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2021.05.25

吉永小百合が医師役に初挑戦! 映画『いのちの停車場』成島監督インタビュー

吉永小百合が医師役に初挑戦した映画『いのちの停車場』が劇場で公開中だ。人それぞれに違う命の終え方に真摯に向き合う本作で、メガホンを取ったのは医療映画の傑作『孤高のメス』の成島出(なるしま・いずる)監督。本作を「遺作と思って撮った」理由、そして想いを語ってくれた。


俳優・吉永小百合が医師役に初挑戦

吉永さんが今まで一度も医師役をやったことがないということから、東映グループ会長の岡田裕介会長と3人で、10年ほど前から一緒に原作を探し始めました。先に『ふしぎな岬の物語』で吉永さんとご一緒したり、2017年に僕が癌を発症したりといろいろありましたが、ようやく南杏子さんの原作で『いのちの停車場』を撮ることができました。

今回吉永さんが演じる咲和子(さわこ)は、あるきっかけから東京の救命救急センターを辞めて金沢に帰郷し、「まほろば診療所」の在宅医として再出発を切ります。吉永さんが演じる役柄は年代的に、病気になったりアルツハイマーになったりと、どうしても死に向かっていきます。しかし咲和子は新たな職場で新たな人間関係をつくり、この年代なのにさらに成長していく。そこが、俳優として成長するために、弛まずに努力を重ね続ける吉永さんにぴったりだなと思いました。吉永さんが演じる咲和子には、映画を観てくださる幅広い世代の方が背中を押されるのではないかなと思います。

©2021「いのちの停車場」製作委員会

この映画では、病院ではなく自宅で人生を終える患者たちが、咲和子の目線で描かれます。死を描く作品には、対比となる未来への希望や生命力を担う役柄として、若いキャラクターが登場します。本作でいうところの、咲和子を慕って東京からやってきた医大を卒業した青年・野呂(松坂桃李)と、「まほろば診療所」で働く訪問看護師の麻世(広瀬すず)です。非常にオーソドックスな描き方ではありますが、役者の2人が非常に素直で、生命力に溢れていて、人間的に素晴らしい。そこが、よい方向で出ていると思います。桃李君なんて本当に根っからのいいヤツで、あれでトップ俳優になれたことがちょっと信じられないです。トップになる俳優は、たいてい一癖二癖ありますからね(笑)。

©2021「いのちの停車場」製作委員会

人それぞれに違う、命のしまい方に真摯に向き合う本作

この映画の完成直前に、ずっとお世話になってきた岡田会長が突然お亡くなりになりました。悲しみを乗り越える以前に、まだ実感がなくて、今でもそこのドアから会長が、「おう」と入ってきそうな気がします。緊急事態宣言が解除された最初の撮影現場だったので、誰も感染してはいけないという緊迫感の中で、質のいい映画や娯楽を我々は作らなければいけないという使命感がありました。個人的には、癌を克服してまたメガホンを取れる喜びもあって、複雑でしたね。こうして完成した作品がなんとか無事に公開して、ヒットして初めて、会長の不在を受け入れられる気がしています。

僕は一回死んだも同然なので、当然のように人生観は変わりました。すべてにおいて、「あれもこれも」と欲張らなくなったかもしれません。映画作りにおいても、最低限これとこれをきちんと押さえればいいという、シンプルな考え方になっているのかな。今回はコロナ禍での撮影だったので、段取り(動き方)を決めたら、テストを省略して最初からカメラを回しました。僕はテストを重ねて芝居をがっちり固めてからカメラを回すタイプなのですが、今回は感染対策的にそれが不可能だったので、明らかなNGではない限り、本番では一発OKを出しました。普段は「もう一回」を重ねるタイプなのですが、吉永さんの芝居が段取りの時点で完璧なので、共演者全員がすべてのシーンでトラック1(本番の一回目)から全力疾走でした。僕自身、一本一本を遺作と思って撮っていますし、『いのちの停車場』もそう。全力を出し切ったので非常にスッキリしています。

ラストシーンは、原作とは表現方法をだいぶ変えましたが、意味としては同じだと思っています。咲和子があの後にどんな行動に出たのかは、ご覧になった方によって意見が違うと思うので、ぜひご家族や大事な人と一緒に劇場でご覧になって、語り合ってもらえたら嬉しいです。この映画では多くの人が亡くなりますが、そこに至るまでどう生きたのか、人とどう関わったのかがテーマなので、この映画が今を生きるみなさんに寄り添う作品になることを願っています。

成島 出(なるしま いずる)
映画監督。2012年の『八日目の蟬』が第35回日本アカデミー賞で10部門を受賞。その他の代表作に、『孤高のメス』(2010年)、『ふしぎな岬の物語』(2015年)、 『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』 (2020年)などがある。

『いのちの停車場』

©2021「いのちの停車場」製作委員会

現役医師でもある作家、南杏子の最新作を映画化。咲和子(吉永)は東京の救命救急センター を退職し、故郷で在宅医療専門の医師として再出発する。人々の命の終わりに寄り添う一方で、 実父が病に倒れ……。
監督:成島 出
脚本:平松恵美子
出演:吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、 西田敏行、田中 泯、石田ゆり子、南野陽子、 柳葉敏郎、小池栄子、みなみらんぼう、 泉谷しげる ほか
原作:南 杏子『いのちの停車場』(幻冬舎文庫)

TEXT=須永貴子

PHOTOGRAPH=滝川一真

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