GOLF

2022.03.23

アマチュアがハマる落とし穴──連載「吉田洋一郎の最新ゴルフレッスン」

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という彼による、スコアも所作も洗練させるための“技術”と“知識”を伝授する最新ゴルフレッスンコラムをまとめて振り返る。ゴルフシーズン到来に向け、コソ練を積み重ねてスコアアップを目指したい。

ショートパットの確率を高める、ターゲット設定の仕方

パー4のアプローチショットをカップまで2メートルの距離まで寄せ、これが入ればパーという状況になった時、あなたはどのように考えるだろうか? 多くの人は「このパットを入れたい」と思うはずだ。カップインしたいと思うのは当然のことなのだが、アマチュアにとって「このパットを入れたい」という気持ちが強すぎると、落とし穴にハマってしまうことがある。

プロでも2メートルの距離からカップインする確率は50~60%。残り1メートルでも100%入る距離ではない。プロでも外すことのある距離を、確実に入れられるというアマチュアはほとんどいないだろう。実際、スコアが90くらいのアマチュアは2メートルの距離なら30%、1メートルでも60%入ればいい方だろう。このような距離を「絶対に入れたい」と狙うあまり、力が入り過ぎて、とんでもないオーバーやショートをしてしまうことがある。そんなミスをしてしまうと、1パットどころか、3パットになってしまうという残念な結果になる。

チャンスを逃したくないと気持ちから、積極的に狙いたくなる気持ちはわからないでもないが、ここはカップインしたいという気持ちを抑えて冷静に対応する必要がある。

2メートル前後の短いパッティングでは、フックライン、スライスラインといった横の曲がりを気にすることが多いと思う。横の曲がりに比べて、縦の距離感を気にする人は少ないと思うが、横の曲がり幅はボールの転がるスピードで決まるため、縦の距離感が合っていなければ曲がり幅を読み通りに打つことはできない。ラインを読み通りに打つためには、常にカップから30センチほどオーバーするようにボールスピードをコントロールすることが必要になる。

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アドレス時の緊張をほぐし、スムーズに始動する、地面反力フォワードプレス

アマチュアの中には、アドレスで緊張からガチガチに固まったり、スイングのチェックポイントを考えて動き出せなくなったりと、スムーズにスイングを行えない人がいる。このような状態からスイングを始めようとすると、必要以上に上半身に力が入ってスイングリズムを乱したり、手先でクラブを持ち上げて手打ちになったりと、再現性に乏しいスイングとなる。

スイング動作においてスムーズな始動を行うためには、いきなりクラブを振り上げるのではなく、動作の「きっかけ」が必要になる。プロのスイングを観察すると、スイングをはじめる前のきっかけとなる動作、「フォワードプレス」を行っている選手が多いことがわかる。世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンは、スイングを始める前に手元を目標方向に押し込んでからスタートする。かつて帝王と呼ばれたジャック・ニクラウスは始動であごを右に傾けてからスイングをスタートさせる「チンバック」を行っていた。

フォワードプレスはスイング動作のきっかけなので、どのような動作でもいいが、下半身でタイミングを取ることをお薦めする。アマチュアの場合、上半身に力が入ってしまったり、過度に上半身に頼ってしまう人が多く、下半身が適切に動かないケースが多い。上半身と下半身を使うバランスを適切にし、スイング全体の動作をなめらかにするために、下半身から始動するフォワードプレスを行うといいだろう。下半身から動き出すことで、切り返しでも下半身の踏み込みを行いやすくなり、スイングの一連の動きをスムーズに行うことができる。

PGAツアー選手の中で下半身から始動するフォワードプレスのお手本となるのが、ヘンリク・ステンソンだ。ステンソンは体の重心を少し左に移動してから左足を踏み込み、地面を押すことで発生する「地面反力」が右上に向かうのを利用してクラブを上げていく。ちょうど右肩方向へ向かう地面反力とクラブの上がっていく方向が同じなので、スムーズにスイングを始動させ、手や上半身に頼ることなくバックスイングを行うことができる。ステンソンのように地面反力を使ってフォワードプレスを行うときに重要になるのは、足裏のどこで地面を押すかということだ。左足の母指球からつま先の間で地面を押すことで、縦方向に向かう地面反力によってクラブが上がりやすくなるだけではなく、垂直軸の回転を促進するトルクを生み出すことで体の回転もスムーズになる。

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正確性に優れたコンパクトトップを作る2つのポイント【動画】

ゴルファーは様々なスイングの悩みを抱えているが、大きすぎるバックスイング「オーバースイング」を解消したいと思っている人は多い。ジョン・デイリーや横峯さくらといったオーバースイングで活躍したプロもいるが、それらの個性的なスイングをアマチュアが参考にするのは難しいだろう。一般的に、オーバースイングになると大きく振り上げたクラブを毎回同じように振り戻すのは難しく、スイングの再現性が低下し、ボールの方向性が安定しなくなる。スコアに直結する問題だけではなく、見た目もカッコいいとは言えないため、オーバースイングを解消してコンパクトなトップにしたいと願うゴルファーは多いだろう。

PGAツアーでコンパクトトップの選手といえば、トニー・フィナウが思い浮かぶ。ドライバーショットでシャフトが地面と平行になる前にトップ・オブ・スイングに到達するほどコンパクトなスイングだ。まるでアイアンのコントロールショットのようなトップ・オブ・スイングにも関わらず、平均309.8ヤード(PGAツアー13位)の飛距離を誇る。193センチ・91キロと恵まれた体格のフィナウは、フルスイングをすれば400ヤード近く飛ばすことができるが、コンパクトなトップにすることで常時300ヤードの「飛んで曲がらないスイング」を実現している。

日本人選手でも、渋野日向子のスイングが今年に入ってコンパクトになったと話題になっている。ブライソン・デシャンボーの驚異的な飛距離がゴルフ界の話題をさらっているが、渋野はコンパクトトップを採用することで飛距離よりも正確性を重視したプレースタイルに挑戦している。ツアープロでもトップをコンパクトにすることで飛距離が落ちるというデメリットがあるが、スイングの再現性とボールのコントロールを向上させるメリットを享受することができる。

コンパクトなトップを作る際の重要なポイントは2つある。それは「体と腕のシンクロ」と「切り返しのタイミング」だ。

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TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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