GOLF

2021.05.07

アドレス時の緊張をほぐし、スムーズに始動する、地面反力フォワードプレス

世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム141回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。

ナイスショットにはスムーズな始動が欠かせない

アマチュアの中には、アドレスで緊張からガチガチに固まったり、スイングのチェックポイントを考えて動き出せなくなったりと、スムーズにスイングを行えない人がいる。このような状態からスイングを始めようとすると、必要以上に上半身に力が入ってスイングリズムを乱したり、手先でクラブを持ち上げて手打ちになったりと、再現性に乏しいスイングとなる。

スイング動作においてスムーズな始動を行うためには、いきなりクラブを振り上げるのではなく、動作の「きっかけ」が必要になる。プロのスイングを観察すると、スイングをはじめる前のきっかけとなる動作、「フォワードプレス」を行っている選手が多いことがわかる。世界ランキング1位のダスティン・ジョンソンは、スイングを始める前に手元を目標方向に押し込んでからスタートする。かつて帝王と呼ばれたジャック・ニクラウスは始動であごを右に傾けてからスイングをスタートさせる「チンバック」を行っていた。

フォワードプレスはスイング動作のきっかけなので、どのような動作でもいいが、下半身でタイミングを取ることをお薦めする。アマチュアの場合、上半身に力が入ってしまったり、過度に上半身に頼ってしまう人が多く、下半身が適切に動かないケースが多い。上半身と下半身を使うバランスを適切にし、スイング全体の動作をなめらかにするために、下半身から始動するフォワードプレスを行うといいだろう。下半身から動き出すことで、切り返しでも下半身の踏み込みを行いやすくなり、スイングの一連の動きをスムーズに行うことができる。

足の踏み込みから下半身を動かす

PGAツアー選手の中で下半身から始動するフォワードプレスのお手本となるのが、ヘンリク・ステンソンだ。ステンソンは体の重心を少し左に移動してから左足を踏み込み、地面を押すことで発生する「地面反力」が右上に向かうのを利用してクラブを上げていく。ちょうど右肩方向へ向かう地面反力とクラブの上がっていく方向が同じなので、スムーズにスイングを始動させ、手や上半身に頼ることなくバックスイングを行うことができる。ステンソンのように地面反力を使ってフォワードプレスを行うときに重要になるのは、足裏のどこで地面を押すかということだ。左足の母指球からつま先の間で地面を押すことで、縦方向に向かう地面反力によってクラブが上がりやすくなるだけではなく、垂直軸の回転を促進するトルクを生み出すことで体の回転もスムーズになる。

左足で地面を踏む動作は左右の動きが出やすく、体を揺するような動きでイメージがわかないという人もいる。そのような人は右足を踏み込むフォワードプレスを行ってみてほしい。右足で地面を押しても、地面反力は上に向かうので、左足の場合と同様にクラブの動き出しはスムーズになる。地面を押すときのポイントは左右で若干異なる。右足の場合、右に重心を移動せず、かかとを浮かせて、ヒールダウンを行って地面を押すようにする。地面反力が上に向かう動きと連動して、バックスイングを行うといいだろう。右足のかかとに体重が移動することで、地面反力を使って垂直軸の回転も促進することもできる。どちらの足から踏み込んでも、大きな違いはないので、行いやすい方法を選ぶといいだろう。

フォワードプレスを取り入れる際、素振りでフォワードプレスを試し、慣れてきたら練習場でボールを打ちながら試してみてほしい。動きが体に馴染んできたらコースで行うといいだろう。フォワードプレスが習慣化すれば、逆にフォワードプレスなしではスイングできなくなるほど必要不可欠なものとなる。そこまで習慣化されれば、プレッシャーのかかる場面でもスムーズに始動を行うことができるだろう。

アドレスを取ったものの、どのタイミングでスイングを始めればいいのか分からないという人は、足の踏み込みによる始動を試してほしい。きっと、これまでとは違ってスムーズにクラブを振れるはずだ。

 

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TEXT=吉田洋一郎

PHOTOGRAPH=小林 司

COOPERATION=取手桜が丘ゴルフクラブ

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