仕事が上手くいく人といかない人の差はどこにあるのか? それは「いかに他者への想像力を発揮し、意中の人にモテるかが鍵」と語るのが、「sio」オーナーシェフの鳥羽周作氏だ。多くのクライアントに選ばれ続けてきた鳥羽氏が、そのノウハウを伝授する『モテる仕事論』より一部を抜粋・再編集して紹介する。第2回は、ビジネスにも恋愛にも必須の“観察力”について。【その他の記事はこちら】
お客様に「モテる」コツ
僕は店のお客様にも、もちろん細かく神経を遣うし、スタッフにもいつもそうするように言っています。特にカップルには気を遣います。恋愛には、いろんな局面があるからです。
今そのカップルがどういう局面にあるかは、お客様を見れば感覚的にすぐわかります。男性が女性を口説こうとしている。付き合い始めで、すごく盛り上がっている。倦怠感があり、別れ話が始まりそうだ等々。
なぜカップルのムードに敏感かというと、料理を出すタイミングを計っているからです。どんな場合でも、二人の空気の邪魔にならないように料理を出さなければならない。それはホスピタリティの鉄則だと僕は思います。
僕やうちのスタッフは、お客様がお見えになると、失礼にならない程度に、お客様の服装や持ち物を見ます。そこにお客様の好みや、どういう目的で来られたかなどが表れるからです。
また会話や様子などにも注意します。それらの情報から総合的に、どのスタッフに対応させるのがいいのかを判断します。
例えば、グラスを回しながらワインを味わっているお客様には、ワインに詳しいスタッフを向けるし、カップルで女性が下座に座っているお客様、つまり男性があまり女性に慣れていらっしゃらないような場合には、緊張しないよう、カジュアルな対応を心がけたりします。
こういうことは接客だけでなく、恋愛にも当てはまります。
僕はやはり人生というものは、モテないとつまらないと思います。モテるために重要なことは、多くの人が誤解していますが、決して容姿ではありません。相手が何を求めているかに気付き、そこにうまく適応できる人がモテるのです。そうなるためには、やはり努力の積み重ねしかありません。
最初のデートで、女性にプレゼントを渡すような男性は、まずモテません。デートで相手の好みをつかみ、その次に、そこにぴったりなものをプレゼントする方が、喜ばれる確率が高いと思います。
車の運転でも、隣に座っている女性に気を遣いながら運転する男性はモテます。料理人でも、本当に料理のうまい人は男女を問わずモテます。
すべては相手に対する愛と想像力の問題なのです。逆に承認欲求のみで、「俺の料理、うまいだろ」みたいな人はモテません。
「自分はなぜモテないんだろう」という人は、相手をもてなすことに徹すればいい。
電話やメールも、相手への気遣いを忘れず、丁寧にする。一緒に食事する時、女性の食べる速度が遅かったら、こちらもそれに合わせてあげる。そういう気遣いをコンスタントにやり続ければ、必ず相手の気持ちは傾いてきます。
もちろん、生まれながらにモテる人もいます。でも、そういう人は自分のカッコよさにあぐらをかき、気遣いや努力を怠っていることも多い。カッコよさだけでは、いつか飽きられます。本当に相手に愛され続けたいなら、一にも二にも気遣いを忘れず、優しい人であり続けること。これに勝るものはありません。
恋愛も仕事も、結局どれだけ相手に対し、無償の愛を持てるかだと僕は思います。無償の愛があれば、観察力や想像力が働きます。それが働くことで、相手を喜ばせられる。
例えば女の子にプレゼントする時、「この人は普段、こういうブランドの服を着ている」とか「こういう服が好みなんだな」というのが観察力。それを踏まえて、「何をあげたら、どんな風に喜ぶだろう」と思い浮かべるのが想像力。この二つは愛という源から出てきます。
会話でもそうです。好きな相手の心をつかむには、相手が喜ぶことを言った方がいいに決まっている。その喜ぶことは、相手を観察しないとわかりません。また観察だけでなく、経験も物を言います。
相手が主婦の場合、家事が当たり前と思われていることがつらいはずです。夫からは感謝の一言もないし、子供からは文句を言われる。お金をもらえるわけでもないのに、とにかくやらなければならない。
そういう人には「そんなの全然当たり前じゃないよ。本当にすごいことだよ。いつもお疲れ様」と言って、寄り添ってあげるべきです。
あるいは自分に好きな人がいて、その人に告白したとします。でも、その人に「ごめんなさい、あなたの気持ちには応えられない」と言われたら、たいていの人はそこであきらめるのではないでしょうか。「付き合ってくれないのなら、もういいや」という気持ちになると思います。
でも僕は違います。「人として尊敬しているので、支え続けます」と相手に言います。
この気持ちがとても大事だと思います。なぜなら、それが本当の愛だからです。
鳥羽周作/Shusaku Toba
レストラン「sio」オーナーシェフ。sio代表取締役。 Jリーグの練習生、小学校の教員を経て、31 歳で料理の世界へ。 2018年「sio」をオープン。同店はミシュランガイド東京2020から6年連続で掲載。 現在、「sio」「sio Aoyama」「o/sio」「o/sio FUKUOKA」「㐂つね」「ザ・ニューワールド」「おいしいパスタ」「NAGANO」「FAMiRES」と9店舗を展開。 書籍 / YouTube / SNSなどで公開するレシピや、フードプロデュースなど、レストランの枠を超えて様々な手段で「おいしい」を届けている。モットーは『幸せの分母を増やす』。