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2024.10.04

坂口健太郎「自分を愛せた人が他人も愛せる。だから僕は、自分のことをまず肯定したい」

一番に愛しているのは自分自身と話す、坂口健太郎。作品づくりに、そして仕事において大事な「自己肯定力」について語る。インタビュー2本目。 #1本目 #3本目(順次公開)

冷めているけど愛情深い、矛盾した自分自身を愛する

「これまでの人生で苦手だと思った人はいない」

そう断言する俳優・坂口健太郎。

恋に揺れる儚げな青年から、サイコパスなヤクザまで。それぞれに演じ分け、異なる制作現場で異なるスタッフ、共演者と毎回良好な関係を築いていく。

撮影の数ヵ月が終わればまた新たな役を、そして新たなスタッフたちと0から関係をつくり上げていくという俳優の仕事は考えてみれば随分とタフなものだ。

誰とでも身構えずに仕事に向き合えるかどうかは、俳優に求められる力のひとつだろう。

「僕は比較的、誰とでもうまくやれるほうだと思います。悲しいことを言っているように聞こえるかもしれないですが、他人に対してちょっと冷めている部分があるからなのかもしれません。人に入れ込みすぎないんだと思います。

だから人に対して嫌だなとか苦手だなって思うことはあまりないです。嫌なことがあっても『ああ、そんなことがあるんだな』というくらいでダメージは受けない。そうやって仕事の現場では周りとコミュニケーションをとっているのかもしれません。

でもね、矛盾しているようですが人に対して愛情はすごくあります。あと僕、自己愛がすごく強いんですよ(笑)。自分のことが大好きだし、自己肯定感も強い。だって自分に優しくないと周りに優しくできないと思うんです。自分をしっかり愛せる人は他人に優しくできるし、愛すことができる。そう信じていますから」

坂口健太郎/Kentaro Sakaguchi
1991年東京都生まれ。2014年俳優デビュー。2016年『64-ロクヨン-前編/後編』で日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。出演作に映画『余命10年』『仮面病棟』、ドラマ『鎌倉殿の13人』『CODE-願いの代償-』などがある。

開き直り力で乗り越えたデビュー当時の葛藤

自分が大好きだと笑う坂口だが、デビュー当初はなかなか自分自身を肯定することができなかったという。

「俳優の仕事を始めた頃は、『坂口健太郎という知り合いが売れていく』そんな感覚がありました。本当の僕はここにいるんだけど、似た人が売れていく、そんな感じ。

『こう見られたい』と思うたびに自分にメッキを貼っていって、僕ではない誰かになっていく。そいやってどんどんメッキを貼り重ねて、ついでにリュックに入れなくていい石をどんどん入れて歩き続ける。デビュー当時はそんな感じでした。

でも途中から開き直ったんです。もうそんな見栄、全部捨てちゃおうって。なりたい自分とかじゃなくて、本当の自分でいいじゃんって」

そう思った一番のきっかけは坂口が初出演した舞台『かもめ』(2016年)だった。

「ロシアのアントン・チェーホフの戯曲で、日本でも何度も上演されています。

演出家の熊林弘高さんに『過去の俳優さんが演じたものも見て、勉強しておいたほうがいいですか』と聞いたんです。そうしたら『どちらでもいいです。見たら見たなりの坂口さんの芝居になるし、見なかったら見なかったなりの坂口さんの芝居になりますから』と言われて。

すごく目から鱗が落ちたんですよ。そりゃそうだ、見たければ見ればいいし、僕の好きでいい。どちらが正解でも間違いでもない。過去の俳優さんには絶対に勝てないし、僕がやることをやればいいだけなんだからって。

それまでは100%役になりきらないといけないと思っていましたが、『かもめ』を経験したことによって、役になるのではなく、僕自身を役のどこかに残していいんだって、それが大事なんだって思うようになりました」

一番近くにいる人をまず幸せにしたい

どんな仕事も、どんな場所でも常に自分でいること。坂口にとってそれは周りを気遣う意味もある。

「撮影している時って、ものすごく近しい人のために僕はやっているんです。撮影中の3ヵ月ほどは共演者、スタッフさんがものすごく密につながる。その人たちをまずは幸せにしたい。

だからいつも大きい声でケラケラ笑っているし、なるべく現場では潤滑油みたいな存在でいたいと思っています。きちんとコミュニケーションとって楽しんで、いい現場にしたい。

自分を愛せた人が他人を愛せるように、作品の現場をつくり手みんなが愛していたら、きっと多くの人に届けられると思うから」

人には期待しすぎない。けれど自分を愛すように他人も愛して仕事を進める。坂口健太郎のこのマインドは、きっとどんな職業でも学ぶところがあるはずだ。

◼️『愛のあとにくるもの』
男性の視点を辻仁成氏が、女性の視点を韓国の作家コン・ジヨン氏が執筆した小説のドラマ化。主人公は、韓国から日本へ留学に来たチェ・ホン、そして小説家を目指す大学生の潤吾。日本で運命的な恋に落ち、ホンは“潤吾との愛だけは永遠に続く”と信じていたが、別れは突然訪れ、ホンは韓国へ帰ることに…。5年後の韓国、ホンは日本での思い出を全て心に閉じ込めて新たな人生を歩んでいたが、潤吾が韓国に訪れたことで、2人は運命的な再会を果たす——。5年前のあたたかな春の日本、現在の切ない冬の韓国を舞台に終わったはずの愛の行方を描く純愛ラブストーリー。『王になった男』のイ・セヨンと坂口健太郎のW主演。

出演:坂口健太郎、イ・セヨンほか
監督:ムン・ヒョンソン
原作:辻仁成/コン・ジヨン『愛のあとにくるもの』(幻冬舎)
2024年10月11日よりPrime Videoにて見放題独占配信

◼️『さよならのつづき』
事故で最愛の恋人を失ったひとりの女性と、その恋人に命を救われたひとりの男性。運命に翻弄されるふたりの美しくも切ない、“さよなら”から始まるラブストーリー。Netflixの完全オリジナルストーリーである本作の脚本を手掛けるのは、ヒューマンドラマの名手で、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』、『余命10年』の岡田惠和。監督は、連続テレビ小説『ひよっこ』でも岡田とタッグを組んだ黒崎博が務める。

出演:有村架純、坂口健太郎ほか
脚本:岡田惠和
監督:黒崎博
2024年11月14日よりNetflixにて独占配信

<衣装クレジット>コート¥715,000、シャツ¥149,600、パンツ¥280,500、靴¥176,000、タイ¥37,400 (すべてプラダ/プラダクライアントサービス TEL:0120-45-1913) 

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=倭田宏樹

STYLING=壽村太一

HAIR&MAKE-UP=廣瀬瑠美

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