全世界で大ヒットしたNetflixシリーズ『イカゲーム』のシーズン2がついに2024年12月26日から配信される。歴史的快挙を連発してきたドラマの動向はビジネスパーソンとしてキャッチアップしておきたい。
歴史的快挙を連発させてきたデスゲームが開幕
クリスマスが終わり、世間がお正月ムードに包まれる2024年12月26日、あの“恐ろしい”デスゲームが再び始まる。
世界94ヵ国で“今日の総合TOP10”首位を獲得し、テレビ界最大の祭典でエミー賞など、世界の名だたる賞を受賞し、”社会現象”と言えるほどの流行を巻き起こした、Netflix史上最高のメガヒット韓国ドラマ『イカゲーム』のシーズン2がそれだ。
ファン・ドンヒョク監督の手紙によってシーズン2の制作が公式発表されたのが2022年6月。それから約2年半、ついに配信となる。ちなみに完結編であるシーズン3も、2025年に配信されることが発表されている。
新シーズンの撮影は2023年7月から2024年6月まで、約1年にわたって行われた。ドラマ撮影が1年も続いたら、普通は内容に関する噂がどこからともなく流れるものだろう。
しかし、『イカゲーム』は別だ。周知のとおり、このドラマはどんな刺激的で無慈悲なゲームが登場するのかが最大の見どころで、お楽しみ要素の一つである。
だからこそ、新たにキャストに加わる俳優たちの名前以外の情報漏洩は一切許されない。追加のキャストたちがトーク番組などに出演すると『イカゲーム』について必ず質問されるのだが、彼らは一向に「何も言えない」と返すだけだった。
というのも、撮影に入る前は毎回「秘密保持契約書」にサインさせられ、スマホにも保安用のカメラを付けられるなど、厳しい規制が課されていたからだ。
追加キャストの1人である俳優カン・ハヌルは「僕が出演するということしか言えません。魔女の呪いにかけられたように、口が開かないんですよ」と冗談めかして話していた。
韓国ドラマ史上最高額の制作費
おそらく俳優たちも、ストーリーを詳しくは把握できていないのだろう。
報道によると、俳優たちには自分が出てくるシーンの台本だけが紙ではなくファイル形式で渡されたという。加えて、撮影現場では先輩やスター俳優だからといって優遇されることなく、誰もが長時間の待機を強いられたというから、すごい徹底ぶりだったようだ。
それもそのはず。『イカゲーム』のシーズン2、3は、韓国ドラマ史上最高となる1000億ウォン(約160億円)の制作費が投じられた。しかも、それは主演俳優たちのギャランティを除いた金額だという。
シーズン1の制作費は253億ウォン(約26億8600万円)だったが、今回は劇中に出てくる賞金「456億ウォン」を遥かに上回る制作費で大型プロジェクトに臨んだわけだ。
だからネタバレなんてもってのほか。俳優ヤン・ドングンが「ピリピリした現場だ」と言っていたことから、普通のドラマ現場とは違った雰囲気で撮影が進んだことがうかがえる。
人間に希望はあるのか
シーズン2に出てくるデスゲームの内容やストーリーは見てからのお楽しみとして、他に注目すべき部分は何か。
取材陣を対象にした撮影現場の見学イベントでファン監督が挙げていたのが「社会風刺」だ。彼は次のように話している。
「現在、世界的に紛争が起きていて、韓国内でも世代、地域、ジェンダー間の葛藤など、至る所で対立が生じています。自分とは異なる集団を否定し、白黒をつけ、攻撃し合う。そんな姿が多く見受けられます。こうした現状を風刺する要素として、ゲームの参加者たちがOとXのボタンを押す投票システムをシーズン2の重要なテーマの一つとして取り入れました」
シーズン2でファン監督が投げかけたいのは「我々人間に希望はあるのか」ということ。競争が激しく、格差が広がる社会のなかで人間の倫理や道徳は依然として有効で、持続可能なのか。ドラマが明確な答えを示してくれるわけではないが、一石を投じることは間違いなさそうだ。
年末年始、過酷なデスゲームによって倫理性が試される参加者たちを見ながら、私たちの希望について考えをめぐらせてみるのも悪くないかもしれない。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。