連載「意欲的新作ウォッチ」の第130回は、ロジェ・デュブイの「エクスカリバー モノバランシエ ソラヤマ」を取り上げる。
創造の遥か上をいく、モアレ効果を創出したタイムピース
革新のテクノロジーと伝統のクラフトマンシップ、そしてアヴァンギャルドかつ緻密なデザインによって、常識を打ち破るハイパーオルロジュリーの創造を目指すロジェ・デュブイ。その一環としてスタートしたアーティストとのコラボレーションモデルは、心が躍るダイナミックな作風が話題を呼んでいる。
今回タッグを組んだのは、「写実表現技法のゴッドファーザー」という異名を持つ現代美術家・空山基。1978年から制作が始まった代表作「セクシーロボット」は、女性の人体美をロボットに取り込んだユニークな作風が熱狂的なファンを獲得し、エアブラシを駆使した超絶技法は多くのクリエイターに影響を与え続けている。
コラボレーションにおいてもエポックメイキングな作品をいくつも残しており、1999年に氏がコンセプトデザインを手掛けたソニーのエンターテイメントロボット「AIBO」もそのひとつだ。
氏が手掛けたタイムピース「エクスカリバー モノバランシエ ソラヤマ」は、故ロジェ・デュブイへのオマージュが込められたもので、2022年4月に発表された自動巻きムーブメントCal.RD720SQを搭載した「モノバランシエ」のシリーズから登場。
結論から述べると、このタイムピースの最大の特徴とは、スケルトン文字盤の左上から覗くモアレ効果を創出した特別なマイクロローターにある。インスピレーションの源は、ストッキングの視覚効果であり、セクシーロボットで作り出すような光と動きの戯れを表現したという。
モアレ効果とは、線と線の干渉によって生じる模様のことで、2本の線または格子が重なって生じる。このモデルの場合、固定されたフリンジサファイヤガラスと、精密なエングレービングが施された動くメタリックパーツによって、モアレ効果を生み出している。これはつまり、ロジェ・デュブイが抱える職人の技術と現代美術家・空山基の創造力がもたらした化学反応だといえるだろう。
もうひとつの特徴に挙がるのは、故ロジェ・デュブイへのオマージュを捧げたスターシグネチャーにある。従来のスターがシャープですっきりしたラインとアングルであるのに対し、空山基が新たに考案したデザインは、セクシーロボットと同じように曲線的な丸みを帯びている。星の中心部にもアレンジを加え、このモデルでは五角形を採用した。
時計全体の存在感を高めるために、ロジェ・デュブイでは史上初となる、フルポリッシュを施したケースとブレスレットを採用。これによって一切のコントラストを消し、すべての角面をわずかにカーブさせることで独特の視覚効果を獲得した。このような工夫を凝らしたタイムピースは、非常に厳格な基準として知られているジュネーブ・シールの認定を受けている。
「驚きがなければ創造ではない。前例がないからこそ興奮する」という空山基の言葉通りに仕上がった「エクスカリバー モノバランシエ ソラヤマ」は、また見ぬ地平を目指して、限界を突破したからこそ生まれたエクストリームウォッチだ。両者の妥協知らずのコラボレーションは、時計製造とアートとの架け橋と呼ぶに値する完成度に到達している。
問い合わせ
ロジェ・デュブイ TEL:03-4461-8040
■連載「意欲的新作ウォッチ」とは……
2022年も高級ウォッチブランドから続々と届く新作情報。その中から、新鮮な驚きや価格以上の満足感が味わえる“活きのいい”モデルを厳選! 時代を超えて輝き続ける、腕時計のパワーを改めて感じて欲しい。