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2024.06.29

滝藤賢一の映画独り語り座 緊張感が半端ない! 禁じられた熊狩りに挑む、若きマタギを描いた映画『プロミスト・ランド』

今回は、2024年6月29日公開の映画『プロミスト・ランド』を取り上げる。■連載「滝藤賢一の映画独り語り座」とは

『プロミスト・ランド』
©飯嶋和一/小学館/FANTASIA

この映画緊張感が漲っている!

冒頭から異様な空気で始まる本作。そこに存在する俳優の言葉を拾っていくと、クマ狩りがどうとかこうとか……。一挙手一投足に目を凝らし、耳を澄ます。観ているこちらの神経すら研ぎ澄まされていく感覚。どうやら、東北の山深い村のマタギたちの話。今年はクマが減っているからと、官庁からクマ狩りの禁止を言い渡されます。今の時代にすごい挑戦的な映画を撮ったなという意味でも、緊張感半端ない。

そのマタギたちの親方を演じるのは小林薫さん。連続テレビ小説『虎に翼』での穂高先生の顔とはまるで違う威厳と厳しさを漂わせ、三浦誠己さん、渋川清彦さんも山で生きる男の匂いを放ち、ただならぬ雰囲気が画面から伝わってくる。

そんななか、親方に真っ向から異を唱えるのが寛一郎くん演じる礼二郎。法を破ってでも春先のクマ狩りへと出ることを決意。この礼二郎に誘われ、渋々付き添うのが、杉田雷麟(らいる)くん演じる信行で、高校を卒業したばかりの先が見えない青年を演じています。

警察に捕まるとわかっているのに、穏やかな日常を捨ててまで、やらねばならぬこと、絶対譲れないものが、私にあるのだろうか……。滝藤はもはや、棘のないサボテンですよ。

クマ狩りの行程のほとんどが奥深い雪山を延々と歩くばかり。少しでも気を抜くと滑落。雪崩の危険もある。命のリスクだらけです。少し前に、ある地域で、行政から提示されるヒグマの狩猟の報酬が命を懸けるには低すぎるという報道を見ましたが、確かに、損得勘定では考えてはいけない領域だと感じました。彼らの表情から、山の厳しさと対峙すること、そしてマタギの誇りと文化の伝承の重要性が伝わってくる。

山で起きている問題は、数年遅れで都会にも及ぶといいます。山の厳しさを知る人が減っていくことは、数年後の私たちの生活に大きな影響を与えるかもしれない。

余談ですが、先日友達に、マタギで家具を作ってほしいと相談したら、“マタギ? ああ、マクラギな”と諭されました。

『プロミスト・ランド』

原作は第40回小説現代新人賞を受賞した飯嶋和一の同名小説。本作の舞台となる山形県庄内地方のマタギ衆に密着したドキュメンタリー『MATAGI-マタギ-』を2023年に発表した飯島将史が、今作で劇映画デビューを飾る。

2024/日本
監督:飯島将史
出演:杉田雷麟、寛一郎ほか
配給:マジックアワー/リトルモア
2024年6月29日よりユーロスペースほか全国順次公開
https://www.promisedland-movie.jp/

滝藤賢一/Kenichi Takitoh
1976年愛知県生まれ。NHKの連続テレビ小説『虎に翼』に主人公の上司役として出演する。2024年6月28日~7月11日の期間限定で映画『knot』、10月11日『若き見知らぬ者たち』が公開される。

■連載「滝藤賢一の映画独り語り座」とは……
役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者の、そして、映画のプロたちの魂が詰まっている! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!

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COMPOSITION=金原由佳

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