東西に長い日本列島は、テロワールも百花繚乱。造り手の個性もあいまった、その多様性を存分に楽しみたい。すでに入手困難なワインばかりだが、見つけたら即購入を。今回はワイン賢者4人が選ぶ、日本各地のプレミアムワインを紹介する。【特集 日本ワイン】
日本国内のワインの特徴
ワイナリーは、ほぼ全都道府県に存在し、それぞれの土地でオリジナリティを追求したワイン造りが行われている。多様な日本のテロワールを、ぜひご賞味あれ!
1. 木谷ワイン「ロゼ 2022」
京大卒の元銀行マンによる奈良初のワイナリー
元銀行マン木谷一登さんが、2022年に地元香芝で設立した奈良県初のワイナリーです。京大出身の頭脳派にして、ブレイクダンスをしていたアーティスティックな一面もある木谷さんが手がけるワインは、設立間もないワイナリーとは思えない完成度の高さ!
このワインは、長野県桔梗ヶ原の3品種を混醸し、新樽とステンレス樽のキュヴェをブレンドしたロゼワイン。バニラのような甘い香りが心地よく、和菓子やマカロンにもよく合います。(選者・菊地)
2. Natan葡萄酒醸造所「Cheeky 2022」
このワインに、誘惑されてみませんか?
2022年、SNSでも話題になった徳島県のワイナリーが、ヤマソービニオンでチャーミング&色気のあるワインを表現しています。「cheeky」とは、“生意気な”かわい子ちゃんという意味。ポップなラベルに描かれた女の子ように、まだ男性を誘ったことのない子が、見よう見まねの雑な感じで誘惑しているかのようなかわいいワインなんだそう。
ラズベリーを思わせる甘酸っぱい果実味に、アフターはスパイシーで野性味溢れる味わいです。(選者・ひぐち君)
3. Natan葡萄酒醸造所「Natan 樽デラ04」
醸造家に嫉妬したソムリエが、徳島県初のワイナリーを開業
奈良のワインバーでソムリエとして活躍していた井下奈未香さんは、ワインと醸造家の関係性に嫉妬して醸造家に転身。「島之内フジマル醸造所」での委託醸造を経て、2021年に自社醸造をスタートしました。
山形県産デラウェアを樽熟成させた白ワインは、ジューシーな果実味、アメリカンオーク由来のバターのニュアンス、ブランデーのようなオイリーさが楽しめます。ワインは造り手の心が反映されるのだと実感できる1本です。(選者・菊地)
4. 安心院葡萄酒工房「安心院ワイン 諸矢 甲州」
進化を続ける甲州の新しい可能性
ここ10年で大きく評価が高まった大分県の「安心院葡萄酒工房」は、日本一美しい盆地と呼ばれる畑に、昼夜の寒暖差がある気候といったテロワールが明確に表現されているワインを醸造しています。
現代的なメリハリのきいたこの甲州は、香りも芳醇で華やか。和柑橘のニュアンスで白桃、和梨、柿などのフルーツのフレーバーも優しく広がります。味わいもフレッシュ感があり、綺麗な酸が余韻まで口中に広がる品格のあるテイストです。(選者・矢田部)
5. ストゥディオ・ゴー・ゴー「名なしのベリオrose 2022」
地域に根ざし、農家とつながるワイン造り
第一印象からスモモやアセロラの香りが広がり、フレッシュで軽快な味わいで親しみやすい。亜硫酸無添加。
福岡県の「とどろき酒店」が立ち上げたワイナリーです。行動力抜群の栽培醸造長の山田朱那さんは山梨の「ペイザナ中原ワイナリー」で修業。地元農家とのつながりを大切にして福岡の地に適した品種を模索、自社管理農園では、雨よけを設置して極力農薬を減らす努力を続けています。土地のブドウを素直に活かしたワインが身上。(選者・鹿取)
6. セイズファーム「アルバリーニョ2022」
地道で真摯な取り組みでハンディを跳ね返す
ほのかに香る金木犀の香りにフレッシュで生き生きとして豊かな酸。軽やかでメリハリがある味わいで氷見産の魚介類との相性抜群です。
ワイナリーは魚介類の仲卸が富山県氷見に設立。ワイナリーにはレストラン、宿泊所が併設。いち早くアルバリーニョを導入するなど、栽培醸造責任者の田向俊さんの思い切ったチャレンジが功を奏し、続々と素晴らしいワインを世に送りだしています。地元の飲食店との関係も丁寧に紡いでいます。(選者・鹿取)