役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。今回は、2025年8月29日公開の映画『愛はステロイド』を取り上げる。

人生を筋肉と映画から学ぶ
若い頃はひょろひょろでしたが40代に突入して筋トレに目覚め、毎日、身体のどこかが筋肉痛であることに、ある種のエクスタシーを感じてしまうようになってしまったトレーニー滝藤です。
トレーニーならわかってもらえるでしょう。身体に負荷をかけると、自分のなかで終わってしまっていた何かが蘇ってくる感覚。ブッと広がった血管の中を血液が勢いよく流れていく快感。50歳を目前にしてもまだまだ成長し続ける恐るべき人間の本能。生きてる! オレは生きてるぞ!
先日、某所で高倉健さんがトレーニングしていたというダンベルを使わせていただく機会を得て、改めて偉大なる先人も筋肉維持に余念がなかったのだと感激し、まるで健さんとともにトレーニングをしているかのごとく、幸せな時間を過ごしました。
2025年5月に日本でも公開された、デミ・ムーアが炸裂した映画『サブスタンス』もブッ飛んでましたが、『愛はステロイド』もヤバいです。時代設定は1989年。町のトレーニングジムで働くルーは、ラスベガスの大会での成功を夢見るボディビルダーのジャッキーと瞬間発着のフォーリンラブに。ルーが勧めるステロイドに手を出したジャッキー。バッチバチに血管が浮きでて、筋肉が鼓動を打つかのように脈打ち、ブン! ブン! とパンプアップしてくる。
ああ、オレも筋トレがしたい。今すぐ腕立て伏せをやりたい。鉄アレーで上腕二頭筋が千切れるまで攻めたい。観ているだけでアドレナリンが……。ルーとステロイドに依存するジャッキー。そんなジャッキーに依存するタッキー。
しかし、どうしたエド・ハリス。なんだそのヘアスタイルは。東京に出てきたばかりの19歳のオレは映画『アポロ13』『ザ・ロック』のあんたに痺れまくったんだぞ! そのヘアスタイルのせいで、途中まであんただって気づかなかったぞ! そして題名!『愛はステロイド』って! 狂ってる。この狂った映画に狂ったエド・ハリス。暑すぎてぐったりなこの時期に、漲る映画です!
『愛はステロイド』
男たちの抑圧に立ち向かう女性ふたりの恋と狂気の物語。クリステン・スチュワートが父の支配下に置かれるルー役に。ジャッキー役は『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』に出演、ボディビル選手としても活躍していたケイティ・オブライアン。
2024/イギリス・アメリカ
監督:ローズ・グラス
出演:クリステン・スチュワート、ケイティ・オブライアン、エド・ハリスほか
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2025年8月29日より全国公開
https://a24jp.com/films/loveliesbleeding/
滝藤賢一/Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。現在、『事故物件ゾク 恐い間取り』が公開中。2025年9月5日には『風のマジム』が公開される。