最新号を見る

定期購読はこちら

バックナンバー一覧

MAGAZINE 最新号

2025年4月号

人生の相棒、アートな家具

仕事に遊びに一切妥協できない男たちが、人生を謳歌するためのライフスタイル誌『ゲーテ4月号』が2025年2月25日に発売となる。今回の特集は“アートな家具”。豊かな人生を送るうえでなくてはならない、惚れ惚れするほどの家具を紹介。表紙には羽生結弦が撮り下ろし初登場。

最新号を購入する

電子版も発売中!

バックナンバー一覧

SALON MEMBER ゲーテサロン

会員登録をすると、エクスクルーシブなイベントの数々や、スペシャルなプレゼント情報へアクセスが可能に。会員の皆様に、非日常な体験ができる機会をご提供します。

SALON MEMBERになる