グルメ活動家の見冨右衛門氏が選び抜いた最高の手土産とは!? 旨いは当たり前、その先をいく3品を紹介する。【特集 最高の手土産】

相手の夢にまで寄り添うのが極上の手土産
1万軒以上の飲食店を訪問し、そのすべての食事歴を記録・公開してきた、クリエイティヴディレクター・グルメ活動家の見冨右衛門氏。その豊富な知識をもってカブ&ピース社長・前澤友作氏の「食のブレーン」もつとめてきた人物だ。旨いものは星の数ほど知っている見冨氏だからこそ、手土産を選ぶ際に意識していることがある。
「ただ旨い、流行っているモノを選ぶよりも、まずは相手のことを考え選ぶようにしています。その方はどんな人を尊敬していて、どんな趣味をもっていて、出身地はどこか。仕事ではどんな場所に行き、どんなことをしているのか。普段の会話のなかに手土産を選ぶヒントは隠れています。モノそのものよりも『どれだけ自分のことを考えてくれたのか』、その気持ちにこそ、受け取る側はもっとも価値を感じる。だから相手のことをとにかく思い出し考え、差し上げる方の背景や物語に重なるものを選ぶこと。そうすることで、きっとその方にとっても忘れられない一品になるのではないでしょうか」
見冨氏も実際に、忘れられない手土産を受け取ったことがある。それが日本唯一の金平糖専門店、緑寿庵清水の「究極のヴォーヌ・ロマネ ヴァン ルージュ(赤ワインの金平糖)」。最高峰のピノ・ノワールを生み出すと言われているヴォーヌ・ロマネのワインを贅沢に染み込ませた金平糖だ。
「私はワインバーを経営しているのですが、永遠の憧れはやはりロマネコンティです。ですが、もしも、実際に手土産として持ってきてくださったら恐縮して受け取れません(笑)。ラベルがDRCに少し似ている通称“ロマネ金平糖”は、贈り主の方が、私の憧れと背景を読み取って選んでくださったことが伝わってきて、うれしかった一品です」
見冨右衛門が選ぶ究極の手土産3選
1. ノーレーズンサンドイッチ(東京)
レーズン嫌いこそハマる!? レーズンサンド

軽いホイップにつつまれた小粒のレーズンの味わいが爽やかなレーズンサンドと、キャラメルクリームとイチジクのサンドのセット。¥2,680(ノーレーズンサンドイッチ グランスタ東京店 TEL:03-6206-3615)
小さな小箱のなかにはレーズンサンドと、季節ごとに変わる果物のサンドが3つずつ。フードエッセイストの平野紗季子氏の「レーズンは嫌いだけれどレーズンサンドは食べてみたい」という願いから着想して生まれた「レーズンとそれ以外のサンド菓子」だ。
「実はレーズンはちょっと苦手、レーズンサンドのよさもまったくわからなかったのですが、この『ノーレーズンサンドイッチ』に出合って価値観がひっくり返りました。サクッと軽い生地とクリームのバランスが絶妙、甘すぎないところもよく、苦手を笑顔に変えてくれた平和的でセンスのいいスイーツです」
今の季節の果実のサンドは、イチジク。スパイスと赤ワインで煮込んだキャラメルクリームとイチジクをシナモン入りのサブレでサンドし、イチジクの粒々の食感が楽しい。「レーズンとイチジク、どっちが好き?」という会話も弾む、場を和ませる逸品だ。
2.こよみどら/九九九(東京)
毎月、変わる季節のお楽しみ餡

これまでに登場した合わせ餡は、枝豆餡、金柑餡など。事前予約は前日15時まで。5個入り¥2,160(九九九 TEL: 03-6447-0333)
2024年に六本木にオープンした、できたての和菓子と淹れたてのお茶を提供する茶寮「九九九(くくく)」。その作りたてのどら焼きはテイクアウトが可能。ちょっとしたお持たせにもいいと、和菓子好きの間で評判になっている。
「季節ごとになかの合わせ餡が変わるので『今月は何が入っていると思います?』というちょっとした会話ができるのがいいですね。皮は小麦粉ではなく米粉を使ったグルテンフリー 。ふわふわで軽くて『どら焼きの皮』として今まで味わったことのないものです」
写真の合わせ餡は、栗。甘さは控えめで、栗そのものの優しくほのかな甘さが、口の中に余韻として残る。なかの餡は1ヵ月ごとに変わるが、素材の仕入れ次第なので、明確な変更時期はない。「今日の餡はなんだろう」と、贈り主もまたワクワクすることができるはず。
3. ブルー ボックス ケーキ/TIFFANY & CO.(東京)
ジュエリーのように美しいタルト

ティファニーの精緻なジュエリー制作を彷彿とさせる庄司氏のテクニックで美しく花咲くタルト。テイクアウト限定、予約制。¥13,500(ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク TEL:0120-488-712)
ティファニー銀座4階の「Blue Box Café by Natsuko Shoji」のマンゴータルト。代々木上原のイノベーティブフレンチ「ete」のシェフでパティシエでもある庄司夏子氏のタルトケーキが、ティファニーのブルー ボックスにあしらわれた逸品だ。マンゴー以外のフルーツは季節ごとに変わっていく。
「彼女のシグネチャーであるタルトを、ブランドの象徴色とともに再構築した一品です。マンゴーで表現された咲き誇るバラは、食べる芸術そのもの。季節ごとに異なる果実が彩りを添え、まるで絵画を味わうような体験が広がります。ティファニーのブルー ボックスを開ける瞬間の高揚感が味でも再現されているところが素晴らしい。まさに宝石的な見た目も物語も完璧にデザインされた、アートとしての手土産です」
相手に渡すショッピングバッグ内には生花の白いバラの花びらが添えられる。特別な日に贈りたい極上の手土産だ。
見冨右衛門/Mitomi Emon
1980年千葉県生まれ。レストラン経営や飲食事業プロデュース・コンサルティングを行う会社、はらぺこの代表。自身が経営する飲食店は「鳥匠いし井ひな」「鶏焼き肉囲」「ウブ」「九九九」「PER TE」「4LDK」など。グルメを切り口に、企業にさまざまなソリューションビジネスを提供する。著書に『一流飲食店のすごい戦略』。

