新業態や新しい食べ方の提案など今までにない視点で次々に飲食店をプロデュースする、ダイニングイノベーション代表の西山知義氏。アンテナに引っかかったものはすぐに体験に移すのが流儀だ。「旅先などで感動した味を家族や仲間と分かち合いたくて、取り寄せすることが多い」と話す西山氏が「お店の味とほぼ同じ」と太鼓判を押す再現度の高いお気に入りのお取り寄せを教えてもらった。【特集 最高のお取り寄せ】
名人の味を家で楽しめる幸せ
基本的にはキャンプの時に炭火で焼いて楽しめるお肉や魚介の取り寄せが多いという西山知義氏。これまで国内外でさまざまな飲食店を展開し、プロデュースのヒントを得るために国内外の名店を食べ歩いているだけに、最高の食材や名店、名品の情報だけでなく、産地や生産者と強い繋がりも数知れずある。
「最高の食材をキャンプ料理で楽しむのが好きなんです。恒例なのは房総から取り寄せる300g超えの大きなアワビ。バター醤油の味付けでご飯に乗せるとみんな大喜びで食べてくれます」
その場にいる人たちが笑顔になる、話が弾むような逸品を見つけることは西山氏自身の喜びでもあるという。
完成品の場合は、「お店に食べに行って感動した味であることはもちろんですが、家で食べた時にお店の味とほぼ違わない、と思える再現度が高いもの」と西山氏。
遠方だったり、予約が取りづらかったりと訪れにくい店であればあるほど、「名人の味を家族と一緒に食べられる幸せで取り寄せのありがたみが身に染み、感動も深まります」。
西山知義のとっておきのお取り寄せ3選
1.蛤の新しい楽しみ方を体験
日の出「はまぐり鍋セット」
「貝が主役になる鍋を食べたことがなかったので、新たな美味体験だった」と西山氏を感動させた桑名の老舗料亭のこの鍋。もちろん蛤は入手困難な桑名産の天然蛤だ。蛤は一気に鍋に入れるのではなく、都度都度入れて「香り、食感の絶好のタイミング、ミディアムレアを見極めて“今だ!”と口に運ぶのが楽しい」と西山氏。
蛤の旨みが溶けだし、食べるほどにだしの味も濃度を増していく。
お店ではこの旨味と香りたっぷりのだしで〆の雑炊に仕立ててくれるが「家ならうどんなど麺類も簡単でお薦めです。お店同様に蛤の風味をさらに引き立てる三つ葉・ネギ・豆腐の用意もぜひ」。
2.ひと口目から思わず息を呑むラーメンの最高峰
飯田商店「鶏出汁醤油らぁ麺3食セット」
飯田商店は言わずと知れた要予約、しかも予約至難のラーメン店。
「やっと予約が取れて、今年お店に行くことができましたが、見た目も味わいもこんなに綺麗なラーメンは初めて。衝撃を受け、以来虜になっています」
鶏ガラだけでなく黒さつま鶏、比内鶏、名古屋コーチンなど銘柄鶏の丸鶏でスープをとり、冷蔵庫で冷やして分離した油の上澄みを取り除いたスープに、別で丁寧にとった鶏油(チーユー)で香りとコクを加えている。
「鶏だけでなく、水からこだわり鰹節も醤油もすべて吟味厳選されていることがスープを一口飲んだだけでわかります。表面はつるりとしながら噛むとグッと食感を感じる麺もどのように味と香りを纏わせたいかを考え抜かれている」と絶賛。
作り方をしっかり読み、麺の茹で方には細心の注意を払って、できるだけ麺線を整えて美しく器に盛り付けお店で出てきた時の感動を再現しているそうだ。
3.京都の人気店の味を寸分違わず堪能できる
肉割烹 安参「テールスープ&テール煮込み」
肉割烹発祥の地といわれる京都にあって、その草分け的存在として知られる「安参」。西山氏の京都の別荘近くにあり、昔から通っているという。
「切り立てで瑞々しい肉の刺身や焼き物、手間ひまかけた煮込みなど、味もさることながら親子でやっている店の雰囲気も抜群。しばらく行けないと恋しくなって取り寄せています」
秘伝の味噌と酒のみで煮詰めたデミグラスソースとともに煮込まれたテールともつ煮込み。ソースの味はもちろん、ホロホロととろけるゼラチン質の食感は一度体験すれば忘れられないという。
3日間ひたすら煮込んだテールスープは「煮込みよりもあっさりとしながら、旨みたっぷり身体に染み込むスープそのものの味が楽しめます」。
煮込みもスープもお酒のつまみからご飯やパンのお供としても最高のお取り寄せ。
「温めるだけで、手間暇かけたお店そのままの味を堪能できるのは嬉しい限り。頭のなかでお店の店主の顔や雰囲気を思い描きながら楽しむ我が家の取り寄せの超定番です」
西山知義/Tomoyoshi Nishiyama
1966年東京都生まれ。1996年に「牛角」1号店を開業し、7年間で1000店舗に。2013年ダイニングイノベーションを設立。2023年7月に国内外12ヵ国で400店舗達成。