1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウェアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた仕事人たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「人生を彩る眼鏡」の第16回はデザイナー・森田恭通。
PERSON 66
デザイナー/森田恭通
眼鏡選びのポイントは個性的であること
デザイナーとして国内外で活躍し、2015年からはパリで写真展を開催するなどアーティストとしても活動している森田恭通さん。「ロン毛に眼鏡を描くと、だいたい僕の似顔絵になる(笑)」と本人が語るよう、森田さんといえば眼鏡がトレードマークだ。
「眼鏡をかけ始めたのは、10代後半ぐらい。ファッションに目覚めた少年がダテ眼鏡をかけ始めるという感じで、当時流行っていた細身でべっ甲柄のオーバルフレームを買ったのを覚えています。それから、次第にファッションに合わせるようになって。新しいデザイナーが登場し、トム・フォードの時代、エディ・スリマンの時代とファッションが変遷していくなかで、自分の眼鏡選びもだんだん変化していきました」
そんなファッション通でもある森田さんが、今回私服のスタイリングに合わせたのは、ジュエリーブランドTASAKIが70周年を記念してアイヴァンとコラボレーションをした特別な1本。TASAKIの人気シリーズ「balance」をモチーフに、直線的に連なったチタンパールの装飾がテンプルに施されたアイコニックなモデルだ。
「存在感のある黒セルで、形も好みです。そして何より、アクセサリーのようなテンプルの装飾がいいですよね。こうしたデザインはあまり見たことがなかったし、ボリュームがありながらかけ心地もよかったので、とても気に入りました。仕事で海外に行くたびに眼鏡店は必ずチェックするんですが、ひと目惚れで、なおかつ自分に合うものって意外と見つからないんです」
眼鏡は自分のキャラクターを作るもの。それゆえ選ぶポイントは“個性的であること”と言うだけあり、フレームの存在感に負けないかけこなしは、さすがのひと言だ。
森田さんは、これまでアイヴァンのスペシャリティストア「THE EYEVAN京都祇園」、「THE EYEVAN名古屋 栄」のデザインを手がけるなど、ブランドに深く関わっている。彼の目に、アイヴァンはどう映っているのだろう。
「アイヴァンは、ひとつのブランドでありながら多岐に渡るカテゴリーのアイテムを手がけていますよね。多様なクリエイティブの可能性を持った存在であると思っています。僕の役割は、それを店舗デザインで表現するということ。近々東京に新しい店舗がオープンする予定なのですが、京都、名古屋、東京とあえて店舗のデザインを統一しないことで、つねに新しいチャレンジをして進化し続けているブランドの姿を表現したいと考えているんです」
なかでも「ギャラリー」をコンセプトとした名古屋の店舗には、森田さん自身が撮影した作品も飾られている。
「この店舗には内装でデザイナー、そして写真でアーティストとして関わっているわけですが、実は両者の仕事は似ているようで大きく違うんです。バジェットやスケジュールを考慮して、クライアントのビジネスが成功するようにサポートするのがデザイナー。一方で予算ありきではなく、自分の個性と主張を表現するのがアーティストだと僕は思います」
デザイナーとアーティスト。そんなふたつの顔をもつ森田さんにとって、眼鏡とは。
「シックスセンス、第6感かな。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の5感を超えたところにあるのが、自分にとっての眼鏡だと思っています。眼鏡を通して見ることで得られるものがある。たとえ視力が良かったとしても、眼鏡をかけないという選択肢はありませんね」
森田恭通/Yasumichi Morita
1967年生まれ。デザイナー、グラマラス代表。国内外で活躍する傍ら、2015年よりパリでの写真展を継続して開催するなど、アーティストとしても活動。オンラインサロン「森田商考会議所」を主宰。
問い合わせ
EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972