東西に長い日本列島は、テロワールも百花繚乱。造り手の個性もあいまった、その多様性を存分に楽しみたい。すでに入手困難なワインばかりだが、見つけたら即購入を。今回はワイン賢者4人が選ぶ、長野のプレミアムワインを紹介する。【特集 日本ワイン】
長野ワインの特徴
ワイナリー数が70軒を超えた長野県。シャルドネ・メルロだけではなく、ソーヴィニヨン・ブラン、プティマンサン、サヴァニャン、そしてカベルネ・フランも期待大だ。
1. ル・ミリュウ「ル・ミリュウ フェス」
安曇野の未来を切り開くミレニアルズコンビ
2018年に当時30歳の青年ふたりが、安曇野に立ち上げたワイナリー「ル・ミリュウ」。このワインは、シャルドネとソーヴィニヨン・ブランのブレンドタイプで、色がしっかりと出ていて柑橘と少しのハーブの香りにフローラルなニュアンス。果実味と酸のバランスが心地よく、クリーンで柔らかい口当たりの辛口で飲みやすい1本です。
ブレずに自分たちのスタイルをまっすぐ貫く、次世代の造り手でもある彼らを今後も応援したくなります。(選者・矢田部)
2.信州たかやまワイナリー「ソーヴィニヨン ブラン 2021」
日本ワインらしさを感じる繊細で優しい味わい
日本らしい繊細なハーブ香に、冷涼感のある青リンゴのような酸味と、高級なメロンを思わせる果実味。高山村の標高差が生みだす、バランス抜群の味わいです。エレガントな印象で、口に含むと不思議と美しさを感じます。まだ飲んだことがない方は、ひと目惚れにご注意を(笑)。
ソーヴィニヨン・ブラン特有の青草のような香りが苦手という人も、ぜひこのワインを試してみてください。日本ワインの優しさにハマること間違いなしですよ。(選者・ひぐち君)
3.ツイヂラボ「カラリア シャルドネ ペティアン 2022」
現役コンサルマンと若手注目醸造家の最強コンビ
オーナーは大手コンサル企業に勤める築地克巳さん。その彼が、世界を股にかけて活躍する平成元年生まれの醸造家、須賀貴大さんと始めたワイナリーです。
長野県立科町にあるヴィンヤード「carraria」の中村大祐さんが育てたシャルドネを、野生酵母で瓶内一次発酵させて仕立てた微発泡ワインは、wasyu限定。グレープフルーツのようなジューシーな果実味と心地よい酸味、ほろ苦さとまろやかさが混在する、複雑な味わいが楽しめます。(選者・菊地)
4.南向醸造「ミナカタ ブラン 2021」
ワインと農と、そして環境と向き合う日々を送る若き造り手
黄金色に輝き、ナッツ、黄桃のような香りに口中を満たすとろっとした質感。心に刺さる圧倒的な存在感。山梨の小山田幸紀さん率いる「ペイザナ中原ワイナリー」での研修後、地元南信・中川村にて独立。自然と人為が調和して風土が現れるという信念でブドウとワインに向き合っています。
近年は畑と土壌の健全化にも心を砕き、地元の生産者、長野や山梨の若手との交流も大切にしています。赤、白とも混醸で仕こんでいるのも特徴的です。(選者・鹿取)
ボルドータイプの王道の赤とフレッシュな白に期待
カシス、スパイス、ハーブなど複雑な香味。収量制限をしたブドウのワインには豊かなタンニンに支えられたストラクチャーがあります。樽で約1年熟成。
大手メーカーの契約農家である横山弘樹さんは、自身のワイン造りを目指し、新たに畑を拓き、2021年にワイナリーを設立。横山さんはメルロとプティヴェルドにポテンシャルを感じているそうです。礫の多い土壌で育つブドウの樹齢が高くなる将来がとても楽しみです。(選者・鹿取)
6.アパチャーファーム・アンド・ワイナリー「シュナン・ブラン2022(名称未定)」
着実な経験を重ねた造り手の新たな門出
第一印象は金柑の香り。次第にハチミツの香りも立ち上り、陶然とするほど魅力的。
日本では栽培が難しいとされるシュナン・ブランに挑戦中の田辺良さん。10年、20年熟成するシュナン・ブランの産地としての長野県東御市の可能性を確信しており、他にメルロと巨峰も栽培。一部の畑を除き、すべて有機栽培相当の農薬散布。2022年にワイナリーを設立し、自生酵母で発酵させ亜硫酸は無添加ですが、クリーンで長熟するワインを目指しています。(選者・鹿取)