1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第23回は黒龍酒造の八代目蔵元・水野直人。「人生を彩る眼鏡#23」
PERSON 73
黒龍酒造 八代目蔵元/水野直人

生産地にまで行ってこそ感じられる魅力がある
ワインの熟成を応用した大吟醸酒「黒龍 大吟醸 龍」を1975年に発売。大吟醸の市販化に成功した先駆け的存在である、福井の黒龍酒造。八代目蔵元の水野直人さんは、その先代の取組みを発展させ、日本酒の価値を高める革新的な取り組みを行い、業界のトップを走り続けている。
「サングラスをかける機会は結構多いですね。何本か持っていて、ゴルフやドライブなど用途によって使い分けています。昔はよく釣りをしていたので、偏光レンズのサングラスもかけていました」
仕事柄海外へ行くことも多く、そんなときは強い日差しから目を護るために濃いサングラスが欠かせない。だが今回は「これまでと少し違う雰囲気で」と、EYEVANの定番モデル「Webb」に薄いカラーレンズが入ったサングラスをセレクトした。
「こうした薄めのサングラスも、べっ甲柄も初めてなので新鮮です。目元が透けると、見た目に安心感がありますね。近年は観光施設をつくったこともあり、屋外でお客様とお会いすることも多くなっているので、そうしたシチュエーションにも良さそうです」
その施設とは、2022年に福井県永平寺町にオープンさせた「ESHIKOTO(エシコト)」、そして同敷地に2024年に開業したオーベルジュ「歓宿縁 ESHIKOTO」だ。九頭竜川沿いの雄大な自然を一望できるこの場所で、福井の酒食文化や伝統工芸の魅力を発信している。
「福井はモノ作りの血が流れている工芸の街。でも宣伝があまり得意でなく、埋もれている生産者も多い。ですから、このESHIKOTOで福井のお酒はもちろん、食や工芸品を提案することで、訪れた人と生産者をつなぐハブになりたいと考えているんです。私はお酒が好きですから、たとえばフランスへ行ったならワイナリーのあるブルゴーニュまで足を延ばしますが、やはり生産地にまで行ってこそ感じられる文化や魅力があると思っています」
眼鏡も福井の地場産業であり、アイヴァンのフレームもこの地でつくられている。そのほかにも和紙や刃物、漆器など、多様な地場産業が根付く土壌を作っているものとは。
「水ではないでしょうか。水が豊富であることや柔らかな水質、湿度の高さなど、水にまつわることがこの地の地場産業に関係していると思っているんです。我々は蔵の地下から採水する九頭竜川の地下水を使ってお酒を造っていますが、お客様の好みが多様化しても、黒龍ブランドのお酒についてはこの地下水しか使わないと決めています。米と水へのこだわりは我々の原点であり、これからも変わることはありません」
時代が変化しても、黒龍酒造は一貫して高い品質と誠実な酒造りを貫いてきた。
「かつて一升瓶で5,000円の大吟醸を販売したとき、“日本一高い酒”と新聞に取り上げられたこともありましたが、やはり価格にはそれだけの理由があり、手間暇がかかっています。ですから、お酒も眼鏡も、まずは作り手がどれだけの思いやこだわり、技術をもって生産しているかを多くの方に知ってもらい、日本の文化を応援したいと思っていただけたら嬉しいですね。そして、ジャパンブランドが世界で認められ、日本のものづくりを日本の方たち自身が誇りに思えるようになることを心から願っています」
水野直人/Naoto Mizuno
1964年福井県生まれ。東京農業大学醸造学科卒業後、協和発酵(現、協和キリン)を経て、1990年に黒龍酒造に入社。2005年、同社社長に就任。2022年に福井県永平寺町に食と文化の発信施設「ESHIKOTO」をオープンさせた。
問い合わせ
EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972