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2024.08.06

業界トップクラスの売り上げを誇る運送会社が取り入れた「面倒だけど、お客さまに感謝される」アンケートとは

「日本一、丁寧な仕事をする会社」をモットーに運送業界トップクラスの売り上げを誇る、池田ピアノ運送。常識を覆す施策を次々に取り入れ業界のイメージを一新してきた同社社長・池田輝男氏が、どんな業界でも通用するビジネスの絶対法則を紹介。書籍『「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣』より、一部を抜粋してお届けします。

「お客さまからほめられる仕組み」をつくろう

自社の現場の社員たちに、「仕事をしていて何が一番嬉しいか?」と質問すると、8割以上の確率で「お客さまに喜んでいただき、感謝され、ほめられること」という答えが返ってきます。とくに勤続20年以上のベテラン社員から、そういった声を多く聞くことがあります。

「やることがないからこの仕事をやっているつもりでしたが、入社して20年経ったころに、この仕事が好きなのだと気づきました。お客さまに『ありがとう』と言われるのが最高に嬉しいです」

そう語るのは我が社に30年以上勤め、部長職に就く者です。

彼がこの境地に辿り着くまでには当然、紆余曲折ありました。その昔、私に対して「会社を辞めていいですか?」と打ち明けたこともあります。しかし、そこから随分、人間としても仕事人としても成長したように思います。

「自分たちはお客さまの問題や課題を解決し、世の中の役に立っているのだ」という意識は、丁寧な仕事をするに当たっての「基本マインド」となるものです。だから私たちの会社では、スキルアップ以上にこれを重視して社員に教えるようにしています。

この基本マインドが高く、使命感を持って仕事をしている人間ほど、「お客さまに喜んでいただき、感謝され、ほめられること」がやりがいにつながっているようです。その結果、モチベーションだけでなく、仕事のクオリティも上がっていきます

だとしたら、「お客さまからほめられる仕組み」を社内につくっておくことは、最高の環境整備になると思いませんか?

「お客さまからのほめ言葉をダイレクトに得られる仕組み」として、どんなことが考えられるでしょう。

お客さまアンケート」というのが、私の答えです。

「お客さまから感謝されるアンケート」のつくり方

アンケートと聞けば、「えらくシンプルな方法だな」と思う方もいるでしょう。

そのとおり、かなりシンプルな方法なのですが、社員のモチベーション・アップに活用できるだけでなく、自社の商品・サービスの強みが見えたり、強化すべきポイントや改善すべきポイントまで見えてきたりします。

お客さまの声をヒアリングし、マーケット・イン思想でお客さまのニーズをくみ取って、相手を思いやるサービスを生み出していく方法こそ「お客さまアンケート」に他ならないのです。

アンケートの効果は、私のみでなく、多くの成功した経営者も述べていることです。それなのになぜ、「お客さまアンケート」を取り入れる会社が、あまり多くないのでしょう。

その理由の1つは、「クレームが増える」と思っている人が多いことです。

確かに、その気持ちもわかります。お客さまの声を聞けば、いいことだけでなく、悪いことも言われるでしょう。とくに、日本人はなかなかほめることをしない傾向があるので、ほめ言葉よりも批判が多くなりそうな気がすることも、想像に難くありません。

もちろんクレームは業務改善の材料になりますが、社員のモチベーションを上げるのには、逆効果になってしまうでしょう。

ただ、やり方をうまくすれば、アンケートにクレームを書く人を極端に減らすことができます

これは「クレームを無視する」という意味ではありません。「お客さまからほめられる環境を整えるためのアンケート」には、ちょっとしたテクニックがあるのです。

では、実際にどんな「お客さまアンケート」をつくればいいのか?

シンプルで応用しやすい、ということで、私の会社でつくっているものを、これから紹介しましょう。ぜひ参考にしてみてください。

アンケートは「面倒くさい」くらいでちょうどいい

私の会社には2種類のアンケートがあり、1つは品質チェックのためのもので、もう1つはまさに「お客さまの声を聞く」ためのもの。後者はかなり“面倒くさい”仕様にしています。

というのも、基本的に白紙がベース。最初に運送スタッフの顔写真と簡単な挨拶文があり、その後に質問が1つあるだけです。

「池田ピアノ運送に依頼していいことありましたか? それとも嫌なこと? 是非、教えてください!」

答えは白紙のスペースに自由に書いてもらう形式です。

そしてピアノの搬入作業が終わった最後のタイミングで、このアンケートをお客さまにお渡しします。返送は、「よろしければお送りください」という形で、FAXにてお返しいただいています。

アンケートといえば、多くは5段階評価などの選択式のもので、記述スペースがあったとしても最後に1、2行だけのことがほとんどでしょう。

しかし私の会社では選択式を取り払って、完全記述式にしました。しかもメールフォームがあって、パソコンやスマートフォンで気軽に打ち込めるものではありません。手で書いて今どきFAXですから、家にない方はコンビニに行かなければなりません。

お客さまにとっては大変面倒なことであり、放置されても仕方のないことだと思います。

ところが、それでもちゃんとアンケートを返してくださるお客さまはいらっしゃるのです。

正直、私も始めたときは送ってくださる方が1人もいなかったらどうしようかと考えていたくらいです。ところが意外にも多くの方がアンケートを返してくださるし、FAXがないからとわざわざ郵送してくださったり、スタッフが帰る前にその場で書いてくださる方もいらっしゃいます。

そこまでして返送いただくアンケートには、「ありがとうございました」という感謝の言葉がほとんどです。

嬉しいことに、返送の手間など関係なしに、感謝の言葉を相手に伝えたいと思ってくださるお客さまが多いのです。おかげさまでこうした多くの喜びの声が、スタッフのモチベーション・アップにつながっています。

アンケートは「生の声」でないと意味がない

もちろん、アンケートをとれば、不満の声や、気になった点を指摘されるケースも出てきます。

FAX回答のアンケートで、返信率は数十件に1枚のペース。私たちの仕事は多いときに1日に約8か所を回りますが、すると1週間で回答は1枚くらい。

月に換算すれば、だいたい3~5枚くらいの返信と考えればいいでしょう。

おそらくアンケートを品質改善の手段と考えれば、それでは少なすぎるという人が大半だと思います。メールフォームの選択式にしたりして、もっと広く数を集める必要があるのではないか……。

でも正直な話、本当に不満に感じたことがあれば、お客さまはすぐ電話などで具体的なご意見をくださいます。

選択式は確かに気軽に回答できるというメリットがありますが、「不満」にチェックを入れてあるだけで具体的な理由をいただけなかった場合、果たしてそれが真の業務改善に使えるのでしょうか?

一方で白紙のアンケート用紙に手間をかけてまで書いた不満な点は、お客さまも真摯に我が社のことを考えてくださり、「善意からあえて指摘する一言」である可能性も高いのです。だから私たちも誠意をもってその言葉を聞き、真のサービス改善に結びつけることができます。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣
池田輝男

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