ディズニープラス スターにて2024年8月14日より独占配信された『暴君』が話題だ。極秘に開発されたウイルス「暴君プログラム」を巡り、様々な思惑を持つ人間が壮絶なバトルを繰り広げるノンストップ・サスペンスの見どころを、メインキャストのチャ・スンウォン、キム・ソンホ、キム・ガンウ、チョ・ユンス4人の独占インタビューとともにお届けする。
巨匠が手がける初のドラマシリーズ
映画『THE WITCH/魔女』シリーズや『貴公子』『楽園の夜』『新しき世界』などを手掛けた、韓国ノワールの巨匠パク・フンジョン監督。
独自の世界観で、世界的にも評価されているパク監督がこのほど、ドラマシリーズに初めて挑んだ。2024年8月14日からディズニープラス スターで独占で配信中の『暴君』がそれだ。
主演を務めるのは、『楽園の夜』や『私たちのブルース』のチャ・スンウォン(54歳)をはじめ、『貴公子』のキム・ソンホ(38歳)とキム・ガンウ(46歳)、そして本作が初主演となる女優チョ・ユンス(26歳)。
“新人発掘の匠”として知られているパク監督。『THE WITCH/魔女』のキム・ダミがそうだったように、“新たなヒロイン”として抜擢されたチョ・ユンスが存在感を発揮しつつ、パク監督とは2回目のタッグとなるチャ・スンウォン、キム・ソンホ、キム・ガンウの3人がどっしりとした安定感をもたらしている。
その4人の主演俳優たちが先日、オンラインでの独占インタビューに応じてくれた。
「ビジネスパーソン向けのライフスタイルメディア」とゲーテを紹介した後、『暴君』の見どころについて尋ねると、キム・ソンホの第一声は意外にも「この作品、とてもセクシーなんです」だった。
「この表現で大丈夫なのかわかりませんが、ゲーテの読者ならちゃんと伝わる気がします。この作品は、トーン&マナーも、俳優たちの演技も、ビジュアルも、すべてが非常にセクシーで、洗練されています。一瞬たりとも目が離せません。観たらスカッとした気分になれるので、ぜひその気持ちを味わっていただきたいです」
極秘ウイルスを巡るノンストップサスペンス
本作は映画『THE WITCH/魔女』に出てきた登場人物たちの反対勢力にフォーカスを当てている。つまり、同じ世界観を共有しているので、『THE WITCH/魔女』のスピンオフのような感覚で楽しめる物語だ。
愛する祖国が外国勢力に抑圧されるのを長年見てきた不正な科学者グループ。
彼らは韓国政府内で息を潜めていたが、自国を世界の強国と同じ土俵に立たせるべく、「暴君プログラム」と呼ばれる超人遺伝子ウイルスを開発する。
しかしプロジェクトが完成する前に、アメリカの諜報員グループによって計画が暴かれてしまう。
全サンプルの引き渡しを要求するアメリカ側に、全力で抵抗する科学者グループのリーダー・チェ局長(キム・ソンホ)。そこで「暴君プログラム」の最後のサンプルを巡る、韓国とアメリカ政府の壮絶なバトルが繰り広げられる。
各登場人物にはそれぞれに成し遂げなければならない目標があり、迷いはない。目的のためには手段を選ばない彼らの“大暴れ”が、気持ちいいほどだ。
最もド派手に暴れるヒロインでのあるジャギョン役のチョ・ユンスは、お気に入りのシーンについて次のように語った。
「ジャギョンが手術を受けた直後に、押しかけた男たちと戦うシーンがあります。そのシーンを撮りながら、自信に満ち溢れたジャギョンが本当にカッコいいなと思いましたし、彼女のことが大好きになりました。ビジュアル的にもジャギョンを最も上手く表現できたと思います」
チョ・ユンスは終始軽やかなアクションを披露するのだが、言及したシーンでは肌の露出もあったため、頑張って減量したという。
彼女の隣に座ったチャ・スンウォンは「すごく努力していて、偉いなと思いましたね」とフォローしたのかと思いきや、「要するに、ダイエットしてカッコよく映ったって話なんですよね」と、ツッコミ役に回った。
そんな先輩のツッコミに爆笑したチョ・ユンスが、「そのシーンの撮影が終わって、ようやく美味しいご飯が食べられて幸せでした」と秘話を告白する一幕もあった。
キャストたちの仲の良さが感じられる和気藹々としたインタビューの雰囲気とは違って、劇中は最初から最後まで殺伐としている。
暴力で欲しいものを手に入れようとする登場人物たちが、冷静さや余裕を見せながらそれぞれの思惑と緊張感高まる追走劇を繰り広げていく。
また、現実離れした世界観でありながら、妙に現実味を帯びていることも見逃せない。
例えば、「公務員だから退職金が少ない」という設定や、「身のほどをわきまえろ。韓国は車や半導体を作ってればいいんだよ」というセリフは、韓国社会に対するパク監督なりの自嘲的ユーモアなのだろう。
劇中で韓国をディスるのは、キム・ガンウ扮する韓国系アメリカ人のポールだ。
「アメリカに忠誠を尽くす彼は、とても知的に見えながらも、突拍子もない、イカれたキャラでした。ありきたりな悪役にならないように、話し方や行動にも細かくこだわりました」と役作りについてキム・ガンウは語ってくれた。
なるほど、画面からは役者たちの工夫も伝わってくる。
そのせいだろうか。『THE WITCH/魔女』の世界観をさらに拡大させた『暴君』は、エンディングを見終わると、その続きが気になって仕方がない。
制作発表会では「いつか『THE WITCH/魔女』と『暴君』の登場人物たちが衝突する可能性もある」という話も出ていたが、この独自的なユニバースを構築したパク監督について、チャ・スンウォンは次のように語った。
「僕はパク監督とすごく親しいけれど、だからといって気楽な人ではありません。監督としての主観もハッキリしていて、自分がやるべきこと、プランがとても明確な監督なので、俳優によっては苦手だったり、気難しいと感じるかもしれないですね。
ただ、キャラクターに対する究極の目標が2人とも一致するので、僕たちはすごくウマが合う。途中で意見が合わないことがあっても、最終的な目標を成し遂げるために話し合います。放任主義の監督ではありませんが、時折スパークを起こしてくれる。そういう監督なので好きです」
巧みな演出と巧みな演技で魅せた、手に汗握るノンストップ・サスペンス。ぜひチェックしてみてほしい。
■著者・李ハナ
韓国・釜山(プサン)で生まれ育ち、独学で日本語を勉強し現在に至る。『スポーツソウル日本版』の芸能班デスクなどを務め、2015年から日本語原稿で韓国エンタメの最新トレンドと底力を多数紹介。著書に『韓国ドラマで楽しくおぼえる! 役立つ韓国語読本』(共著作・双葉社)。