温暖な海洋性気候に恵まれた熱海。その風土に惚れこみ、魅力を世界に届けるべく、挑戦を始めた人物がいる。新たな観光資産として、その存在感を高めているクラフトジンとは──。【特集 偏愛リゾート軽井沢&熱海】

風土を嗜む贅沢。熱海のクラフトジン
人の暮らしが育んできた、文化が息づく熱海には、未だ引きだされていない魅力が眠っている。その可能性に着目し、伊豆の柑橘から海藻まで、熱海の風土をクラフトジンとして表現する「シークリフ 熱海蒸溜所」は、今、新たな熱海の目的地として注目を集めている。
蒸溜所を創業したのは、バーテンダーとして20年以上の経験を持つ釜谷道夫氏。素材の魅力を自身のアレンジで引きだせるクラフトジンの世界に可能性を感じ、2024年に蒸溜所を設立した。特徴的なのは、バーカウンターを併設した“飲める蒸溜所”であるということ。熱海市内で唯一の蒸溜所という強みを活かし、観光客のみでなく、暮らす人や多拠点生活者をも魅了するローカルのコミュニティスペースになっている。
「熱海で蒸溜所を開きたいと思った理由は橙の果実との出合いです。名産でありながら、十分に活用されず、廃棄されることも多い。しかしお酒には抜群に相性がいいと感じました。酸味に加えて心地よい苦みがあり、これはジンのボタニカルであるジュニパーベリーの清涼感と相性がいい。また熱海は、自分が愛する海に近い環境であることも大きな魅力でした」

海に育まれ、海に還る。祈りを込めたジン
ブランド名は「シークリフ」。“波食崖”を意味し、“海に育まれ、海に還る”というコンセプトのもと、売り上げの1%を環境活動の団体に寄付する1% for the Planetに参加し、藻場を作る活動も行う。
ボタニカルは橙を軸に、伊豆半島の高級天然海苔であるハバノリなど21種類を使用。さらに、ジュニパーベリーと同じ、ヒノキ科に属するビャクシンの実を、伊豆最古の神社「白濱神社」から譲り受け、日本らしいジンの表現を追求した。
「橙のコアジンを軸に、シー、ハーバル、フローラル、シトラスなど6つのベースを構築し、ブレンドしています。海藻由来のミネラル感やほのかな旨み、橙の香りが重なり合うイメージです。熱海の素材の魅力を広く知ってもらえたら嬉しいです」
高級ホテルや旅館でシークリフを取り扱うことは、今や“熱海プライド”ともいえる存在。かつてソムリエ界のレジェンド、田崎真也氏は「熱海に足りないものは酒蔵だけ」と語っていたが、この地に欠けていた最後のピースが揃った今、熱海のさらなる発展に期待が高まる。
釜谷道夫
SEACLIFF 蒸留責任者。西麻布にて自身のBARを開業。タイソンズアンドカンパニーにてバーディレクターを務めたのち、2024年、SEACLIFF 熱海蒸溜所を設立。土地の魅力を映しだすクラフトジンを手がける。
SEACLIFF 熱海蒸溜所/シークリフ ATAMI DISTILLERY
住所:静岡県熱海市清水町9-13
TEL:0557-48-6950
営業時間:ボトルショップ11:00-16:00、バー18:00-L.0.22:30
定休日:月・火曜
Instagram:@seacilff_spirits
この記事はGOETHE 2026年7月号「総力特集:偏愛リゾート最前線!」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら



