今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、BLACKPINK・ROSÉのソロアルバム『rosie』。

時代のアイコンが失恋や心の葛藤を歌い上げる
ブルーノ・マーズとのコラボ曲「APT.」が世界中で社会現象を巻き起こしたROSÉ。BLACKPINKのメインボーカルとしてのグローバルな人気と存在感だけでなく、今や時代のアイコンとして別格の存在になりつつある。本作はそんなROSÉにとって初のスタジオアルバム。
全12曲の作詞・作曲、プロデュースをROSÉ自身が手がけている。一聴して感じるのは、とても繊細な歌心に満ちた作品だということ。ポップスターとしてのROSÉの顔の裏側にある、傷つきやすい心情が込められている。
リードシングルとなった「APT.」は強力な中毒性を持つ一曲だが、この曲の高揚感はアルバムの全体の中では例外的な位置づけ。不安や脆さを綴るピアノバラードの「number one girl」や、有害な恋愛相手との関係を振り返る「toxic till the end」、失恋ソングの「gameboy」など、心の葛藤をさらけだすような曲が並ぶ。
R&Bやシンセ・ポップなど多彩な曲調も含め、テイラー・スウィフトを彷彿とさせるような作風だ。「stay a little longer」や「call it the end」といった後半のパワーバラードで見せる力強く情感に満ちた歌唱も素晴らしい。
シンガー・ソングライターとしての確かな才能を感じる1枚だ。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。音楽やカルチャー分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』などがある。