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2024.04.26

アート=キリスト教のSNSだった!? 「イエスの生涯」を世界中に広めたアートの力

世界のビジネスパーソンにとって、アートは共通の必須教養! 世界97カ国で経験を積んだ元外交官の山中俊之さんが、アートへの向き合い方を解説する『「アート」を知ると「世界」が読める』より、一部を抜粋してお届けします。

「アート=キリスト教のSNS」だった

「アートの歴史を押さえるには、キリスト教の歴史も知っておきましょう」

ビジネスパーソン向けの研修でこの話をすると、「そうか、キリスト教を学ばないと、アートはわからないのか」とがっかりする人もいるのですが、ここは発想の転換で、「アートを通して、キリスト教が簡単に学べる」と考えることもできます。

なぜなら、キリスト教、特にその中でもカトリックが世界中に広まったのは、一般の庶民にもわかりやすく教えを説明したため。そのわかりやすさのツールこそ、アートでした。

ミケランジェロ『アダムの創造』(Michelangelo, Public domain, via Wikimedia Commons)

西洋において読み書きが一般庶民に広まったのは17~18世紀のこと。江戸時代だった18世紀の日本の識字率の高さは世界随一とも言われますが、これは庶民も読み書きを習うことが一般化していたから実現できた、非常に稀なこと。

一方で、「庶民は字が読めなくて当たり前」という教育格差があるのがヨーロッパでした。

16世紀に登場したプロテスタントは各国の言語で書かれた聖書によって布教されましたが、それ以前のキリスト教と言えば、カトリックと、ロシアや東欧地域で広がった正教会。ただでさえ識字率が低いうえに、その頃の聖書は外国語とも言えるラテン語で書かれていたため、読めるのは司祭など一握りのエリートだけでした。そこでカトリック教会が音楽や絵画を用いて教えを広めたことが、今日の西洋アートにつながっていきます。

つまりキリスト教におけるアートは、「なんかすごい! 美しくて尊くて、そしてわかりやすい」と人々の心を動かし、「ものすごくいいから、ほかの人にも伝えたい」という行動に駆り立てる、いにしえのSNS。重厚な宗教画は、よくよく見ると「絵で描かれた物語」であり、定番のモチーフがあります。

たとえば、神が6日間かけてすべての生物と天と地をつくったという、創世記にある「天地創造」のストーリー。これはキリスト教において極めて重要なテーマで、ミケランジェロの〈アダムの創造〉にも描かれ、これらのモチーフは現代アートでも取り上げられています。

イエスやキリスト教は絵画の最大のモチーフ

旧約聖書に登場する預言者や聖人たち(モーゼやアブラハム、ダビデ王など)も多く描かれていますが、中心となるのは、やはり神の子イエス。イエスがどう誕生し、どんな生涯を送って復活という奇蹟を遂げたかも、アートを見ればおおまかに把握できます。

次は、イエスの生涯でよく取り上げられるアートのモチーフです。

  • 1 誕生:天使ガブリエルが処女マリアに、「あなたは神の子を宿しましたよ!」と告げにくる「受胎告知」。
  • 2 幼少期:聖母マリアが幼な子イエスを抱いている「聖母子像」。
  • 3 活動期:「善きサマリア人」「山上の垂訓(すいくん」などイエスが説いた説法。
  • 4 晩年期:イエスが裏切り者のユダの密告で逮捕され、ユダヤ教の指導者に罪人として責められる「審問と逮捕」。
  • 5 刑(たっけい):ゲッセマネの丘に行ったイエスが「受難から解放してください」といったん祈るものの、「やっぱり受け入れます」と決意(ゲッセマネの祈り)。パンとワインで弟子である十二使徒と食事をしながら教えを残す「最後の晩餐」。十字架にはりつけられる「磔刑」で死を迎え、埋葬される。
  • 6 復活:埋葬後3日目、死者の中から甦り、「復活の奇蹟」を遂げる。

これらはミケランジェロ、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ボッティチェリなどなど、西洋アートの超メジャー級の画家たちに、何世紀にもわたって繰り返し描かれていますが、現在でもイエスやキリスト教は、絵画の最大のモチーフとなっています。

この記事は幻冬舎plusからの転載です。
連載:「アート」を知ると「世界」が読める
山中俊之

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