BYDが飛ぶ鳥を落とす勢いで成長している。BEVやPHEVといった電動車両を開発する中国のメーカーは、2024年に対前年比プラス41%の427万台を世界で販売し、ホンダと日産を抜き去った。日本での最新モデル電動SUV「シーライオン7」は、82.56kWhという大容量バッテリーに加えて、低温環境でも効率よい充電を可能にする「充電予熱機能」も採用した。

ゲームチェンジャーが現れた
BYD「シーライオン7」に乗りこんで、スマホをワイヤレス充電器の上に置く。充電器自体は、珍しくないありふれた装備だ。ところが充電が始まるのと同時に、スーッと風が抜ける音が聞こえてきた。確認すると、スマホのバッテリーを冷やすために、通風口から冷風が出ている。さすがは高性能電池で名を馳せた企業だけに、配慮が行き届いている──。
何を細かいことを、と思われるかもしれない。けれども、一事が万事とも、神は細部に宿るともいう。シーライオン7は、実にきめ細やかに作りこまれた電動SUVだ。エクステリアは、流行りのクーペ的なSUV。手触りのよいナッパレザーで仕立てたシートには美しいステッチが施され、日本や欧米のプレミアムブランドと遜色のない仕上がりになっている。助手席の同乗者が、「ハーイ、BYD、エアコンの温度を1度下げて」と話しかけると、状況を察知して、助手席側の温度だけを1度下げたのには驚いた。
走りだしてみると、スムーズな加速フィールやしなやかな乗り心地など、パフォーマンスには文句のつけようがない。試乗車がAWD(4輪駆動)だったこともあって安定感は抜群で、フルスロットルを与えると、レールの上を走っているような安定感を保ちながら、まるでブラックホールに吸いこまれるかのような圧巻の加速を見せた。
前を走るクルマに追従するクルーズコントロールや、車線維持をサポートする機能など、運転支援機能も現時点における最先端。BYDは2024年に販売台数を伸ばし、前年の10位から世界第6位の自動車会社に躍進したけれど、端々から右肩上がりの勢いが伝わってくる。
好みやディーラー網の問題もあるから、軽々しく「買ってみては?」とは言えない。だがハンドルやシートから、自動車産業の構図が猛スピードで変化していることが伝わる。試乗というより、今の世界のうねりを肌で感じるような体験だった。
BYD シーライオン7 AWD

ボディサイズ:全長4830×全幅1925×全高1620mm
ホイールベース:2930mm
モーター最高出力:前217ps、後312ps
充電走行距離:540km(RWDは590km)
0-100km/h加速:4.5秒
価格:¥5,720,000
問い合わせ
BYDジャパン TEL:0120-807-551