連載「ヴィンテージウォッチ再考」の第17回は、1990年代のブレゲ「クラシック」とジラール・ペルゴ「リシュビル」を紹介する。
注目が高まる1990年代生まれの機械式時計
1970年代から始まったクォーツショックを境に、スイス時計業界は大きな変革期を迎える。低迷した機械式時計の産業が復興に向けて動き出したのは1980年代半ば頃からで、その成果が徐々に出始めた1990年代のプロダクトには試行錯誤の跡が見られる。
1990年代に製造された多くの時計は、単純にクオリティの部分だけで比べれば、クォーツショック以前に作られたヴィンテージウォッチや現行モデルに見劣りするかもしれないが、視点を変えると、この時代ならではの魅力を備えていることが見えてくる。次に紹介する2本とともに読み解くためのポイントを解説しよう。
天才時計師アブラアン-ルイ・ブレゲが1775年に創業したブレゲは、1970年にショーメ、1987年にインベストコープに買収された後、1999年にスウォッチグループの傘下に入る運びとなった。1972年に発表された「クラシック」は、ブレゲにとって激動の時代に生まれたコレクションであり、瑞々しく力強いデザインは色褪せない魅力を放っている。今回紹介する1990年代に製造されたRef.3917は、34mm径のコンパクトなサイズ感、ジャガー・ルクルト製の手巻きムーブメント、そして初期モデルならではのシャンパンカラーのダイヤルを備えている。
ジラール・ペルゴの「リシュビル」は、アール・デコの影響を受けたケースデザインとクロノグラフを組み合わせた趣深いスタイルに特徴がある。34.5mm径の上品なトノー型ケース、ブレゲ針、ブレゲ数字のインデックスは、一般的なクロノグラフと一線を画すドレッシーな雰囲気が漂う。ムーブメント製造メーカーの名門レマニア製の手巻きムーブメントが搭載されていることも時計マニアにとっては高ポイントだと言えよう。
両者に共通することは、上品なデザインにマッチする小ぶりなサイズ感に加えて、信頼性の高い他社のムーブメントが搭載されていたことにある。さらには、往年のヴィンテージウォッチに比べて、防水性能における不安がかなり解消されているため、日常使いにも適していることも長所として見逃せない。このほかにも気になるモデルがあれば、プレミア価格になる前に押さえておくのも得策だろう。
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■連載「ヴィンテージウォッチ再考」とは……
インターネットやSNSの普及からあらゆる時代の時計が簡単に入手できるようになった。そうはいったところで、パーツの整合性や真贋の問題が問われるヴィンテージウォッチの品定めは一筋縄ではいかない。本連載では、ヴィンテージの魅力を再考しながら、さまざまな角度から評価すべきポイントを解説していく。