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2024.06.06
月曜が憂鬱…「サザエさん症候群」を解消できる「脱感作療法」とは
会社に行きたくない、集中力が続かない、ついお酒を飲みすぎてしまう……。こうしたお悩みを脳科学と臨床心理学で解決してくれるのが、テレビでもおなじみ、篠原菊紀先生。篠原先生の著書『「しなやか脳」でストレスを消す技術』から、不安やストレスの多い今だからこそ身につけたい、「しなやか脳」になるためのノウハウをご紹介します。
日本人はみんな「不安症」
日曜日の夜からすでに憂鬱。夜が明けたら会社に行かなくてはならない。嫌みな上司にダメな部下、ウザい同僚。イヤなことがたくさんある。出社したくない。特に休み明けの月曜日は出社したくない……。
その気持ち、よくわかります。確かに月曜日の朝は憂鬱です。わたしも気分が沈みがち。これは多くの人も共感できる悩みでしょう。
以前、ある大企業の社員を対象に毎朝血液を採る実験をしたことがあります。血液中のストレス物質(コルチゾールの代謝産物)と、ストレスに抵抗するホルモン(デヒドロエピアンドロステロン)の分泌量を調べたのです。
それを曜日別で集計したところ、やはり月曜日にストレス物質の分泌が多く、週末に向けて減っていきました。一方、ストレスに抵抗するホルモン、いわば元気ホルモンの分泌は月曜に少なく、週末に向けて増えていきました。
土日ガンガン遊ぶ人も、週末ぐったり寝て過ごす人も同じ傾向でした。つまり月曜日が憂鬱なのは恐らくあなただけじゃない。隣で元気そうにしている同僚も、実はドンヨリ気分だったり、何だか身体が重かったり。
そもそも、わたしたち日本人の多くは、不安を感じやすい遺伝子を持っています。社会的な脅威に対して過剰な反応をしてしまったり、ついついネガティブにものごとをとらえがちだったり。
心の安定に強くかかわる脳内物質にセロトニンがあります。このセロトニンに関係する遺伝子に「5-HTTLPRのSタイプ」があり、これがその「不安遺伝子」です。
セロトニンを再利用するための穴を作るのに5-HTTLPRがかかわるのですが、このSタイプを持つと穴の数が少なくなり、セロトニンが再利用されにくくなり不足しやすくなります。すると心の安定が得られにくく、先々を心配しがちになるというのです。
このSタイプ、遺伝子は対なので、ふたつ持つ人、ひとつ持つ人、ひとつも持たない人がいるわけですが、デルブリュックらによればアメリカ白人でふたつ持つ人は40.4%、アメリカ黒人では24.5%。しかし、日本人では73.3%がふたつ持っています。ひとつ以上なら何と98%。
そんなわけで、日本人の大多数はそもそも不安を抱えやすい可能性が高い。ネガティブにものごとをとらえやすいのです。
「脱感作療法」が効果的
そこで――、会社を思い浮かべ、にっこりする。
これは脱感作療法のひとつです。感作というのは、もともとアレルギー反応で用いられる言葉で、抗原に対して敏感な状態であるという意味です。その過敏性の原因であるアレルゲンをあえて注射し、最初は極少量で徐々にその量を増やしていくことで慣れさせ、過敏性を減弱させる療法が、脱感作療法です。
心療内科やカウンセリングにおいても、あるものに対して敏感にネガティブな反応をしてしまう状態を治す場合に同様な療法が行われ、例えば高所恐怖症を治したい場合などは、高所から真下を見た映像をあえて見せる、何度も見せるといった方法が実際に採られています。そして平気な自分に気付いていく。
この場合、高所恐怖症の人が見ただけで気を失ってしまうほど高所からの映像を、いきなり見せることから始めては意味がありません。最初は低いところの映像から始めて徐々に高いところの映像にしていく。レベルの低いところから徐々に脱感作していく。
嫌いな先生の話であれば、いきなり先生の写真を机の前に飾るのでは刺激が強すぎる。まずは先生の服装やネクタイあたりを思い出すというところから始めて、次は髪型、次は鼻、顔、そして写真を毎日眺めるといった流れで慣れさせていく。見慣れていくうちに、嫌いという気持ちが軽減されてくる。にっこり笑いを付け足せばさらによし。
この方法を「月曜日がイヤだ」というネガティブな感情を軽減させるのに利用したのが「会社を思い浮かべ、にっこりする」です。
月曜日に出社するのがイヤな理由が、「Aという上司に会うのがとにかくイヤだ」というように明確であれば、「会社」ではなく「その上司」。
嫌みな上司やダメな部下に会いたくない、やりたくない仕事もある、出たくない会議もある、などなどが渾然と混じり合って、全体として何だか行きたくない。何がイヤってことはないけど、何となく、でも、すごくイヤ。そんなときは「会社」です。
もしくは、そのイヤになる瞬間、イヤという気持ちが芽生えるとき、そのキッカケを狙って脱感作します。
ポイントはリラックスできる環境で思い出すこと。ストレス物質の分泌が少ない環境で記憶を呼び起こすと、イヤな記憶が失われやすいとの報告もありました。
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