今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、Tempalay(テンパレイ)の『((ika))』。
異世界への旅に誘う一大音楽絵巻
鬼才バンドの本領発揮となる新作が届いた。2024年で活動10周年を迎えるTempalayは、既存のジャンルの枠組みにとらわれず独自のサイケデリック・ミュージックを追求する3人組。
「あびばのんのん」や「今世紀最大の夢」など、ここ最近はドラマやアニメ主題歌として書き下ろした人懐っこいメロディの楽曲も評判を呼んできたが、3年ぶり5作目のアルバムは、それらも収録しつつ全19曲の壮大な音楽絵巻に仕上げた意欲作だ。
アルバムはコラージュ的な「(((shiki-soku-ze-kuu)))」で幕を開ける。逆回転サウンドのラスト「)))kuu-soku-ze-shiki(((」も合わせた曲名の意味は「色即是空」と「空即是色」だろう。先行配信されたダンスナンバー「NEHAN」は仏教用語の「涅槃(ねはん)」をモチーフに制作された楽曲ということだ。
他にも「預言者」や「憑依さん」などスピリチュアルで哲学的な小原綾斗(Vo/G)の言語センスを活かした楽曲が並ぶ。うねるビート、ギターとシンセが絡み合い次々に風景が切り替わるような曲展開は心地よくも先鋭的。聴いているうちに異世界の扉が開くような不思議な体験だ。
2024年10月には初の武道館公演も決定。唯一無二のまま未踏の地に突き進んでいる。
Tomonori Shiba
音楽ジャーナリスト。音楽やカルチャー分野を中心に幅広く記事執筆を手がける。著書に『ヒットの崩壊』『平成のヒット曲』などがある。