PERSON

2024.10.30

竹内涼真「自分を大切にできないなら、周囲ともうまくいかない」

世界的大ヒットゲーム『龍が如く』をオリジナル脚本で実写化した、Amazon Originalドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』で主人公を演じる竹内涼真。任侠の世界で戦い続ける男を演じた壮絶な覚悟、そしてかつての自身の経験を語る。

自分が持っている感情の引き出しと役の人生を結びつける

「その役に自分が近づくのではなく、自分にその役を近づける。この作品では、まずそういう作業から始めました」

歌舞伎町をモチーフにした歓楽街・神室町を舞台に戦いを繰り広げる、2005年にリリースされたゲーム『龍が如く』シリーズ。ゲームを原案にオリジナル脚本で描く実写版Amazon Originalドラマ『龍が如く ~Beyond the Game~』で主演を務める竹内涼真はそう、穏やかに語り始めた。

原作であるゲームは世界的ヒットを記録、熱狂的なファンも多くいる作品だ。

「だからこそ、僕らは実写化ならではの新しい『龍が如く』をつくりあげないとならない。僕が演じた桐生一馬のファンはとても多いですから、僕が役に近づこうとどんなに努力をしても見る人によっては、絶対どこかにギャップを感じるはず。

だから役に近づくのではなく、自分に役を近づければ、きっと新しいものができる。そう考えてこの役に挑みました。

受け入れてもらえるかどうか、プレッシャーはものすごくありました。でもそれを捨てるところからしか、スタートできませんでしたから」

幼少期は児童養護施設で育ち、任侠の世界に入るという波乱の人生を生きる主人公を、どのように「竹内涼真に近づける」ことができたのだろうか。

「すごく内面的なことなんです。自分が持っている感情の引き出しと、役の人生を結びつけるんですよ。

なぜ主人公は任侠の世界で強さを求めるのかと考えた時、きっと愛を求めているんだ、そう僕は理解したんです。両親がいない環境で育った彼は、大人になっても必然的に愛情を求めてしまう。そして自分を認めてもらえる任侠の世界で生きることを決めた。

そういうふうに彼の人生について考えて、そして竹内涼真自身が感じたことを、表現していけばいい」

役に関わる環境を深く理解するため、竹内は自ら児童養護施設を訪れた。

「どんな子供たちがいて、どう大人になっていったのか。職員の方からいろいろなお話を伺いながら、桐生という役のイメージを、自分に引き寄せていきました」

『龍が如く』はご褒美

元総合格闘家の朝倉未来選手に、竹内自ら連絡をとり、戦い方や肉体づくりの指南を受けた。

作品と役づくりのために、自分ができることはなんでも積極的に積み上げていく。それが竹内流だ。

俳優デビュー11年目にして、本作は「ご褒美のようだ」と、笑う。

「撮影現場は、これまで感じたことのないようなすさまじい熱量に満ちていました。そのなかで僕も同じ熱量で向き合えたことは、11年この仕事をやってきたご褒美だと感じたんです。

だからこそ僕は先輩後輩関係なく、素直に提案や相談をさせていただきました。先輩方もそれを受け止めてくださる大きな存在で。

そうやって生まれる化学反応はすさまじく、撮影の間、毎日ヒリヒリとした恍惚感に包まれていました。とても幸せな時間でしたね」

竹内涼真/Ryoma Takeuchi
1993年東京都生まれ。5歳からサッカーを始め、高校時代は東京ヴェルディのユースに所属。2013年俳優デビュー。主演ドラマに『テセウスの船』『君と世界が終わる日に』『六本木クラス』など。

サッカーをやっていた頃の最大の後悔

先輩相手でも、怯(ひる)むことなくまっすぐ対峙する。その物怖じをしない姿勢は、竹内の生まれつきのものではなく、意識的してのものだという。

「僕は5歳からサッカーを始め、プロになる一歩手前まで行きましたが、怪我で断念しました。

今でも後悔しているのが、サッカーをやっていた頃の僕は、すごく物怖じをする性格だったということ。サッカーが好きで自分のすべてだったのに、それを表現しきれなかった。

とにかく何かに怯(おび)えて『どうやったらミスをしないか』『どうやったら怒られないか』ばかり考えていました。

そういうネガティブな姿勢だと他の選手と同じ練習をしていても、結果が全然違うんですよ。周りに何を言われてもこれが自分のスタイルだ! と技を磨いていく。それができなかったから僕はプロになれなかったと思っています。

10代の時にそうやって一度挫折していますから、新たに拓けた俳優の道では、絶対同じ失敗は繰り返したくない。だから自分というものをしっかりと持ってやろう。そう俳優の仕事を始めた時に決意しました」

過去をそう振り返りながら、竹内は自分に言い聞かせるようにもう一度ゆっくり言葉を発した。

「だから、今回のドラマ『龍が如く』でも桐生一馬になるんじゃなくて、桐生一馬を引き寄せる。自分の表現にしないといけなかったんです」

自分を大切にしていなかったら、周囲ともうまくいかない

サッカーを断念し、俳優業を始めてからは、着実にキャリアを積み重ねていったように見えるが、それでも20代中盤までは苦しい時期が続いたと、竹内は話す。

「演技に行き詰まりを感じて、周りともコミュニケーションがうまくとれなくなってしまった時期がありました。けれどその頃、ある方に『自分を大切にしていないね』と言われたんです。それでハッと気がついたんですよね。

周りの人は自分の鏡。自分が自分を大切にしていなかったら、周りの人ともうまくいくはずがないって。

だから一度、どんな自分も受け入れて、そして仕事だけではなく、自分のプライベートも大切にする。どんな場所にいて、どういう人といる自分だったら自分自身を好きになれるのか。そういうことを考え始めたら、仕事もうまくいくようになりました」

常に失敗や挫折から学び、成長を続けるのが竹内涼真。インタビュー後編では、その身体づくりについて迫る。

『 龍が如く ~Beyond the Game~』
新宿・歌舞伎町をモチーフにした神室町で、幼馴染たちとともに裏社会に巻き込まれていく主人公・桐生一馬。巨大歓楽街に生きる主人公たちの人間模様を描く。世界的大ヒットゲーム『龍が如く』シリーズを基に、オリジナル脚本で制作されたドラマシリーズ。

出演: 竹内涼真、賀来賢人、河合優実/唐沢寿明ほか
原作:セガ『龍が如く』シリーズ
監督:武正晴、滝本憲吾
Prime Videoにて世界独占配信中

【衣装クレジット】ジャケット¥451,0004、ニット<参考商品>、パンツ ¥154,000、靴¥165,000(すべてフェラガモ/フェラガモ・ジャパン TEL:0120-202-170)

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

STYLING=徳永貴士 (SOT)

HAIR&MAKE-UP=佐藤友勝

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