今春、世界で活躍するアーティストが作成した映像作品を見られる注目の展覧会「SCAI PIRAMIDE SCREENING PROJECT vol.1」が、港区六本木のSCAI PIRAMIDEで催される。
He Xiangyu “ Terminal 3”, 2019
スクリーンに映し出されるさまざまな内省
これまで数々の才能溢れるアーティストを世に紹介してきたSCAI THE BATHHOUSEが、第三の展示場として昨年オープンした展示スペース「SCAI PIRAMIDE」。そんな今注目のアートスポットで、異なる国で生まれたアーティスト3人の映像作品を同じ会場で鑑賞できる「SCAI PIRAMIDE SCREENING PROJECT vol.1」が開催される。閉鎖的な空間で内省を強いられた人々を三者三様に映した作品の数々は、どこか現在の私たちに通ずるものを投げかけているかのよう。
韓国出身のアーティストデュオであるムン・キョンウォン＆チョン・ジュンホの「A Molded Moon, Life within a Vase」（2016）は、暗闇で独白する盲目の少女と、交互に現れる毛むくじゃらの男との間で紡がれる言葉の対話を映している。ゲーテ著「ファウスト」の一場面である、自身が成し得なかった人生を嘆くファウスト博士が、さらなる知識を得るために悪魔メフィストフェレスに魂を売るシーンのセリフを引用するふたり。そこには完成度のばらつきに特徴がある韓国の白磁器である「月壺」をモチーフに、完璧を追求する人生の虚しさが表現されている。
中国・遼寧省出身であるヘ・ジャンユの「Terminal 3」(2016-2019)は、河北省の呉橋雑技芸術学校で、エチオピヤやシエラレオネといったアフリカ出身の留学生が、黙々と雑技の練習に励む姿を3年かけて撮影した映像作品。その映像と共に流れる将来の夢や希望を語る彼らのセリフや、それぞれ異なる信仰対象に祈る日課のシーンは、へ・ジュンユならではの独特の世界観だ。金銭を得るために肉体を改造する伝統が息づいた呉橋の文化産業と、肉体改造に打ち込む留学生たちの姿は、私たちになにを伝えようとしているのだろうか。
一方で、ジョージア・トビリシ出身のヴァジコ・チャッキアーニの2つの映像作品には、女性の内面で起こる心理的葛藤が描かれている。家庭やサーカスの劇場といった、ある種の閉鎖的な空間で物思いに沈むふたりの女性。「Heavy Metal Honey」（2018）と「Cotton Candy」（2018）という、甘い蜂蜜や砂糖菓子を連想させる題名は、チャッキアーニ作品の特徴としてしばしば指摘されている、象徴的な物質が作品の内容への重要な鍵を握る技法が表れているのかもしれない。
忙しない日々の中では、誰にも邪魔されず自身を見つめ直すことは難しい。新たに誕生した落ち着いた雰囲気のSCAI PIRAMIDEで、ゆっくりと映像作品を鑑賞しながら物思いに耽りたい。
SCAI PIRAMIDE SCREENING PROJECT vol.1
ムン・キョンウォン＆チョン・ジュンホ、ヘ・シャンユ、ヴァジコ・チャッキアーニ
会場：SCAI PIRAMIDE
住所：東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル3F
会期：2月3日（木）〜4月2日（土）
時間：12:00〜18:00
定休日：日曜、月曜、火曜、水曜、祝日
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※予約制
上映日程
2月3日（木）〜2月19日（土）：ヴァジコ・チャッキアーニ、
2月24日（木）〜3月12日（土）：ムン・キョンウォン＆チョン・ジュンホ、
3月18日（金）〜4月2日（土）：ヘ・シャンユ
