十勝・帯広の国立公園内にある糠平湖(ぬかびらこ)。厳冬期には湖面が全面凍結する、北海道でも稀有な場所だ。この特別な氷上コースに、「大人の本気のクルマ遊び」を掲げて活動するGOETHE読者を中心としたクルマコミュニティ「GGRC(ゲーテ・ジェントルマンズ・レーサー・クラブ)」のメンバー4名が集結。GRヤリスを駆り、マイナス20度のタイムトライアルに挑んだ。

凍結した湖に現れるアイスサーキット
北海道・十勝に位置する糠平湖は、大雪山国立公園の南東部に広がるダム湖。とかち帯広空港からクルマで約1時間半の地にある。冬になると湖面は全面凍結し、一面に広大な氷のフィールドが出現。この凍った湖の上でクルマを走らせる──。それは、日本でも限られた場所でしか成立しない特別な体験。しかも気象条件によって、開催できるのは一年のうちわずか数日だけという。
そんな環境を活かして開催されたのが「GGRC WHITE ATTACK 2026 in NUKABIRA」。GOETHEが主催し、TOYOTA GAZOO Racingのサポートによって実施された究極のドライビングエクスペリエンスだ。

北海道ホテルでの宿泊、バス貸切りによる送迎、レース保険、そして錚々たるドライビングコーチによるレッスン。さらにはGRガレージ音更でのディーラー見学。そんな1泊2日の特別プログラムで、参加費は1名60万円。使用車両はフルピンのスパイクタイヤを装着したGRヤリス。まさに“大人のための氷上ドライビング体験”だ。
その舞台に集ったのが、クルマを愛するGGRCメンバー4名。GGRCではこれまでGRヤリスのダートラ挑戦やWECのスペシャルVIP観戦ツアーなど、モータースポーツを軸にした体験型イベントを行ってきた。
普段はそれぞれ異なるフィールドで活躍するジェントルマンたちだが、この氷上では同じドライバーとして並び立つ。チームの仲間でもあり、同時にこの競技ではタイムを競うライバルでもある。
氷上で試されるドライビング
初日の練習ではGRヤリスのMT仕様とDAT(AT仕様)、さらにはGRMNヤリスが用意され、ダートトライアル競技で優勝経験を持つコーチたちがマンツーマンで指導。参加者たちは走行を重ねながら、氷上ドライビング特有の感覚を少しずつ摑んでいった。

氷上では、ロードトラックの常識は通用しない。アクセル、ブレーキ、ステアリング──すべての操作に繊細さが求められる。わずかなミスでもクルマは横を向き、スピンやコースアウトへとつながる。
そこでドライバーの腕を後押しするのが、GRヤリスだ。WRC(世界ラリー選手権)の知見を取り入れて開発されたこのモデルは、コンパクトなボディに優れた四輪駆動システムを備えるスポーツカー。滑りやすい氷上でも、アクセルワークと電子制御によって姿勢を整え、確実にトラクションを路面へ伝えていく。
マイナス20℃の氷上タイムアタック
最終日、いよいよタイムアタック本番。地元勢を中心に約100台がエントリーし、10クラスにわかれて2本のアタックで順位を争う。氷上ではコンディションが刻一刻と変化し、同じコースでも路面状況は走るたびに変わる。タイムを狙うには瞬時の判断が求められる。

最速タイムはライバルが叩き出した1分48秒104。全長2.48kmの氷上コースを平均約82km/hで駆け抜けた計算になる。直線では140km/hに迫る速度域からのブレーキングも求められる過酷な条件だが、GGRCのドライバーたちは果敢に攻めた。

誰もが躊躇なくアクセルを踏み込み、時には雪壁へ突っ込んで競技が中断する場面もあった。だが、誰ひとり怯まない。悔しさを滲ませながらマシンを降りると、すぐに次のアタックへと頭を切り替える。その姿が、この場の熱量を物語っていた。
大会終盤、メンバーの一台がスピンアウトし、そのまま雪壁へヒット。ラジエーター周辺を損傷し、オイル漏れとともに加速不良が発生するトラブルに見舞われた。
しかし、TOYOTA GAZOO Racingの凄腕技能養成部のメカニックが、パドックに戻るや否や即座に対応。別のGRヤリスからパーツを移植するなど、次の走行までわずか30分足らずでマシンを復帰させた。まるでラリーサービスさながらの光景が広がる。その姿に、参加者のひとりはこう語った。
「ぎりぎりまであきらめない姿勢。最後までレースで走らせようとしてくれる、その気持ちと対応が本当に嬉しかったですね」

「難しいけれど、面白い」大人のクルマ遊び
「GRヤリスは、思いのままに操れる」「扱いやすさと、コントロール性の高さがダイレクトに伝わってくる」──参加者からはこんな声が上がる。氷上ではスピンやコースアウトも起きる。しかし、それこそがこの舞台の醍醐味でもある。WHITE ATTACKは、GGRCが掲げる“大人の本気のクルマ遊び”を体現するイベントのひとつだ。
氷上という非日常の舞台で時間を共有することで、参加者同士の距離も自然と縮まっていく。単に走るだけではない。スポーツマンシップに加え、この土地に息づく歴史や文化に触れながら、新しい発見にも出会える時間でもある。

GGRCが目指すのは、究極のラグジュアリー。仲間とともに挑み、あきらめず、挑戦を楽しみ続ける──その時間こそが、大人に許された最高の贅沢なのだ。
同イベントは2027年も開催予定。極寒の糠平湖に現れる氷上サーキットは、次のジェントルマンドライバーを待っている。

トヨタがWRC参戦で培った知見を投入し開発したコンパクトスポーツカー。1.6ℓ直列3気筒ターボは最高出力304PSを発揮。GR-FOUR四輪駆動に加え、MTはもちろん、新開発のDAT(ダイレクト・オートマチック・トランスミッション)設定する。車両価格は約533万円〜。コンパクトなボディで、舗装路からダート、雪上までラリー直系の走りを味わえる。







