PERSON

2026.05.18

“三笘の1ミリ”を最も近い場所から見た男⑥

サッカー日本代表FW・前田大然が初めて明かす、挫折と戦い。2022年W杯カタール大会の秘話も含め、初自叙伝「がむしゃら なぜ俺は、こんなに走るのか――。」より一部抜粋してお届け。6回目。他の記事はコチラ【特集 2026FIFAワールドカップ】

”三笘の1ミリ”を最も近い場所から見た男⑥
前田大然/Daizen Maeda
1997年10月20日大阪府生まれ。5人きょうだいの2番目(長男)。2016年に松本山雅FCに入団し、翌年に水戸ホーリーホックへ期限付き移籍。松本に復帰後、マリティモFC(ポルトガル)を経て、2020年8月から横浜F・マリノスでプレー。2021年、J1リーグで初の得点王を獲得。代表では、2021年に東京五輪に出場。2022年にはカタール・ワールドカップに出場し、クロアチア戦でワールドカップ初ゴール。

“三笘の1ミリ”を目撃する

スペイン戦での決勝ゴールの場面は、実はだいぶ悔いが残っている。

右サイドでボールを持った(堂安)律からのパスがゴール前に入ってくる。同点に追いついた数分後で日本の攻勢が続いていた時間帯だったので、その勢いで逆転ゴールを奪う気満々だった。

それなのに、動き出しが少しだけ遅れて間に合わなかった。あのタイミングでパスが出てくることを信じきれずに、ワンテンポだけ待ってしまった。信じる力がもっと強ければ、自分がボールに届いて得点できたはずだ。

『間に合わなかったー』

心の中でそう叫んだ。

僕にとっては、必死に伸ばした左足がボールに届かなかった時点でこのプレーは終わっている。

スペインのゴールキックから試合が再開する未来しか見えていない。

それなのに次の瞬間、なぜか(田中)碧がボールと一緒にゴールの中にいた。

『???』

何が起きたのか、わからなかった。

自分の背後に(三笘)薫がいることすら気づいていないのだから、あのボールに追いついてゴール前に折り返しが来る展開を想像できるわけもない。

VAR判定を経て、正真正銘のゴールになった。

自分自身を信じて走れなかった悔いはあるけれど、チームメイトが決めたことへの悔しさは一切ない。それがW杯という舞台の不思議なところだ。

チームとしての逆転ゴールが生まれたことに興奮したし、うれしかった。薫も碧もあきらめずに走っていたから本当にすごい。

試合直後はもちろんのこと、時間が経ってからもあの得点シーンが映像として流れる機会は多い。

そのたびに滑り込んでいる自分の姿も映るので、ありがたい(笑)。

かの有名な“三笘の1ミリ”を最も近い場所から見たのは、僕だ。

※7回目に続く

TEXT=前田大然

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