いよいよ2026年6月に北中米W杯が開幕する。これまでベスト8にも出ていない国が「優勝」という目標に挑もうとしている。率いるのは森保一監督。

「日本人の誇り」を背負って
日本サッカー史上、初めてW杯2大会連続で指揮を執る。他国からは傲慢とも受け取られ、国民からは期待と容赦ない批判が寄せられている。監督が背負うものの重さは計り知れない。
泰然としているように見える森保監督だが、重圧を感じていないはずがない。
「日本代表を応援してくれる人たちがいっぱいいらっしゃるので、その期待を背負っているという意味では、すごくプレッシャーがあります。みんなに喜んでもらいたい、自分でも成功したいと思っています。一方で、我々の戦いをとおして、日本人が日本に誇りを持てるようにしたい。今は、そちらが強いと思います。日本人の自己肯定感はデータで見ても低いらしい。それをサッカーで変えたいと思っているんです」
これまで敗戦した時に表情を変えなかった森保監督だが、その心中は違ったようだ。
「落ちこみますよ。誰よりも、とは言いませんが、誰にも負けないぐらい勝ちたいと思ってやっていますから」
それでも100試合を超える公式試合を指揮できたのは、その哲学が揺るぎないからだ。
選手は「俺が王様」。「和して同ぜず」
「試合の結果は過去のこと。過去をどう未来に生かすか。成果と課題を常に未来にポジティブ変換する。こう考えられるのは自分の性格かもしれません」
負けるともちろん、勝っても試合内容について常に批判される。ストレスはどうなのか。
「結果を考えすぎるとストレスになります。自分にできる最高のこと、全力を出し切れているかどうかという点に集中していれば、余計なストレスは感じないんです。最高のレベルでサッカーに携われているのは本当に幸せなこと。だからプレッシャーはあっても、ストレスはありません。強がっているわけではなくて、やれることは全力を尽くすだけですから。自分にコントロールできないことを深く考えても仕方ないんです」
それでも森保監督は、監督という仕事が、決して「楽しい」だけではないと言う。
「日々、充実していますよ。監督というのは、今の自分にやれる仕事の優先順位としては一番なので。だけど監督業が楽しいかと言うと、そうじゃないと思います。本当にやりたいのはプレーヤーですから(笑)」
そのプレーヤーとしての実績は、今の欧州で活躍している選手のほうが上。また過去に監督として3度のリーグ優勝経験があるにしても国内の実績。しかしチームを上手くまとめ、前を向かせる手腕は傑出している。
「選手たちは、『俺が一番、俺が王様』と思っていていい。同時に、仲間のために、チームのために、日本のために戦えると思えるようにアプローチしていきたいと思っています」
森保監督はチームづくりを「和を以(も)って貴(とうと)しと為(な)す」とするのではなく「和して同ぜず」という考えでまとめている。
そして歴代の日本代表監督のなかでも最高の勝率を上げてきたのは「日本人らしさ」と「グローバルスタンダード」の統合というコンセプトのおかげだったという。
「日本らしく、チームとして連携、連動できる。察する能力をお互いが分かち合って、つながって組織として戦う。でもそれだけでは世界に勝てない。世界基準の個の力を身につけた、培った日本人がいて、その個々が強い組織として戦えば、世界で勝つ可能性はより上がっていく」
負傷者が相次ぎ、戦力確保には苦労しそうだ。そのなかでも森保監督の下「日本らしさ」で勝っていくに違いない。

1968年8月23日、長崎県生まれ。現役時代は日本代表MFとして活躍。引退後、サンフレッチェ広島の監督として3度のJ1制覇。2018年に日本代表監督就任。前回W杯で強豪を撃破。2度目の今回はさらなる躍進が期待される。

