アートやヒップホップに造形が深く、一方で経営者へのインタビューなど幅広い活動をするライター川岸徹は人生の「楽しみ上手」。海外ドラマや映画専任のライターではないからこそ、本能に従順に、真に心に響く、人生を潤す海外ドラマをセレクト! ビジネスパーソンのお手本にもなる!? アニメ2作品をお届けする。
『AKIRA』『新世紀エヴァンゲリオン』『美少女戦士セーラームーン』が世界で愛され、昇華する
言うまでもなく、日本のアニメーションは世界に誇る素晴らしいコンテンツです。海外のクリエーターに与えた影響は計り知れません。以前、マーベル・コミックスの編集長C.B.セブルスキー氏にインタビューしたときに、「最も影響を受けたアニメ作品は『AKIRA』と『新世紀エヴァンゲリオン』」と話していたし、X-MENのシニアエディターは『美少女戦士セーラームーン』の大ファンで、週1回、セーラームーンに関する番組をポッドキャストで配信しているそうです。
彼らがすごいなと感じるのは、学びの精神と大胆な行動力。日本にある美術大学のアニメーション学科は外国人留学生に大人気です。米国の有名アニメーションスタジオも日本の技術を学ぼうと日本人クリエーターを積極的に招き入れています。
で、その成果は確実に表れています。高水準のアニメ映画が次々に生み出され、なかでも2018年のアカデミー賞長編アニメ映画賞に輝いた『スパイダーマン:スパイダーバース』は金字塔のひとつ。「現代アニメの新たな基準」と評価され、今もエンタメ界最大の評価サイトIMDbで8.4、Rotten Tomatoesでは93%のオーディエンススコアを得ています(どちらもアニメ映画としては超ハイスコアです)。
『イカゲーム』から1位の座を奪取した『アーケイン』
今回は海外アニメの急成長ぶりを目の当たりにできる2つの作品を紹介します。
1つめの作品はNetflix『アーケイン』。昨年11月7日に全世界で公開され、飛ぶ鳥を落とす勢いで視聴者を獲得。1か月半にわたって首位をキープしていた韓国ドラマ『イカゲーム』から1位の座を奪取したことも話題になりました。
『アーケイン』は世界中に1億人以上のプレイヤーをもつPCオンラインゲーム「リーグ・オブ・レジェンド」をベースにしたオリジナルアニメドラマ。ゲームの人気キャラクターが、ゲームに登場する前にどんな生き方をしてきたのかにスポットを当て、丁寧に物語が紡がれています。
シーズン1は、近代化した豊かな都市「ピルトーヴァー」と、薄暗く危険な地下都市「ゾウン」が舞台。この地下都市で、「ヴァイ」と「パウダー」の姉妹は手を取り合って力強く生きています。でも、ある事件が起こり、2人は離ればなれに。その姉妹が再会を果たした時、何が起きるのか? ざっくり言うと、こんなあらすじです。
詳細は明かせませんが、ストーリーは文句なく素晴らしい。シーズン1最終話まで中だるみは一切なく、圧倒的な疾走感で物語は進んでいきます。
『アーケイン』の世界観をさらに熱くしてくれているのが、ハイクオリティなアニメーション。制作を担当したのはフランスの Fortiche Production という制作会社で、2Dと3Dが融合したようなグラフィックが独特。中世の絵画を思わせる重厚な質感とポップでいて荒々しいバスキアのような表現が合わさり、唯一無二の世界を作り上げています。
1話完結型のオムニバス作品『ラブ、デス&ロボット』
もう一つ、見てほしい海外アニメ作品が『ラブ、デス&ロボット』。1話完結型のオムニバス作品で、映画監督のティム・ミラーとデヴィッド・フィンチャーが製作総指揮を務めています。ストーリーはSF、ファンタジー、ホラー、コメディなど、複数のジャンルが融合したもの。現代社会を風刺したブラックジョーク的なエピソードが多く、世界のあり方についてあれこれ考えさせられます。
この作品もまた、先鋭的なアニメーションが大きな魅力です。エピソードごとに技法が異なり、その多彩な仕上がりに驚かされます。実写と見紛うようなリアルな3Dがあったり、クレイアニメを思わせるかわいらしい表現があったり。背景の描き方などディテールも細かく、「今のアニメはここまですごいことになっているのか」と、感嘆の声を上げてしまいました。
海外アニメの進化には目を見張るものがあります。日本も負けずに、海外に衝撃を与える作品をどんどん作り上げていってほしいですね。