美しい腕時計との出合いは、必ずや人生を豊かにしてくれる。ビジネスの最前線を走り続ける仕事人たちが選ぶ腕時計と、その裏にある味わい深いストーリーとは。今回は、セイタロウデザイン 代表取締役の山崎晴太郎氏に話を聞いた。【特集 美しい時計】
月の美しさに感動できる自分でありたい。だからムーンフェイズを選んだ
デザイナーとして駆けだしだった20代。その頃に依頼された墓石をデザインする仕事が苦い記憶として残っていると、山崎晴太郎氏は打ち明ける。
「墓石って永久に残るものなので、そのデザインは世代や価値観を超えた本質的な美が感じられるものでないといけない。しかし、当時の私にはその知識も理解も不足していて、満足のいく仕事ができなかったんですよね。そこから私の“美しさへの旅”が始まったように思います」
当然、腕時計にも美しさを求めるようになった。今愛用しているのが、パテック フィリップの「カラトラバ」とカルティエの「タンク」だ。
「『カラトラバ』は、シンプルに美しい。もはや別格だなと思いますし、ひとつの到達点ともいえる時計ではないでしょうか」
「タンク」は全体のデザインに加え、ムーンフェイズの存在にも心惹かれた。
「“花鳥風月”とは日本人の美意識を表した言葉ですが、これは人がその美しさを理解する順番である、という説を聞いたことがあって。鮮やかな花に惹かれ、鳥の躍動感に魅せられ、目に見えない風に想いを寄せ、最後は虚空に浮かぶ月を愛でる……。月の美しさに感動できる自分でありたいという思いもあり、ムーンフェイズを選んだんです」
森羅万象と向き合い、デザインを通じて美を表現し続ける山崎氏の旅路は、これからも続いていく。