比類なきシャンパーニュと称される、KRUG。なかでも、今、シャンパーニュ好きの間で話題を集めているのがヴィンテージの「クリュッグ 2011」だ。6代目当主のオリヴィエ・クリュッグ氏が語る。
際立った個性を持つ単一年ヴィンテージ「クリュッグ 2011」
「それは想像を超えたというより、想像できない味でした」
1843年に設立されたクリュッグの6代目当主、オリヴィエ・クリュッグ氏は「クリュッグ 2011」についてそう語り始めた。
「メゾンでは、創業者のヨーゼフ・クリュッグの時代からふたつのキュヴェの醸造を原則としている。ひとつは、その年の天候に左右されず、毎年、シャンパーニュの最も寛大な表現を目指した「グランド・キュヴェ」。もうひとつはその年のストーリーを豊かに表現する、際立った個性を持つ単一年の「ヴィンテージ」だ。
「私はクリュッグを音楽に例えます。2011年は約250種のベースワインを仕込みました。つまり250人のミュージシャン、楽団員ですね。そして、オーディションをしてオーケストラを構成します。
足りない部分は古い楽団の、スタンバイしている人たちから見つけてきて、理想のオーケストラを完成させます。ただ、オーディションに残らなかった2011年の楽団員のなかには、すごい才能を持った人たちがいるわけです。もちろん、オーケストラは人数も多いですから大きなステージが必要です。一方で、そのすごい才能の人たちに演奏させてあげる小さなステージがあってもいい。室内楽とでもいいましょうか。彼らは12年間セラーで寝ながらリハーサルを重ねて、ようやくステージに出てきたのです」
2011年のワインを中心に構成された「グランド・キュヴェ」が「エディション167」。そして、「2008」以来のヴィンテージとしてリリースされたのが「クリュッグ2011」だ。
「2011年は気候が安定しない年でした。春が夏のように暑く、夏は雨がたくさん降って涼しいと思っていたら、収穫直前に熱波が来て……。アップダウンの激しい年だったんです。なのでいいブドウが採れるのか、正直、味わいは想像できませんでした。ただ、いいワインになる、という予感はありました。なぜなら、そういう難しい年こそ、私たちはチャレンジし甲斐があって、楽しくなるからです。
音楽というものは、上手なミュージシャンが揃っているからいい演奏かっていうと、そうとは限りません。上手なんだけど、面白くないなっていうときがあります。
2011年は、ワインをつくるにあたっては難しすぎるくらいの年だったんですが、ベースワインで仕込んでいって、生き残ったベースワインたちは、それは本当にすごい人たちだったんです。『クリュッグ2011』は、素晴らしい室内楽とでもいいましょうか、偉大なジャズバンドとでもいいましょうか」
「クリュッグ 2011」の豊満でありながら爽やかな個性は、セラーで12年間の熟成を経たことで表現力、調和、洗練さを増し、独特の存在感を持つシャンパーニュとなった。メゾンのテイスティング・コミッティーは、この「クリュッグ 2011」に「活き活きとしたふくよかさ」とニックネームをつけた。
「クリュッグ 2011」をイメージしてつくられた楽曲が誕生
この「クリュッグ 2011」をイメージしてつくられた楽曲がある。DJで作曲家の沖野修也氏による「PRISM」だ。
クリュッグでは、その味わいがしばしばオーケストラに例えられることから、世界中のミュージシャンとコラボレーションし、シャンパーニュと音楽が織りなす至高のペアリング体験「KRUG×MUSIC」を提案している。2022年には坂本龍一氏がクリュッグのために楽曲をプロデュースし、大きな話題を集めた。
そして今年、メゾンが「KRUG×MUSIC」でコラボレーションしたのは、ドイツ、イタリア、韓国、香港、日本の5人のミュージシャンたち。フランス、ランスにあるファミリーハウスやセラー、ヴィンヤードを訪れ、そこで得たインスピレーションから楽曲を手がけた。
「ブドウに欠かせない太陽と雨のコントラストがテーマです。2011年の対比的な感覚を映し出しました。太陽と雨は虹を生み出します。この虹に『クリュッグ2011』を重ね、クリュッグならではのエレガンスを表現しました」(沖野氏)
「クリュッグ2011」をグラスに注ぎ、口の中へと持っていく――。
「PRISM」の旋律に耳を傾ける――。
味覚と嗅覚、そして聴覚から目に浮かぶのは、太陽が煌めくブドウ畑だ。オリヴィエ氏は言う。
「そこには生き生きとした生命力が感じられるはずです」
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