本誌連載でおなじみの福田淳氏はウイスキーを愛する連続起業家。現在、ウイスキー造りに挑んでいる。そのウイスキー愛と挑戦の現在地とは──。【特集 弩級のSAKE】

起業家の視点で見る、ウイスキーの未来価値
「一番好きなお酒は、ウイスキーです」と福田氏は豪語する。生まれ育ちは大阪府高槻市、麓にサントリー「山崎」の蒸留所を抱く天王山近く。「山崎」が感じさせる故郷風土を懐かしく味わってきた。
「僕にとって幸せとは、一日の終わりにウイスキーグラスをゆっくり傾けること。『山崎』から始まり、世界中のウイスキーを飲んできて、こういう幸せを自分でつくれたら最高だなと思うようになったのです」
現在は、大阪・北新地、石川・能登に加え海外でもそれぞれの方法でウイスキー造りに取り組む。ウイスキーは完成するまでに少なくとも5年はかかるというが。
「造り始めてしまえば、いつかは必ず完成します。それにウイスキーは10年後、原価に対して価値が100倍にもなる可能性があるとも言われている点も面白い。これから素晴らしいウイスキーを未来に届けたいですね」
造り手の設計したそのままの味を味わいたいと、飲み方は常にストレートか氷の溶け切らないロック。自らが造り手となり、自らの作品としてのウイスキーを味わう時間こそ、究極のロマンであり、価値となる。
Future Value 1|長期熟成不要のAI生成シングルモルト
現在、海外で試作品を造っているというのは、福田氏が旨いと感じる国内外のウイスキーから、AIが香気成分・熟成データなどを学習し、最適配合のレシピを提案して完成するウイスキーだ。元はスウェーデンのウイスキー蒸留所がマイクロソフトと協力して開発したもので、下の写真はAIウイスキー第1号。AIに過去のデータを学習させることで、新しいレシピ案を生成し、最終的にマスターブレンダーが判断するというハイブリッド。こちらの熟成期間はわずか3ヵ月だ。

「まだ軽い味わいですが、改良すれば短期間で美味しいものができてしまう!」
長期熟成が不要なことで、将来的に短期間で新ブランドを市場に展開できるうえ、消費者の声も反映しやすい。ウイスキー界の革命児になるかも。
Future Value 2|地元高槻の縁がつなぐオリジナルウイスキー
大阪最大の高級歓楽街、北新地の小さな実験工房「北新地CO・LABO」。ここではウイスキー、ビール、日本酒、リキュールとあらゆる酒で「自分ブランド」をつくることができる。代表の橋本良英氏と相談してモルトや蒸留方法を選びながら、好みの味に仕上げていき、高槻の山中にある貯蔵庫で熟成。完成後はボトルやラベルも好きなものをつくれ、まさに世界で自分だけが飲める1本を生みだせる。
「酒造り」には免許が必要というイメージがあるが、販売しない限り実は問題ない。福田氏は現在ここでオリジナルのウイスキーを造っているところ。
「地元高槻の貯蔵庫でその風土を纏ったお酒が生まれるのが楽しみ」
熟成した樽をかきまぜる作業をさせてくれるなど酒造りの工程を味わえるのも醍醐味だ。
Future Value 3|地元が潤う、能登発のウイスキーブランド
能登半島地震で閉業となってしまった蒸留所のうちのひとつを再生させ、その設備で地元の人とともにウイスキーを造ろうと、現在、福田氏は奔走中。ウイスキーとジンは発酵した液体を蒸留して凝縮する工程は基本的に共通しているため、ウイスキー蒸留所にできないかと考えた。
「アート、家具、ウイスキー、ワイン。このなかで10年後、原価に対してもっとも価値が上がるものはウイスキーだと言われています。ジャパニーズウイスキーが世界中で盛り上がるなかで、能登で新たなブランドをつくり上げることができたら。きっとこの土地がさらに豊かになるのではないかと考えています」
現在は、日本海の海洋深層水を使用する計画も立てているところだという。


福田淳/Atsushi Fukuda
1965年大阪府生まれ。スピーディグループCEO、STARTO ENTERTAINMENT創業CEO、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業CEO。ウイスキーを嗜む前にシャンパンを飲むのも好き。
この記事はGOETHE 2026年2月号「総力特集:その一滴が人生を豊かにする、弩級のSAKE」に掲載。▶︎▶︎ 購入はこちら




