今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、Charli xcxの『BRAT』。
ハイパーポップを更新するダンス・ミュージックの傑作
UK出身のグローバル・ポップ・アイコンによるダンス・ミュージックの傑作アルバムが相次いでいる。2024年5月にリリースされたデュア・リパの『ラディカル・オプティミズム』もディスコとサイケポップの享楽性をミックスした良作だったが、今年の決定打になりそうなのがチャーリーxcxの通算6枚目となる新作だ。
これまで以上にクラブサウンドに振り切った内容で、ダンス・ビートとレイヴ・シンセが印象的な「Clubclassics」や「Vondutch」など、思わず身体が動きだしてしまうアグレッシブなナンバーが並ぶ。
宇多田ヒカルや藤井風も手がけたA .G .クックが大半の楽曲をプロデュース。ギラギラとした過剰さと性急さを持つその作風は「ハイパーポップ」というジャンル名で語られてきたが、そのテイストをより親しみやすく大衆的に展開したアルバムともいえる。鏡をモチーフにした「360」や、亡き盟友ソフィーに捧げた「So I」など、ポップスターとしての自分自身の思いを綴るリリックも興味深い。
新作は各方面から絶賛を集め、テイラー・スウィフトやビヨンセを抑えて「今年最も批評家から高く評価されたレコード」となっている。さらなる飛躍も間違いないだろう。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。音楽やカルチャー分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』などがある。