ENTERTAINMENT

2024.07.26

東京ドーム公演の売上げは50億!? なぜ、NewJeansは日本の中年男性に人気なのか

“NewJeansおじさん”という造語を生み出すほど、日本でも高い人気を誇る韓国の5人組ガールズグループNewJeans。いま最も勢いのあるK-POPガールズグループはビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。

松田聖子の「青い珊瑚礁」が韓国で話題に

「NewJeansおじさん」という言葉をご存知だろうか。これまでK-POPに関心がなかったが、NewJeansだけを別格視して、ファンになった中年男性のことだ。

そんな造語を生み出すほど、日本でも高い人気を誇る韓国の5人組ガールズグループNewJeans。

2024年6月21日に待望の日本デビューシングル「Supernatural」をリリースし、26・27日には東京ドームで初の単独来日ファンミーティングを開催。デビューから史上最速(1年11ヵ月)で東京ドーム公演を実現した海外アーティストとなった。

平日のイベントにも関わらず、両日のチケットが全席完売していた東京ドーム公演だが、当日ひっそりと見切れ席も追加解放。2日間で9万1200人を動員し、ドームを熱く盛り上げた。

この公演で最も話題になったのは、松田聖子の「青い珊瑚礁」をカバーしたHANNI(ハニ)のソロステージだ。

メルボルンで生まれ育ったベトナム系オーストラリア人のHANNIが、日本の名曲を熱唱。本家へのリスペクトを込めた圧巻のステージには地響きのような大歓声が沸き起こり、その様子を撮影した動画が韓国のSNSやYouTubeにも瞬くまに拡散された。

ちなみに「青い珊瑚礁」は韓国でも知る人ぞ知る曲である。1999年に韓国で公開された岩井俊二の映画『Love Letter』に出てくる歌として、40代以上の中年層にはそれなりに馴染みがある曲なのだ。

HANNIにこの曲を推薦したのも、今年44歳である“NewJeansの母”ことミン・ヒジンADOR代表だったという。ミン代表は韓国紙『朝鮮日報』の取材で「大きな反響は予想していたが、その頃の合いの手まで出てきたことには本当に驚いた」と感想を語っている。

東京ドーム公演の売り上げは50億!?

よく練られた企画が見事にハマり、NewJeansは日本デビューと同時に圧倒的な存在感を見せつけた。

日本の好意的な反応は、売上にも好影響を与えている。所属事務所のADORによると、日本デビューシングル「Supernatural」の売上は102万1730枚(韓国サークルチャート調べ)と集計され、今まで発表されたNewJeansの作品すべてがミリオンセラーを達成。

ADORを擁する親会社・HYBEの2024年6月のアルバム売上は277万枚だったが、そのうち102万枚がNewJeansの「Supernatural」というからその勢いはすさまじい。

NewJeansの日本プロモーションの売上高は公式にはまだ発表されていないが、韓国紙『韓国経済』は2024年7月13日の記事で「業界の関係者たちは東京ドーム公演のチケットとアルバム、グッズなどの売上を単純計算した時、現在まで400〜500億ウォン(約40〜50億円)に及ぶと見積もる」と報じている。

2023年にADORが申告した売上高は前年に比べて5倍以上増えた1103億ウォン(約110億3000万円)。今年はその半分近くを、今回の日本活動で儲けたことになる。

デビューから2年弱のガールズグループがこのような成果を収めるのは極めて異例だが、そもそもNewJeansはデビューからずっとK-POPグループの“理想的なモデルケース”だ。

念願のデビューを果たし、活動を数年行っていても、デビューまでかかった投資費用の返済がなかなか追いつかず、いわゆる「精算(投資費用を除く本当の収入)」がもらえないというアイドルは大勢いる。

ところがNewJeansはスターダムを駆け上がり、デビューからたった2年で「精算」を受けているのだ。

デビュー2年目の2023年には、事務所がNewJeansへの精算金として261億ウォン(約26億1000万円)を策定。5人のメンバーたちが約52億ウォン(約5億2000万円)ずつ精算金を受け取ったと推定されている。

ミン代表によると、NewJeansは2025年にワールドツアーを開催する予定だ。

今回の東京ドーム公演はその前哨戦だったわけだが、韓国でもライブの経験を積むために7つの大学の学園祭をめぐり、出演料は全額寄付するという一挙両得の戦略も展開した。

このNewJeansこそ、K-POPグループの理想的なあり方ではないだろうか。彼女たちがどんな活躍を見せてくれるのか、今後も注目に値する。

■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。

TEXT=李ハナ(ピッチコミュニケーションズ)

PHOTOGRAPH=スポーツコリア/アフロ

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