PERSON

2025.05.20

連続起業家・福田淳が200島余りを巡り、旅し続ける理由

まだまだ謎に包まれた男、福田淳(あつし)。なぜだかいつも周りの人間から頼られ、案件を持ち込まれ、奔走する。そして常に国内外を飛び回り、一日一日を本気で楽しむ。タブーをタブー視せず、変化を模索する福田淳という男の連載、第4回目は月に一度は必ず旅に出るなかでやめられない無人島巡りについて。

無人島で火おこしをする福田淳氏

島を旅すると脳がどんどん若返る

なぜ人は島に惹かれるのか。僕が思うに、人間本来の在り方として、大地に触れることが必要だから(アーシングって言います)。

僕は沖縄にも拠点を持ち、それ以外にも時間を見つけては、世界中を旅しています。そして飛行機や船からなにやら小さな島を見つけたら「あそこはなんだろう!? 行ってみたい!」となって、一度そう思ったら止められません。無人島だろうとなんだろうと、船をチャーターしてとにかく行ってみる。

先日はフランス・エズの城の上にあるホテルから見える島にどうしても行ってみたくなったのですが「あそこはフィレンツェの大富豪、メディチ家の私有地だから絶対に行ってはなりません」と、ものすごい勢いで現地の人に止められました(早朝こっそりSUPで行けないかと妄想しました)。

都会では地面に直接触れることはほとんどありませんよね。コンクリートの上を革靴で踏み締め、アスファルトに囲まれた生活をしている。でも島に行くと裸足で砂を踏み締めたり、手で岩を触りながら山や崖を登ることもある。大地を感じ、風に吹かれ、自然の音に包まれる。そういう瞬間こそが、人間の本質に戻る時間だと思うんです。だから人は、少なくとも僕は、強烈に島に惹かれるのです。

地図のない冒険は無人島でしかできない

これまで訪れた島は国内外で200ほど。どの島でもビーチに寝転んでのんびり、なんて過ごし方はほとんどしません。とにかく歩くんです。どんな地形か、どんな人が住んでいて何を生業にしているのか、自分の目と足で確かめる。とにかく冒険するんですよ。無人島だろうとも「本当に人はいないのか」「人が住んでいた形跡はないのか」「どんな生き物がいるのか」を確かめなければ気が済まない。

無人島の冒険は本当に痺れますよ。だって今の世の中、地図のない旅なんてありえないでしょう? 今は知らない場所だろうとスマホひとつあれば楽々と旅ができる。でも、そもそも地図がつくられていない無人島だと、そうはいきません。冒険ができるのは無人島だけだと言っても過言ではないんです。

ある無人島に船をチャーターして行った際に、留めておいた船が流されそうになったことがありました。僕らは島にいて、船長も海に潜って自由に過ごしていましたが、その間に錨がはずれて沖に流されていく。「お〜い、船長、大変だ〜!」と島から大声で叫んで、皆で海に飛びこんで泳ぎ、必死に船を引き戻しました。そういう想定外のヒリヒリした体験、命懸けでもありますが、だからこそ心も脳も活性化されるんです(砂浜にHELPって書こうと大きめの枝を探しましたよ!)。

ちなみに沖縄の離島を旅している時に、地元のおじいとおばあに「ハブに噛まれたら薬ってあるの?」と聞いてみたら「そんなのないよー」と言われて、なるほど、とキリリと身が引き締まる思いがしたものです(無人島でも電波は欲しい!)。

そう、旅を続けることは脳によい刺激を与えてくれます。新しいものを受け入れなくなった時、人は退化していく。だから僕は、地図のない無人島で肉体と五感をフルに酷使して、これからも未知の世界に飛びこんでいきたい。

ちなみに最近、人の名前が思い出せないということが続き、不安になって病院に脳のテスト(神経心理検査)を受けに行きました。1時間で100の問いに答えるものですが、その結果は「異常なし、超健康脳」でした! やっぱり日々の刺激的島遊びが脳によかったのかもしれませんね。

蛇足ですが、ワイルドな島旅が好きだといっても、寝る場所やトイレは清潔なほうがいいので、もっぱら無人島へは日帰りです。夜は街のホテルに泊まっちゃいます(ワイルドな性格ではない!)。

海中の福田淳氏

類は友を呼ぶ、旅は友を呼ぶ

かつて僕は、シルク・ドゥ・ソレイユの共同創設者ジル・サンクロワさんに連れられて、メキシコ・カンクンから船に揺られ1時間ほどでたどりつく、コスメル島を訪れたことがあります。エンタテインメントの世界から引退するためにカナダからメキシコに来たはずのジルさんでしたが、産業もなく廃れていくその小さな島を見過ごせず、驚いたことに島を丸ごと全部、サーカスの舞台にしてしまったことがありました。

観光客が港に降りたてば、音楽が流れ、蛇に扮した人が怪しく誘う。海辺のレストランに行けば、ジプシーに扮した人がアコーディオンを奏で、ともに歌おうと声をかけてくる。そういう人たちに導かれ最後は手作りの大きなステージにたどりつき、そこでサーカスを見るんです。夢なのか現実なのかわからない、エンタテインメント島。こんな島旅もあるんだと驚きましたね(島全部が舞台って規模感がすごい!)。

皆さんも行ってみたい島や場所が本来たくさんありますよね? 年に1、2回の旅行では、とうてい人生の残り時間では行ききれません。だけど、全部行くぞ! というつもりで毎日を生きていると行動が変わってきます。現に僕がそうで、即行動です。旅先で出会う旅好きの方々は、仕事でも活躍していたりするので、「あの島が面白い」とか「あの島、まだ行ってないんですか?」なんて会話が弾み、どんどん行きたい場所が増えて、もっともっと生きたい! と人生が希望だらけになるんです。

僕は先日、伊豆諸島最南端、崖に囲まれた日本一上陸困難と言われている島「青ヶ島を知ってる?」と言われ、「どんなところなんだろう!」とワクワクしながら、今旅を計画中です(八丈島からヘリで行くんです)。あと島といえば南国を連想しますが、北の国の夏も最高なんです。旅好きの知り合いもたくさん誘って、デンマークのとある島にも行く予定。類は友を呼ぶ、旅は友を呼ぶ、ですね(行ったことない場所に誘われたから行くってことありません?)。

皆さんも自分の五感をフルに使って人生を全部、楽しんじゃいましょう。

Editor’s Note|探求心こそが健康脳の秘訣

今号は福田さん流の旅についてうかがいました。「旅に必ず持っていくものは?」という編集部の質問に、福田さんは「特にないですね」と即答。下着を忘れ、終始水着でごまかしたこともあるくらい、日頃は身軽な旅をしているようです。

「昔、遺伝子キットで自分の遺伝子を調べた時、遠い先祖にハイダ族がいるとわかったんです。現在はカナダ南西部の旧クイーンシャーロット諸島(現在はハイダ・グワイ)にいる民族なので、そのあたりにも自分のルーツを見つけに、ぜひいつか行ってみたいです」

砂浜に寝そべる福田淳氏

福田淳/ATSUSHI FUKUDA
1965年大阪府生まれ。ソニー・ピクチャーズを経て、ソニー・デジタル・エンタテインメント創業。同社退職後、自身の会社スピーディ設立。LAでアートギャラリー、リゾート開発、沖縄で無農薬ファームなどの事業を行う。『好きな人が好きなことは好きになる』など著書多数。

TEXT=安井桃子

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