美術展の開幕記念式典や内覧会招待の案内状というのがあって、凝った作りだったり、まるで作品みたいなものがあったりして、展覧会が終わってもずっと取っておきたいと思うものがたくさんある。ポスターや関連書籍は集めきれなくても招待状などは場所も取らないのでコレクションには最適。いくつか選んでご披露しよう。連載「アートというお買い物」とは……
作品をもとにしてるから、グラフィック的な力が抜群
案内状、招待状を美術館やギャラリーが送ってくれてありがたい。作品をもとに印刷物を作っているのだから、とても目を引くし、グラフィック的な力は抜群だ。それもあって、用が済んでも、大事に大事にファイル、です。
英国の現代美術家、ジュリアン・オピーの招待状はいつも凝っていて楽しい。
2019年、東京オペラシティ アートギャラリー「ジュリアン・オピー」展の招待状。
その裏側。端にマグネットが付いていて、これを丸めると……写真下のように四角柱状になる。
2022年、MAHO KUBOTA GALLERYでの個展での展覧会。角度を変えると絵が動く。PARCO MUSEUM TOKYOでヴァーチャルリアリティによる展覧会が同時開催された。
ゲーテ2023年4月号のアート特集にも登場した杉本博司さんに関しては招待状、チラシはもちろん、仕事上の資料としてプレスリリース、図録など、全部保管してあるのだが、ここでは1990年代のものなどを中心にアップしておく。
1996年、東京のカナダ大使館での「劇場」シリーズの展示「SUGIMOTO MOTION PICTURE」展。この頃は「劇場(THEATER)」ではなく、「MOTION PICTURE」だった。
1996年、カナダ大使館とほぼ同時開催のギャラリー小柳での「SUGIMOTO MOTION PICTURE」展。
左:1998年、ニューヨークのSONNABEND GALLERYでの個展。「建築」シリーズの展示。右:1998年、ギャラリー小柳での「HIROSHI SUGIMOTO IN PRAISE OF SHADOWS」展。このシリーズは現代美術センターCCA北九州から作品集が出版されている。
2007年、大阪・国立国際美術館「様々なる祖型 杉本博司 新収蔵作品展」の案内。大判の「建築」シリーズ、「観念の形」シリーズが収蔵され、展示された。
展覧会・内覧会の案内は封書で届くことも多い。基本はチラシ(写真右)+招待状(写真左下)。
2012年、青森県立美術館「奈良美智: 君や僕にちょっと似ている」。横浜美術館からの巡回展だった。このあと、熊本市現代美術館に巡回した。奈良美智さんに関しては今年2023年秋、再び、青森県立美術館での大規模個展が予定されている。
村上隆さんの展覧会招待状も凝っている。僕はこれまで、ニューヨーク、ボストン、ロサンゼルス、ビルバオ、ヴェネツィア、パリ、カタール、香港、ソウル、日本数カ所などで彼の展覧会を取材してきた。
2007〜2008年、LAMoCAでの村上隆「©️MURAKAMI」展の招待状。この展覧会はニューヨーク、ブルックリン美術館(見ました)、フランクフルト現代美術館(見てない)、ビルバオ、グッゲンハイム美術館(見ました)に巡回する。
ビルバオ、グッゲンハイム美術館で開催のとき、ルイ・ヴィトンが主催するパーティの招待状でした。22時スタート。ドレスコード「Black & Invisible」って。
2012〜2013年、香港のGAGOSIAN GALLERYでの村上隆「FLOWERS & SKULLS」展。
2004年、ロサンゼルスのBLUM&POEギャラリーでの村上隆「inochi」展。多肉植物がモチーフだったのかな。この展覧会には行ってない。1枚ずつ切手を貼って送っていたのってすごいね。
2004年、小山登美夫ギャラリー(江東区新川にあった)での村上隆展「サトエリKo2ちゃん」のときのカードに村上さんがサインしてくれてる。展覧会レセプションに行った覚えがあるが「大事にして下さい」って、体調崩していたのかな。
展覧会招待状を見ながら、それぞれの展覧会を思い出す。中には額装して美術品のように眺められるようにしたいものもいくつもある。今後もきっと集めていくのだろうと思う。
Yoshio Suzuki
編集者/美術ジャーナリスト。雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がける。また、美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。前職はマガジンハウスにて、ポパイ、アンアン、リラックス編集部勤務ののち、ブルータス副編集長を10年間務めた。国内外、多くの美術館を取材。アーティストインタビュー多数。明治学院大学、愛知県立芸術大学非常勤講師。東京都庭園美術館外部評価委員。
■連載「アートというお買い物」とは……
美術ジャーナリスト・鈴木芳雄が”買う”という視点でアートに切り込む連載。話題のオークション、お宝の美術品、気鋭のアーティストインタビューなど、アートの購入を考える人もそうでない人も知っておいて損なしのコンテンツをお届け。
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