自動車ジャーナリスト・サトータケシが、クルマ好きなら知っておくべき自動車トレンドの最前線を追いかける連載「クルマの最旬学」。この夏、車中泊の旅を考えている人に、国産ワンボックスや軽自動車とはひと味違うキャンピングカーを提案したい。【過去の連載記事】
個性を発揮したいなら、ヨーロッパ製がイチオシ
前回(1億円超えでも買いたい! 欧州最高峰のキャンパー「フォルクナー・モービル」)
は夢のキャンパーを紹介したので、今回はより身近なモデルを取り上げたい。日本でキャンパーというと、トヨタ・ハイエースに代表されるワンボックスや、ハイトワゴンと呼ばれる背の高い軽自動車が人気だ。ワンボックスにしろハイトワゴンにしろ、長い年月をかけて磨かれてきた車種なので、機能や使い勝手は文句なし。検索すれば車中泊仕様にカスタマイズされたモデルがいくつも出てくるはずだ。
国産ワンボックスも軽ハイトワゴンも、車中泊仕様にカスタマイズされたモデルはどれも完成度が高いけれど、ここではオルタナティブとして、ヨーロッパ製の2台を紹介する。まず1台は、プジョー・リフターだ。
好きな場所で、ごろんと横になる
プジョー・リフターを推す理由のひとつが、まずデザインだ。室内空間を広くとることができるスクエアなボディ形状でありながら、ディティールにSUVのテイストを与えることで冒険心をかき立てるたたずまいになっている。
しかも、SUVのテイストはカッコだけじゃない。このクルマには、アドバンスドグリップコントロールというデバイスが備わっているのだ。このデバイスは、ダイヤルの切り替えで「雪」や「泥」、「砂」などのモードを選ぶことが可能で、路面コンディションに応じた最適なグリップ力を発揮することができる。
ディーゼルターボエンジンの力強さと優れた燃費、そして四角い外観からは想像できない丸い乗り心地は、はるか彼方を目指すのにうってつけ。ファミリーカーはファミリーカーだけれど、アドヴェンチャー・ファミリーカーなのだ。
で、このプジョー・リフターを車中泊仕様にカスタマイズするうえで心強いのが、純正オプションのキットが用意されていることだ。この「agré (アグレ)・ベッドキット」は、さまざまな車種のキャンパーへのカスタマイズを手がけてきた老舗、RVランドコンセプトが開発に参画しており、ユーザーが快適に使えるように機能がよく練られている。
どんなふうに使い勝手がいいかというと、まず純正オプションらしく無加工で装着できる。車中泊仕様にするのも簡単で、慣れれば5分もかからない。しかもマットを5分割して荷室に格納することができるから、走行時は5名が普通に座ることができる。
こうして車中泊が可能になったら、次は機能拡張で、たとえばプジョーが純正オプションとして用意しているカーサイドタープを張れば、ぐっと雰囲気が盛り上がってくる。
実はこのカーサイドタープは2020年の暮れに発表されたが、大好評であっという間に完売してしまったという。今回発表された新しいカーサイドタープには、従来型への顧客からのフィードバックを踏まえて、改良が加えられている。具体的には室内空間が広くなっているほか、設営した後にクルマを移動しても独立して使えるようになっている。
おもしろいのは、このカーサイドタープの汎用性の高さで、リフターだけでなく、コンパクトカーの208からSUVの5008まで、多くのプジョー車に対応している。キャンパーや車中泊まで本格的にやるつもりはないけれど、アウトドア気分は味わいたい。そんな方の入門用としては、うってつけではないだろうか。
ちなみに、プジョー・リフターと基本骨格を同じくする兄弟車のシトロエン・ベルランゴにも、まったく同じオプションが用意されている。
キャンパーといえばフォルクスワーゲン
実用的なキャンパーと聞いて、クルマ好きが思い浮かべるのがフォルクスワーゲンのタイプⅡ、通称ワーゲンバスだ。その現代版ともいえるのが、フォルクスワーゲンT6.1カリフォルニア。
残念ながら日本には正規輸入されていないけれど、いくつかの輸入車業者が取り扱っているので、日本に取り寄せることは可能だ。
スペック的にはなかなか魅力的で、最高出力150psの2ℓディーゼルエンジンを搭載、7速のオートマチックトランスミッション(ツインクラッチ式のDSG)が組み合わされる。同社のSUVなどから想像するに、この組み合わせは走りっぷりといい、燃費といい、かなり期待できる。
日本に輸入するとなると右ハンドルの英国仕様が妥当だと思われるけれど、英国での価格を見るとベーシック仕様の約5万6000ポンドから4駆仕様の約7万4000ポンドまで。1ポンド=160円で計算すれば、約890万円から約1180万円だから、相当に魅力的だ。
内装の設えなどはフォルクスワーゲンの純正で、そこまでリキ入れて作っているのなら日本にも入れてくださいよ、と言いたくなる。これだけ車中泊やキャンパーが盛り上がっているのだから、かなり需要があるのではないだろうか。
Takeshi Sato
1966年生まれ。自動車文化誌『NAVI』で副編集長を務めた後に独立。現在はフリーランスのライター、編集者として活動している。