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ENTERTAINMENT

2018.05.30

『レディ・バード』滝藤賢一の映画独り語り座40

役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!

『レディ・バード』

現実より夢のウェイトが、ずっと大きかった時代

この映画を観て、自分の激しすぎる反抗期を思いだしました。私は典型的な内弁慶タイプ、家では手のつけられない悪たれ小僧でした。ついに小学校低学年の時に、母親に家出されてしまったことも(すぐにちゃんと帰ってきましたが)。

この映画のお母様、言うことすべて正しい。でも正しすぎて息が詰まる。娘に対してひと言で済めばいいのに、二言三言多い。夫も長男も失業中で、ひとりで家計を背負っているから、つい口をついて出てしまう。「うちは貧乏なんだから」。同じ親としては彼女がそう言いたくなる気持ちは痛いほどわかります。

しかし、これを言われるほうは面白くない。主人公の女子高校生"レディ・バード"にとっては「だから何?それ私と関係ある?」って感じでしょう。

母親は彼女に、地元の大学に行ってほしいけど、本人は東海岸の大学に行くことしか考えていません。僕も高校を卒業後、当然のように親の金で上京し、東京の専門学校に入りました。でも1年でさっさと辞めてしまった……。映画のなかで彼女の経験していくことが自分の青春時代と重なりすぎて、何だか情けないやら申し訳ないやら。改めて、自分の人生を振り返ると、どうしようもないクズ野郎だったことに気づかされました……。

でも、青春真っただ中って、現実より夢のウェイトの方がずっと大きいです。彼女もそう。実行に移るのも展開も早い。恋の始まりも早いけれど、終わりも一瞬で訪れる。テンポよすぎて、気持ちが追いつかない箇所もありましたが、レディ・バード演じるシアーシャ・ローナンの演技の根底には「お母さんに褒めてもらいたい」という寂しい気持ちが見え隠れしていて切なく胸がしめつけられました。ボーイフレンド役の『君の名前で僕を呼んで』のティモシー・シャラメ君も、超セクシーでインパクト大。

レディ・バードを見守る寡黙な父親も素敵。僕の父も寡黙な人でしたが、冒頭の母親の家出の時に「一緒に探しに行こう」って手をつないで探しに行った。そんな自分の子供時代も思いだす作品でございました。

『レディ・バード』

©2017 InterActiveCorp Films, LLC. /Merie Wallace, courtesy of A24

『レディ・バード』
女優のグレタ・ガーウィグが自伝的要素を取り入れて脚本、監督を手掛けた青春ドラマ。3 月のアカデミー賞では監督賞、主演女優賞などでノミネートされた。カリフォルニアの郊外、サクラメントで暮らす女子高生〝レディ・バード〞の青春をシアーシャ・ローナンの魅力で生き生きと描く。
2017/アメリカ
監督:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン、ローリー・メトカーフ、ティモシー・シャラメ ほか
配給:東宝東和
6月1日より全国公開

COMPOSITION=金原由佳

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