テレビ、出版、雑誌と、あらゆるメディアで一世を風靡し、時代を席巻した細木数子。2016年、六星占術を正式に継承したのが細木かおりさんだ。一度は強く断った“後継者”という役割を、なぜ引き受けたのか。そこには、母の素顔を知ったこと、そして「多くの人を幸せにしたい」という信念の継承があった。#1/#2

細木数子の背中を見て知った、成功の裏にあった葛藤
強烈な個性と発言で時代を席巻した細木数子。2021年、83歳の時に激動の生涯を閉じた。
「昭和13年生まれの母は、戦後、家族を養うために水商売の道に入り、それなりに成功を収めました。しかし30代で詐欺に遭い、数億円の借金を背負います。結婚もわずか3ヵ月で離婚。なぜ自分の人生はこんなにも浮き沈みが激しいのか。それを解き明かしたいと、占術の道に入ったそうです」
44歳で出版した著書はベストセラーに。歯に衣着せぬ物言いという強烈な個性と、数多くの相談者を救ってきた実績も相まって、細木数子の名は一気に世間へ広まった。テレビ番組は軒並み高視聴率を記録し、毎年発行される『六星占術によるあなたの運命』シリーズは累計発行部数1億部を突破。その活躍は目を見張るほどだった。
「母から『後継者になってほしい』と最初に言われたのは、今から17年前。母が70歳、私が30歳の時です。もう、全力で断りました(笑)。当時は子どもたちもまだ小さく、余裕がなかったこともありますが、何より母のようにはとてもできないと思ったので」
大きな成功の一方で、細木数子はすさまじいバッシングにもさらされていた。世間からは“何を言われても動じない強い人”に見えていたが、その裏では深い葛藤を抱えていたという。
「正直、私には、あの状況はとても耐えられないと思いました。子どもの頃、『人のことを思って一生懸命やっているのに、どうしてあんなにひどいことを言われるのだろう』と、傷ついた記憶もあります。同じ想いを、自分の家族にさせたくない。その一心で頑なに断り続けていました。
でも、母の『細木数子になってくれと言っているのではない』という言葉と、本気度に触れ、後継者になる決心をしました」

1978年東京都生まれ。母・細木数子のマネージャー兼アシスタントを経て、六星占術の継承者となる。六星占術と自身の人生経験を活かし、経営相談から恋愛、家族の人間関係の相談まで幅広く人生に寄り添うアドバイスをする。対面にて直接相談者の話を聞く個人鑑定に加え、延べ1,500万人が利用する六星占術公式占いサイトを監修。毎年出版する『六星占術による あなたの運命』など著書多数。YouTube「細木かおりチャンネル」も好評。
「多くの人を幸せにしたい」という信念を継ぐ
細木数子が示した“本気度”。それは、何十年もともに歩んできたスタッフでさえ同席を許されなかった個人鑑定の場に、かおりさんを伴ったことだった。そこには、テレビで見る姿とはまったく異なる母・細木数子の顔があったという。
「テレビとはまったく違う母の姿を目の当たりにしました。悩みや迷いを抱える相談者とまっすぐに向き合い、その人生を陽転させよう、開花させようと必死に取り組む姿に、胸を打たれました。
母の言葉を聞いて笑顔で帰っていく方や、アドバイスどおりに行動し、幸せをつかんだと報告に来てくださる方も多く、六星占術が本当に人の役に立っていることを実感したのです。
その時、母が、多くの人を幸せにしたいという信念をもって、人生のすべてをかけてきた六星占術を世に残さなければいけないと、覚悟が決まりました。それに、私が後を継ぐことは、お世話になった母への恩返しになるとも思ったんですよね」
実は、かおりさんは細木数子の実子ではない。細木数子の妹の娘、つまり姪にあたる。それでも幼少期の3年間をともに過ごし、その後も折に触れて顔を合わせるなど、ふたりの距離は近かった。細木数子は早くから、かおりさんの資質を見抜いていたのかもしれない。
「私は複雑な家庭環境で育ち、母の勧めもあって19歳で結婚しました。辛いことも苦しいことも経験してきました。もしかすると母は、いずれ後継者になることを見越して、『早く結婚しなさい』『苦労は必要』と言っていたのかもしれません。
占い師に必要なのは、占術だけでなく、人生経験。そうでなければ、悩んでいる人に本当の意味で寄り添うことはできませんから」
AI時代でも対面鑑定を続ける理由――“聞く力”の重要性
六星占術が確立された時代と比べ、いまはAIによる自動で鑑定するという占いアプリも増えた。24時間365日対応でき、効率も収益性も高い。いわゆる“タイパの良さ”は、容易に想像できる。
それでも、かおりさんが対面での個人鑑定を重視し続けているのは、母・細木数子の教えがあるからだ。
「母は、ズバズバ言いたいことを言う人と思われていたかもしれませんが、個人鑑定ではまず、相談者の言葉にじっくりと耳を傾けていました。表情や声音からも気持ちを読み取り、何を求め、何を必要としているかを知ろうとしていたのです。
そうでなければ、的確なアドバイスはできませんし、実際にお目にかかるからこそ伝えられることもあると考えていました。私も、その通りだと思います」
悩みを抱える人にとって、胸の内を吐き出し、それを受け止めてもらうだけでも心は軽くなる。“聞く耳を持つこと”こそ、人を幸せにする第一歩なのかもしれない。
とはいえ、悩みや迷いを抱える人と真剣に向き合うことは、なかなか負荷の大きい仕事だ。かおりさんは、どのようにメンタルを保っているのだろうか。
「おっしゃるとおり、真剣に向き合えば向き合うほど、心身ともに疲れます。だからこそ、睡眠をしっかり取ることと、夢中になれる趣味を持つことを大切にしています。いまハマっているのは韓国ドラマとアーティフィシャルフラワー。無心になれる時間が、気持ちをリセットしてくれるんです」
多くの人を幸せにしたいという一念で、細木数子が築き上げてきた六星占術。それを自分の代で終わらせるのではなく、次の世代へと引き継ぐのも、かおりさんの使命だ。
「私の宿命大殺界は晩年に訪れます。その前に、きちんと引き継げる道筋を整えておこうと、いまから準備しています」

