CAR

2024.09.24

2代目「メルセデスAMG GTクーペ」は“ラグスポ”へと進化【試乗記】

メルセデス AMG の完全独自開発によるスポーツカー「メルセデスAMG GTクーペ」が2代目へとフルモデルチェンジ。スタイリングはキープコンセプトながら、駆動方式が初代の後輪駆動(FR)から4輪駆動になるなどキャラクターが大きく変化。試乗してその進化の中身を確かめてみた。

見た目はキープコンセプト、中身は大幅に刷新

近年、時計の世界ではラグジュアリースポーツウォッチ、通称“ラグスポ”が隆盛を極めている。その言葉の解釈には諸説あるようだが、いずれにせよ「ラグジュアリー」と「スポーツ」というある意味では対照的なエレメントを併せ持っているということには違いないだろう。

クルマの世界でも同様の流れが起きている。スポーツカーがより豪華で快適になったり、ラグジュアリーカーがスポーツカーのようなハンドリングや加速性能を備えたり、双方向からのアプローチによって、“ラグスポ”が群雄割拠している。

新型でもロングノーズ+ショートデッキのプロポーションはキープコンセプト。現在のところ、日本に導入されているのは「メルセデス AMG GT 63 4MATIC+ クーペ」のみ。

現在「メルセデス AMG」は、メルセデス・ベンツのハイパフォーマンスカーのサブブランドとして使われているが、実際にはメルセデスAMG GmbHという子会社だ。ルーツは1967年にはじまったレーシングエンジンの設計、開発、テストを行う独立系のエンジニアリング会社「AMG」であり、2005 年に、ダイムラークライスラー(当時)がAMGの株式の100% を取得し現在に至る。

エンジンメーカーをルーツとするだけにいまもAMGでは、まるで職人が機械式ムーブメントを組み上げていくように、1 人の人間が責任をもって1 つのエンジンを手作業で組み立てる「One Man, One Engine」という理念が受け継がれている。AMG謹製のエンジンにはその証として、エンジンカバーに担当技術者が手書きで署名したバッジが付けられている。

従来のメルセデスAMGの仕事は、メルセデス・ベンツが開発した、例えばCクラスやEクラスをベースにお手製の高性能エンジンを搭載し、それにあわせてシャシーをチューニングするという、おおまかにいうとそういうものだった。

しかし2009年、メルセデスAMGは大きな転機を迎えた。初めて自社で独自開発したスーパースポーツカー、SLS AMGを発表。2014年にはそれを継ぐ、初代AMG GTクーペをリリースした。メルセデス・ベンツをベースとするのではなく、イチからメルセデスAMGつくりあげたという意味で完全独自開発という言葉が使われている。初代は約9年におよぶロングセラーモデルとなり、2024年に満を持して2代目の「AMG GTクーペ」が発表された。

ロングノーズ+ショートデッキのプロポーションはキープコンセプト。パナメリカーナグリルと呼ばれる縦桟の走るフロントグリルは初代より低い位置に配置されている。リアまわりでは、3つの立体的なグラフィックが特徴的な LEDリアコンビネーションランプを左右に配置。それを水平に1本の線でつなぐことでワイド&ローを強調している。

また電動格納式のリトラクタブルリアスポイラーを標準装備。80km/h以下では格納されており、それ以降は車速や重力加速度によって4段階で角度を自動的に調節。ダウンフォースを最大化するなど空力を最適化してくれる。

ボディ骨格は、メルセデス AMGが独自に新開発したアーキテクチャーを採用する。実は2023年に登場した新型SLもメルセデスAMGによって開発されたモデルであり、基本的にはSLと共通のものだ。ボディサイズは全長を180mm拡大、ホイールベースは70mm延伸。

後輪駆動だったものが4マチック(4WD)になり、それもあって車両重量は1940kgに増加と、スペックだけをみてもキャラクターが変化したことがわかる。ついでにいえば、初代は2シーターだったが、新型では実用性アップのため2+2の4シーター仕様もオプションで選択可能になった。

インテリアはシートやダッシュボード、ドアパネルもすべてアクセントステッチ付きのナッパレザー仕上げで、まさにラグジュアリーカーのよう。ダッシュボードは航空機に着想を得たもので左右対称のウイング形状にデザインされている。

中央には縦型11.9インチセンターディスプレイを配置している。「ハイ、メルセデス」でおなじみの音声操作機能やADAS(先進運転支援システム)など、スポーツカーであっても、安全&快適装備はぬかりなくメルセデスクオリティである。

より速くて快適なグランドツーリングカーへ

AMG謹製4リッターV8ツインターボエンジンは、最高出力585PS、最大トルク800Nmを発揮。9速トランスミッションを組み合わせる。4WDシステムは、前後トルク配分の連続可変が可能な「AMG  4マチック+」で、走行状況やドライバーの操作に応じて前後トルク配分を50:50〜0:100 の間で連続可変させるもの。

電子制御によって状況に応じた理想的なトルク配分が行われるため、あらゆる路面でトラクションを最大化することが可能。ドリフトモードでは前後トルク配分を 0:100に固定することが可能でFRでのドリフト体験を味わうこともできる。

サスペンションは4輪すべてに5リンク式を採用することで、走行安定性を高めるだけでなく、乗り心地など快適性も大きく改善している。電子制御ダンピングシステムや連続可変式電子制御スタビライザー、リアアクスルステアなどハイテク装備満載で、ドライバーは抜群の安定感をもってハイスピードでコーナーをクリアすることができる。

街をゆったりと流していると、豪華なインテリアもあってまるでラグジュアリィカーに乗っているような雰囲気が味わえる。一方、高速道路などでアクセルペダルを強く踏み込めば、AMG製V8エンジンが目覚める。エンジン回転数が上昇するにつれエキゾーストノートが高まり、ステアリングを通じてその力感が伝わってくるようだ。

スピードだけでいえば、いまや電気自動車でも速いものはたくさんあるが、このエンジンがもつ質感のようなものは再現できていない。それはクオーツの、そしてアップルウォッチの登場によっても、機械式時計が淘汰されていないことと似ているのかもしれない。

新型AMG GTクーペは、先代がもっていたスポーツカーとしてのドライビングファンを維持しながらも、デイリーユースからロングドライブまでオールマイティに使えるグランドツーリングカーとしての性能を得た。まさに“ラグスポ”なのだ。

TEXT=藤野太一

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